キムタクのかけら
この部屋の以前の住人がオーナーに無理を言って取り付けさせた四角い天窓からならず者アルパカたちの頭までを燃やす勢いの巨大な光が差し込んでいたある昼のこと。
ちなみに僕があともう少しの時間、宇宙から最果てのスポットライトを浴びていれば、雲のうえには黄泉の国に溢れる栄光、名誉、嫉妬、憎しみをかき集めグローブでこねこねして渾身のストレートを投げるダルビッシュ有が存在するんだ!ときっと信じていたに違いない。
というくだらない話は今回はどうでもいい。
なぜなら太陽のダルビッシュより僕の心を強烈に捉えてしまうー僕の身体から血でも出るんじゃないのかと心配するほどだったーやつがいたから。正体は少年。奇妙な鳶色の目をした少年。秋に隠れる雪だるまを見つけるんだと諦めることを知らない少年。
少年は僕の家のキッチンで金色のアルパカダンスなるものをしていた。
夏の日差しのような光でつむじを焦げる寸前まで焼いていた僕は少年に訊ねた。
「春はどうしてやってこないのかな?」
「キミの片目が閉じられているからだよ!」
とややこしい迷路に頭をかかえて(きっと実際には楽しんでいるのだと思うが)親を呼ぶ子どもみたいに少年は叫んで答えた。
そして、
「神様のカラケを見つけにいく!お先に!」
と言って裸足のまま湖岸へ走っていった。
おい!少年!
僕も行くから!ちょ待てよ!
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