なんとなくトートロジー

今日はサッカーボールがよく降る。

部屋の中から窓の外を眺めていると、サッカーボールがよく降っている。

人生においてこんなことは珍しい。

だけど降っているのだから仕方がない。

サッカーボールは空から降るものである、という命題が真となった、それだけである。

もしかしたら、僕とあなた以外にとってはこの命題は当然のように真であって、あるいはこの〈はれときどきサッカーボール〉は井上陽水によるたんなる暇つぶし、なのかもしれない。

というか、命題という命題自体、偽でありましたと西周が言うかもしれない。

カッパ「定義を定義してみてくれよ、おっさん」

西周「なんとなくトートロジー」

井上陽水「カニ食べ行こう」

だからサッカーボールが降っているからといって、パニックを起こす必要もないしキーパーグローブを買い溜めする必要もない。

ただ眺めていればいいし、外に出て蹴りまくるのもいい。

あれ、ということはキーパーグローブを買い溜めすることだっていい。

まあどれを選んでも、雨が降り続けることも、少年時代が少女時代になることも、株価が大暴落することも、世界が終わりを迎えることも、友達を失うことも、ない。

いやまあ、株価が大暴落することはあるかもしれない。

だからまあ、サッカーボールが降っていることに怒ったり呆れたりしないでほしい。

いや、怒っても呆れてもいい。

ただ人のまねをして怒ったり呆れたりはしないでほしい。

いや、人のまねをしてもいい。

だって、サッカーボールが降っているだけだから。

これ、いったいだれが言っているのですか?

これ、だれが責任とるのですか?

みんな言っているし、きっとだれも責任はとらない。

とにかく外を眺めよう。

ほら、サッカーボールが降っている。

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