春は夢うつつ

純白な音符が流れるような青空の下、湖の波は楽しげに色とりどりの鴨を運んでいるようだった。遠くに行ってしまった友、近くにいる友、一瞬、だれかの声が澄んできこえてくるような水辺にはだれもいない。

色とりどりの鴨は湖の優しさなんてつゆ知らず、青く果てしない空を愉快に進むのみ。暗い空から見守る月の光の友のような一匹の鷹、懐かしい香りの中を泳ぐ。真っ青な水の底に映る空が次第に淡く霞んでいく。


「きみは喜んでくれるかなあ?」


と、どこか遠い水辺に寝転んでいた湖と鴨、そして鷹が、風の吹かない空を見つめながら言った。


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