キツネの終尾

人気のない交差点で信号は青く光りそして赤く光った。誰もなにもしなかったけれどまた青く光りまた赤く光った。光の影が伸びるアスファルトの上では太りすぎて死んでしまったチワワのように虚しく空き缶が横たわっていた。

そこに一人の少年が歩いて来た。そして銀の塊を思いっきり蹴り上げた。アルミチックな音が住宅街の隙間へと吸い込まれていった。

突然外の世界に投げ出された白い炭酸の泡は道路の色を次第に変化させた。機械的な仮面を被ったただの天真爛漫な一つの生命であった。

少年の心にあった優越感は小さく弾けて泡よりも先に跡形なく消えてしまった。空に浮かぶ星は街の明かりによって輝きを失い、月は時の経過によって半分に割かれていた。

少年はこれ以上こぼれ落ちていくのを止めようとある歌を歌った。


「あきかんけとばし〜〜ひとりぼっち〜ある〜いた〜にちようび〜……」


少年はなんとか最後に作り笑いをして呟いた。

「ごめんよ。ぼくはへたくそなんだ……いつも」



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