ソクラテスに月見バーガーを食べさせたかった

猫が空を飛び月にぶつかっていた。

それを見ていた地上の猫たちは呆然としていた。

ただ猫が、次々に月へとぶつかっていく。

その時限りは、シーチキンさえ猫を惹きつけられなかった。

夏目漱石は縁側に座り、

そんなことは当たり前だろうというような顔を浮かべ、月の裏側を想像していた。

月の裏側では、せっせと月をまわす奴隷たちがいた。

クレーターをつくる奴隷たちもいた。

なにもしない奴隷たちもいた。

彼らはなぜそこに連れてこられたのか全くわからなかった。

うさぎなんてどこにも見当たらなかった。

あえて言うなら、白いケージが散らかっていただけだった。

ペットショップの店員はもう眠りについていた。

明かりは、ついたままだった。

ソクラテスは牢獄にいた。

月を見ようと夜空を見上げた。

なにも   なかった

そして、毒杯に    手をつけた





だから猫は、もう月にぶつかるのをやめた




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