鍵の閉まる音

光る鳥が月の前を飛んでいた。自動販売機のボタンを押そうとした私は少しの間手を止めた。じっと見つめられた月は照れず涼しげにそこに浮かんでいた。庭園に囲われ手入れされた大きな池みたいだった。

「縁側から望む星は決まって同じものだった。だが、どうも飽きないんだ。月がみえるときも、みえないときも」

靴紐がほどけたのだろうか。たくさんの人がかがんでいる。私は自分の足元を確認した。光る鳥はどこへ行ったのだろう。夜の色が影をつくり街は臆病な獣のように見えてきた。埃が風となり敗走した兵士の後ろ姿をうっすらと形づくる。ゆるやかな坂道の上に、星が落ちる。


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