Sサイズのコーヒーをまだ飲み切らない月野

「えびフィレオって宇宙から見ても美味しそうなんだろうか?」

雲田は自分のスマホの表面に付着した小さな埃を吹き飛ばしその埃の舞う姿を眺める、という作業を繰り返す途中に言った。たぶんゴミの舞、第四回公演か第五回公演かあたり。

「お前はさ、まだそんなこと言ってんの?ウマそうに決まってんじゃん」

そう言ってストローをくわえた星山はMサイズのコーラをグッと吸い上げ、たぶんあと一口分ぐらいを容器の中に残した。そして慣れた手つきで蓋を開け、汚れた水面から顔を出すいくつかの氷の表情を確認した。

Sサイズのコーヒーをまだ飲み切らない月野が二人に訊いた。

「ホットコーヒーがアイスコーヒーになる。太陽が月になる。もし、孤独に裏打ちされたひとりの夜を左手に持つとすれば、君たちはそのからっぽな右手に何を持つと言うの?」

雲田と星山はそれぞれニヤついた。

それをみた月野は爆笑した。



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