雲すべるも、回収できず。

カンボジアのスコールみたいな一瞬の雨に語尾が「だったですね!だったですね!」の少年のことをなんとなく思い出す。下がった雲の隙間、皆が集まるレストランへ花束を持って向かうあの気持ちと似ている。水たまりか、すべり台の先頭か、僕は錆びきったブランコを選びとりたい。

下流の濁流にふさふさのライオンをみる。星屑のうさぎの誠意が熱波としてやってくる。自由な地上から伝えたい。メルカリに出すのもいいけれどタイムカプセルもいい。だから、満月か太陽か、太陽か満月か、僕はある種欠けた三日月を選びとりたい。

清水くんが夕暮れの湖岸沿いをランニングしている。声をかけようか迷った、けれど迷ってしまったからには声をかけるのはやめる。泥だんごを投げ合った清水くん。校外学習で副班長を務めてくれた清水くん。帰りの会でいつも隣の席の子に深いおじぎをしていた清水くん。不正直な正直か、正直な不正直か、僕は名残惜しそうに消える隕石を選びとりたい。

温かい愛に眠るフリをして人々を見つめる秒針。挨拶をしても鏡のような君は何をどうすればいいかわかっていないようである。僕もわからない。あ、一緒に冷蔵庫のうるさい音でも止めようか。金箔のかかった知的怠慢か、未回収の忘れ物か、そういえば僕は、なにも選びとりたくなかった。


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