パグの日記(2)

僕は電動キックボードの電源を切ってそばに生えていた太い木に立て掛けた。たぶん松の木だったかな。そんなことはどうでもいいと思う人も多いと思うんだけれど松の木ってこれはたぶん後々重要。と断言することはできない。だって未来だよ。どうなるかわからないじゃん。どうなるかわからないのもどうなるかわからないし。でまあとにかく僕はハンモックがゆらゆらしている砂浜へと向かった。歩き始めてすぐはゆらゆらとハンモックが揺れているのを目にしていたはずだったんだけれど目的地点に近づくにつれ海には波がなくなって浜には風がなくなってハンモックは静止に近い状態になっていた。僕は少し不安を感じたからポッケにガラケーがちゃんと入っていることを手で触って確認し後ろを振り向いて電動キックボードがちゃんと松の木に立て掛けられていることを脳にフィッツさせた。よし大丈夫だ、浜にゆくぞ。

浜は暗くて空には月がなくて少しの焦りがまだ心に走りつづけていた僕の視線はなにかに揺らされるようにぐらっと横に傾いた。おっとっと。でもね。持ち主の言うことをめったに聞かない僕の視線のことを家に帰ってから僕はよく怒るんだけれどこの時はあまり家で自分が怒っているイメージが湧き出なかった。なぜか?たぶんこいつが水色のハンモックを見つけたからだと思う。そこではパグのような顔をした男がハンモックに寝転んでいたんだ。非常にいいきゃらくたあではないか。パグ男、僕は彼のことをそう名付けた。

突然パグ男に話しかけるのもパグ男を驚かして警戒心を呼び起こさせることになるだけだしーいや本音を言うと僕がパグ男がいったいどんな奴なのか少しでも情報収集したかっただけなのだけれどーとりあえずちょっと離れた所から見学させてもらうことにした。ちょうどまたそばにーきっと誰かが僕に都合よく隠れ場所を与えてくれているー松の木があったのでその陰に身を隠してそこから少し顔をだしてパグ男を見つめていたんだ。けれど彼はなにもせずにハンモックに揺らされているだけであって詰まらなさを感じた僕はガラケーをポッケから取り出してググーでパグ男と検索してみた。そしたら驚き、このパグ男、Wikipediaに載っていた。そしてこうとだけ書いてあった。



「松の木に電動キックボードはあまりよくないです



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