7/29 ヨッシーアイランドが怖い

日記です。

Nintendo Switchでオンラインプレイを楽しむためにはNintendo Switch Onlineという有料サービスに加入する必要がある。有料ということでSwitchを買ったばかりの頃は多少渋っていたが、オンラインプレイが可能になる以外にもいろいろな特典が付いてくることが最後の一押しとなり結局加入に踏み切り、現在に至る。特典のひとつとして特に嬉しいのはファミコンやスーファミの一部のソフトがSwitch上で遊び放題なことだ。最近はこれを利用してヨッシーアイランドをプレイしている。
『スーパーマリオ ヨッシーアイランド』はヨッシーが赤ちゃん時代のマリオを背負って運搬するアクションゲームだ。ヨッシーが冒険することになるステージはどれも手書き風のかわいらしいタッチで描かれており、作品全体がおだやかな雰囲気を纏っている。一方でアクションは歯ごたえがあり、タマゴ投げシステムがなかなか奥深い。ヨッシーは敵を飲み込んでタマゴをつくることができ、これを投げつけて敵を倒したり仕掛けを作動させたりしてステージを攻略することになる。

ヨッシーアイランドは基本的にとても楽しくやりごたえのあるゲームで僕はたいへん満足しているのだが、プレイするうちにこのふわふわとした世界に潜む静かな恐怖をちらほら体感することになった。以下にいくつかの要点をまとめた。

・猿を飲み込むことができる
ワールド3にはいたずら好きの猿の大群が出現する。かれらはスイカのタネを飛ばしたり、物を投げてきたりする。赤ちゃんをすれ違いざまにひったくったりもする。そんなことすんな。ワールド3にはこの猿がおびただしい数出没し、プレイヤーを苦しめる。
ところで敵キャラクターはヨッシーが飲み込むことができる敵とできない敵に分類できる。例えばヘイホーやスライムはほおばって飲み込みタマゴにすることができるが、テクテク歩く棘付きの鉄球(カチカチくん)はほおばれない。で、肝心の猿は、飲み込んでタマゴにすることができる。さっきまでスイカを食べてタネをこちらに吹きかけていたいたずら好きの猿が、ヨッシーに飲み込まれた次の刹那には物言わぬタマゴになっている。「歩行し、壁にぶつかったら折り返す」だけのヘイホーを食べるのとはこちらの心象がまるで違う。
猿の家族のこととか考えちゃう。

・針が強い
大抵の敵や攻撃に当たってもヨッシーは赤ちゃんマリオを手放してしまうだけで、10カウント以内に赤ちゃんを背負い直せば復活することができる。ヨッシーのタフさに感心するばかりなのだが、これには例外がある。だ。
いくつかのステージには地面にびっしり生えた針があり、それに触れるとその瞬間にヨッシーは一機消滅してしまう。絵本の世界に突如として金属質の針山というソリッドな仕掛けが描写されるのがそもそも怖い。大抵の敵の攻撃には耐えるヨッシーが針山には耐えられないということであり、手書きチックな敵にぶつかるのとは全く別質の鋭いダメージが具体的に想起される(「針に触れた瞬間にヨッシーがくるくると回って泣きながら倒れ込む」という演出によって有耶無耶になってはいるものの)。他にもマグマに触れる、穴に落ちる、魚に丸呑みされるなどで即死する。ダメージを受けてもマリオを背負い直せばOK、という「取り返しのつく」基本システムに慣れていけばいくだけ、覆い隠しようのない、取り返しのつかないイベントとしての死が際立つのかもしれない。

・命を代償にしたギャンブル
ステージをクリアしたときに、ヨッシーの残機を増やすボーナスゲームをプレイできることがある。このゲームにおいてプレイヤーは、ヨッシーの残機をいくつ賭けるかを選択する。その後ルーレットが回転し、うまくいけば賭けた数が数倍になって返ってくる。
うまくいけば。そう、ルーレットが0に止まると賭けた残機が0倍になって返ってくる。賭した命が容赦なくごっそりと奪われるのだ。え?ヨッシーの命って福本伸行作品のイカれたギャンブルみたいな仕組みで平然と失われるの!?本編ではルーレットをヨッシーとマリオが見つめているが、僕には違うものが見える。ベットされたヨッシーたちの頭上で回転するけばけばしいルーレット。それを取り囲むように建設された回廊では狂った富豪たちがディナーを楽しみながらギラギラとした視線を飛ばす。ルーレットが徐々に速度を落とし、結末が迫る。数字は……0だ!爛れた歓声。会場のボルテージは最高潮に達し、プレイヤーは静かに俯く。こんなはずではなかった。司会の男が無神経な掛け声を上げ、ヨッシーを詰め込んだ檻の床がひらき、そう、待ち構えるのはおそらく、鋭い針の山……。
というかこのボーナスゲームの胴元って誰なんだ。本編で描かれるヨッシー対カメックという対立とは明らかに異なる強大な第三者によってヨッシーの命はゲーセンのメダルゲームみたいな軽さで足したり引いたりされる。これがプレイヤーの心にひとつの影を落とす。つまり、「ゲームのシステムそのもの」という抗いようのない檻と、そこから出ることの叶わないヨッシー、マリオ、敵キャラたち……。

ラストはだいぶ感傷的になったが、ヨッシーアイランドが楽しいのは間違いない。というか普通に難しい。クリアできるのかな。

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