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8月第3週放送(いつか憧れの)初段を目指す!スキがない将棋


敵の入玉阻止!王様の護衛を攻めよ

8月第3週は雁木シリーズ最終回、いよいよ寄せの手綱を絞る最終盤の解説だ。終盤がヨレヨレでしょっちゅう逆転負けしてしまう文字通り“詰めの甘い”私としては、豊島先生の寄せの発想をぜひ学びたい。前のめりで視聴した。

服部慎一郎先生は囲いも崩れてはいるものの、精鋭部隊に護衛され王様が最後の逃避行を試みている。忍者の愛称の通り、機敏な指し回しが得意な服部先生なので、脱出ルートを正しく封鎖しなければ入玉され、勝利目前で持将棋が成立してしまうことになりかねない。
豊島先生は飛車がいるのでまあ大丈夫なんですがと頼もしいお言葉だ。(先生私なら馬と龍が自陣にいても阻止できるか不安です!!)
敵玉の守備駒を攻めていく作戦が効果的らしい。
動く棋譜はこのリンク先で確認できる。

70点ですと⁈プロ九段の視点なら?

解説は82手目、後手服部先生が☖8二飛と引いた局面からで、王様を背後から襲われるのを防ぎつつ、隙あらば8八にいる敵玉を射程に入れている。
次の一手でまず思い浮かぶのは金を標的にした☗3六桂だ。☖3五金と逃げられたら次に☗2四歩で角取り確定(1三に玉が逃げるのは☗2三金で詰み)だし、☖3六同銀とされても☗同飛で銀桂交換になる。
相手の守備駒と自分の攻撃駒の交換は良い、とこれまでの講座で習った通りだ。やったーとばかりに私なら得意げにそう指しそうだ。

次に☗3六桂で☖同銀☗同飛は銀桂交換で好感触だが…

ところがこれも70点くらい、まあまあ良い手ですねと仰る豊島先生。70点⁈とすかさずツッコミを入れてくださる山口恵梨子先生は、いつも級位者目線で質問を投げてくださり本当にありがたい。褒めてもらえると思ったのが甘かった。
セオリー通りだし悪くないものの、相手に手番を渡すのが気になるそうだ。確かに終盤、手番を握ることとスピード感は駒得よりも大事と何度も繰り返し仰っておられた。

ではプロ九段の豊島先生ならどう指すんですかと解説されたのが、☗2六歩。
プロの先生のキョトンな一手には次に必ず狙いが隠されているといって間違いない。みすみす駒を捨てたりは絶対になさらない。
☖同銀と取らせると2五にスペースが空く。ここにすかさず☗2五桂と打ち、邪魔者の角をどかせて1一の香車を奪う。しかもその手が更に☖4四の金取りになっている。実際の放送で確認したところ、この構想を僅か1分の考慮時間で組み立てているのだ。恐るべし豊島将棋。自分は1回休みで2手連続で指されているようなダメージをくらう。

83手目☗2六歩 歩タダですけどいいんですか?
85手目☗2五桂 角を遠ざけることで香取りが可能に
87手目☗1一馬 香を取った手が金取りにもなっている

攻め続ける!しかも駒得しながら!

ずっと攻め続ける(ずっと俺のターンって事ですねと山口先生)、駒得しながら攻めていけたら攻めがうまくいってると思ってくださいとニコニコ顔で嬉しそうに話す豊島先生。いや、やられるほうからしたら堪らないけど、緩まない攻めは本当に見ていてスカッとする。
最後の決め手は華やかな飛車切り。今日のテーマ“ダイナミックな飛車の活用”の通り、☗3六飛と飛車で迫る。これは大駒は近づけて受けよの格言に反して自分から近づいてしまうのであまり真似しないで欲しいんですけど、と前置きしつつ、欲しい駒は銀なのでと、☖3五銀打と指された場合は☗2六飛、☖同銀とあっさり飛車銀交換へと進む手順が説明された。
欲しい駒は銀、と。あっ腹銀だ!と私も遅ればせながら気づいた。

89手目 次に☖3五銀打なら☗2六飛と銀を取り
☗3三銀と腹銀の攻めが狙える

豊島先生にはお見通し

服部先生もそうはさせじと、実戦では☖3五金と指された。
ここで欲しいのは銀だよね、と迂闊に☗2六飛としてしまうと、腹銀成立に必要な2五の桂馬を金で除去されてしまう。そのため豊島先生はまず☗5六飛と飛車を回り、角取りをみせた。
自玉の守りに利いており、入玉して持将棋を狙うにしても大駒(飛車と角)は各5点なので角は絶対渡せない。ここは桂馬の除去より角取りを受けることが服部先生にとって最優先だ。
ここで☖5二歩と受けてきた場合は、☗2六飛と銀を取り、☖2六同金で飛車を取られても☗3三銀で腹銀だ。

①☖5二歩と角取りを受けてきたら…
②☗2六飛で銀を手に入れる
③☖2六同金で飛車を失っても大丈夫!
④腹銀が刺さるので後手玉は逃げ場を失う

ここでまた視聴者目線で山口先生が質問してくださった。最初の☖3五金の局面では2五桂を取られてはまずいと、銀を取らずに☗5六飛としたのに、どうして今は銀を取っても大丈夫なんですか?という質問。確かに、☖2五金で桂馬を消されてしまうと同じじゃないかと思ってしまう。

すると豊島先生、☖5二歩で8二の飛車の横利きが止まっていますね、桂馬を外されても次は☗2二馬で詰みですよと優しく教えてくださった。なるほどそうか、と納得の回答だった。
歩を使わせて飛車の横利きにまで目配りが行き届いていて、まさに盤面全方位スキなしだ。ポカンとして解説に聞き入ってしまった。

⑤☖2五金と桂馬を外されても今度は大丈夫
⑥☖5二歩で飛車の横利きが止まっており☗2二馬で詰み
91手目 ☗5六飛
受けに歩を打たせて横利きを止めることまで計算ずくだ

今週も日曜日の夜に豊島先生が補講のポストをしてくださった。こんな風に途切れない攻めが続く豊島先生の将棋を見ると、自分もカッコよく指せるようになりたい、とやる気が湧いてくる。
今週のお悩み相談では、正しい考え方が理解できていれば、そんなに多く読む必要はなく、まずは3手先まで読むことが基本です、と仰っていた。
3手なら、と思っても、まず自分の手に対する相手の応手(2手目)を正確に読まなければならない。こうくると思ったのにと読みが外れることだらけだし、実戦だと簡単な詰めさえ見逃してしまう。
だからこそ、勝てるとすごく嬉しい。難しくて、楽しいのが将棋だと思う。
気軽に始められて、入ってみると奥が深くて、
どんどん分け入っていくうちに沼にズブズブと嵌る。
幸せな沼生活は大歓迎だ。もちろん講座もあと1ヶ月、全力で頑張りたい。

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