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6月第4週放送(いつか憧れの)初段を目指す!スキがない将棋

攻め味抜群!角換わりの終盤戦

2023年6月25日放送のNHK将棋講座は角換わりの最終日。7月からのテーマは相矢倉を取り上げるので、習い納めだと思うと名残惜しい。私が豊島先生の将棋に惹かれるようになったのも、攻め味鋭い角換わりが特に印象的だったこともある。
題材として取り上げたのは2021年11月28日放送の
丸山忠久九段戦。動く棋譜はこちらからチェックできる。

この対局の後、翌年2022年に開催された第5回ABEMAトーナメンではチーム豊島のメンバーとして一緒に戦い、本戦進出に繋がる活躍をみせた丸山先生。角換わりのスペシャリストであり、特に後手番で採用する一手損角換わりの得意技を習得されている。この対局でも丸山先生の独特の指し回しに豊島先生ご自身、きっと学びとる所がたくさんあったのだろうと感じた。

最終盤の速度計算

私のささやかな特技に暗算がある。小学生の頃にそろばん塾で教わり、今でも小銭が少なくなるように会計でお金を渡す事で、目を白黒されることがある。
例えば7652円の会計に何も考えずに1万円札を渡すと2348円のお釣りが返ってくる。このキャッシュレス時代に小銭だらけになるので、あと202円追加して10202円渡せばお釣りは2550円とスマートになる。
レジの混雑時には遠慮するが、ちょっと役に立つ。

それもあって自分では計算が得意だと思い込んでいたが、この日の放送で紹介された将棋の速度計算は「お互いの玉があと何手で詰むかを計算する」ことだ。自分の方が速度で勝ると判断がつけば、激しく斬り合っても最終的に相手の玉の喉元に刀を突きつけるのは自分になる。

豊島先生はこの速度計算の速さと正確さがずば抜けていると感じる。私は将棋の速度計算については菅井竜也八段がお勧めの上野裕和先生の本で勉強中だが、いかんせん読みが酷すぎて計算が合わない。長手数でなくても手順途中で相手に渡る駒の事を忘れていたり、玉を違うほうに逃げてしまったりと、一筋縄ではいかないからだ。

88手目後手丸山先生☖6二玉とした局面。ここで角馬両取りの☗4三銀がいかにも良さそうな手に見えるが、うっかりと指してしまうと危険だ。
自玉は☖1五角と出られることで、☖7九と金で詰んでいるのだ。攻めっ気で前のめりでいるとまさかの盲点かもしれない。

☖6二玉の局面。龍で挟撃態勢をとり、次の一手は?
☗4三銀は馬角両取りだが☖4二角に逃げられると事件が… 
☖1五角が自玉の逃げ道を封鎖する強烈なカウンター攻撃

相手に渡してはいけない駒は?と考える

豊島先生、攻め込む前にまずは安全確認をしましょう、と新一年生に交通安全指導をする先生のようだ。
終盤はどの駒を渡すと詰むのかを慎重に見極める必要がある。今日のパーフェクトな一手は丸山玉を強力に守っている馬にアタックする☗5六香だった。
☖5四馬は守りの要であると同時に、そこにいると自分の龍を奪われてしまう可能性があった。
☖1五角と出られる事と、龍が相手の手に渡り☖7九飛と指されたら即詰みという危険の両方を見事に回避する名案だ。
ちなみにこの対局を録画していたので確認したところ、☖6二玉を指されてから豊島先生が☗5六香を指すまでの時間はわずか1分30秒だった。これだけ短い時間に全て見極めた上で決断するスピード感には脱帽するしかない。

NHK将棋 棋譜再生のページからの引用

これを見ていて、危機だらけの私の人生相談も豊島先生にお願いしたい気分になった。発想力で危険の芽をしっかりと摘んでいくところが、豊島先生が隙のない指し回しと評される所以なのだろう。

駒落ち定跡の学びかた

今日のお悩み相談は、いずれプロの指導対局を受けてみたいので、駒落ちで指してもらうにあたり駒落ち定跡の勉強方法を知りたいという悩みだった。
平手で指してもいいけれど、駒落ちの方が基本から学んでいけると仰る豊島先生。
確かに、平手は参考書に例えると巻末の総合問題のようなものだろう。これまでに学んだ全ての要素がまんべんなく求められるので、プロ相手だと瞬殺されても全く不思議ではない。
それならばやはり基本問題から解く事で、足りていないところをプロの先生の指導で気づいたり伸ばしたりしていくほうが、一見遠回りのようでも最終的には上達の近道になるはずだ。

豊島先生の金言

先週のお悩み相談室で、5手詰の詰将棋を解くにはまず3手詰を、その前に1手詰や2手詰めを見た瞬間わかるくらいまで、というアドバイスから、山口恵梨子先生がハッシュタグ付きでツイートするなど、#豊島ブートキャンプ というキーワードが一躍話題となった。
今日もこれを見たたくさんの皆さんが、それぞれのペースでトライした内容を報告しておられる。
そんな中、先週日曜日の放送終了後の補足ではなく、月曜日の夜に豊島先生がツイートしてくださった。

これを見た瞬間、月曜日から残業で疲労困憊していたのが全部吹っ飛んだ。
豊島先生の想いはどこまでもお優しく、疲れた我々が自己否定したり諦めたりしないようにと、心を込めて言葉を伝えてくださっている。なんだか豊島先生の目尻の笑い皺まで目に浮かぶようだった。

“少しずつでも続けていれば、大体何とかなります”
このひとことを、タイトルを獲得するまで長く険しい道のりを進んでこられた豊島先生が仰る事で、より深く心に沁み渡る。
豊島先生の言葉を胸に、これからも楽しく、諦めず、着実に歩を進めたい。
もちろん、安全確認は一番に!

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