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9月第1週放送(いつか憧れの)初段を目指す!スキがない将棋


NHK杯思い出の一戦「初優勝…虚無⁈」

9月のテーマは2022年3月に放送された第71期NHK杯の決勝戦。松尾歩八段に勝利して初優勝を飾った豊島先生にとって思い出深い一戦から「相掛かり」を解説して頂ける。
相掛かりは私が初めて大盤解説会に参加した、2021年の第34期竜王戦第1局が強く印象に残っている。そういえばこの時の副立会人で、解説会にいらしたのも松尾先生だった。フィナーレに相応しい内容になることは間違いなしだ。

講座に入る前に、優勝を決めた表彰式のVTRが流された。いかにも重たそうな立派なNHK杯を両手で支え、カメラが豊島先生の喜びの表情をアップで捉えようとズームしたところ、何とも言えない無表情で真っ直ぐカメラ目線を続けておられる。
「これが“虚無”?」とおどろおどろしいフォントでテロップ表示されたのを見て我慢できずに山口恵梨子先生が吹き出し、豊島先生も苦笑されている。
この時はどんな事を考えてたんですかと山口先生に尋ねられ、えー、何も考えてなかったかどうすればいいのか困惑してた気がします、と仰る豊島先生。
将棋となればまごついた様子などまるで見せない先生だからこそ、撮影現場の段取りに慣れないぎこちなさに何ともキュンとさせられる。愛おしい“虚無”なのだ。

あと半年続けてもいいです(はい喜んで!)

講座が9月で終了なのはすごく残念、豊島先生あと半年どうですか?と山口先生にお願いされ、続けてもいいくらいにあっという間でしたと仰り、それは視聴者の我々にとっても全く同じ気持ちだ。もう半年経ったのかと驚いてしまう。
毎週金曜日に講座範囲の告知を聞いて、目標意識を持って取り組むのは学生のような気持ちになり、新鮮で、楽しくためになる時間だった。
決勝戦の棋譜は下記リンク先から確認できる。(豊島先生が後手番のため、講座では便宜上先後逆での解説になっている)

棒銀には浮き飛車

飛車先の銀の進出で突破していく棒銀戦法は頻出することもあり、もたついていると瞬く間にやられてしまう。角換わりの回で攻めかた(数の攻めで優位をとる)は教わったものの、そういえば受けかたがわかっていなかったと気づく。受けを学べば相手の狙いも把握できるので攻めにも役立つはずだ。

飛車先の歩を交換した後、さて飛車をどこに引くか。ここで☗2六飛とした。2八飛と下段まで下げてしまうと、ゆっくりな展開なら大丈夫だが、このように☖8四銀と棒銀の場合は攻めのスピードに対応できない事があるそうだ。

①8四銀の棒銀を見たら☗2六飛と浮くのがパーフェクト
②角の頭、8七の地点が弱点で狙われてしまうので…
③☗7七角と上がっておく
④銀がどんどん攻めてきても…
⑤8八銀でさらに防御!
⑥7六の歩には飛車のヒモがついているので安心
(3筋〜6筋の歩を伸ばして横利きを遮らないように)

角換わり先手必勝説には「反対派」

この日の将棋フォーカスではAI新時代と題して、AIの世界では角換わりは先手必勝の結論が出たらしいが実際どうなのか、という特集が放送された。
将棋AIとして世界大会優勝を誇る「水匠」開発者の杉村達也氏のインタビューによると、AI同士の対局ならほぼ確実だとの事だった。棋士の先生方へのインタビューでは、確かに角換わりの後手番では戦いにくさを感じている、毎回なんらかの工夫が必要だと話される先生もおられた。
ちなみに「我関せず(⁉︎)派」として紹介されたのは佐藤康光九段と糸谷哲郎八段。独創的な将棋が魅力の先生方だ。

一方でこれに異論を唱える先生方もおられ、藤井聡太七冠とともに「反対派」として紹介された豊島先生のコメントが素晴らしかった。

「結論が出たといっても詰みまで完全にやっているわけではない。
何か一つ良い手が発見されれば反転する可能性もある。」(豊島将之九段)

「AI新時代 変わりゆく棋士の戦い方」特集内容より

AIでは決して計り知れない将棋の可能性を、おそらく将棋を始めてからこれまで数万局以上指してこられた豊島先生の鋭い感覚で嗅ぎ取っているのだろう。
このあくなき情熱こそが豊島先生が十数年もの間、トップ棋士の地位を保ち続ける原動力だと感じた。これが、一流を究める人の考え方なのだ。
ダメの向こう側なんて、普通は追いかけない。もっとも数回ダメなだけでも速攻で諦める自分がとても恥ずかしくなった。

SUNTORYオールスターファン投票2位

この日の夜にも恒例となった補講をXにポストしてくださった豊島先生から、もう一つ素敵なポストが届いた。

9月2日にSUNTORY将棋オールスター東西対抗戦のファン投票結果が発表された事を受けてのお礼の言葉だった。公式ホームページで選出棋士のコメントは後日紹介されるものの、ファンのためにSNSを通して直接発信してくださるのはとびきり嬉しい。

参加するには今年も争奪戦間違いなしで、反射神経と全集中が求められるプラチナチケットになるだろうが、ぜひ諦めない気持ちで頑張ってみたい。

西日本地区2位、全体得票数でも3位に選ばれた
東は将棋連盟会長を務める羽生善治先生がトップ当選

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