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6月第2週放送(いつか憧れの)初段を目指す!スキがない将棋

来〜たぞ〜来たぞ角換わり腰掛け銀♪

豊島先生の角換わり腰掛け銀といえば、第77期名人戦七番勝負の決着局でも指され、豊島先生にとって研究も思い入れも深い戦型の一つだろう。

今回の題材は2018年11月11日に放送された第68回大会2回戦、大橋貴洸七段(当時四段)との対局で、動く棋譜は下記リンクから見ることができる。
解説は我々が見やすいように実際の対局とは先後逆で行われた。
毎回のことだが、これを頭の中で再生できる先生方の頭の中を覗いてみたいと思ってしまう。

私が角換わりを指す場合は素人の浅知恵で、何とかして持ち駒の角を相手の飛車や金のコビンに打ち込んでやろうと狙いを定めているのだが、トップ棋士の先生方の駒組みは本当に、どこにも打ち込む隙がない。その極意がこの講座で少しでも身につけば嬉しい。

桂馬が跳ねてくると怖い中盤戦も冷静に対応

大橋先生の☖6五桂に対し、桂馬跳ねられたらお前はもう死んでいるって言われたような気持ちになるんですけど、と聞き手の山口先生。8筋の飛車と連携した桂馬の攻めは迫力があり、気持ちはすごくよくわかる。
単騎の桂馬なのでそんなに恐れることはないですよ、と豊島先生が仰り、☗7七銀の行き場として☗6六銀(攻め合いをしたい人)と☗8八銀(受けが好きな人)の2パターンを紹介された。
確かに☗6六銀で桂頭に釘を刺しておけば相手の前進の足止めになり、☗8八銀だと次に☗6六歩と突いて桂取りを狙うこともできる。好みの分かれるところだが、私は臆病なので後者を選びそうだ。

☗7七銀を☗6六銀と上がるか☗8八銀と引くか
豊島先生は攻めの棋風通り、☗6六銀へ

持ち駒の角は両取りの罠と隣り合わせ

角換わりで怖いのはうっかりすると両取りの技を決められてしまうところだが、今回もその一例を紹介された。
☖4五歩の地点は、数の攻め的に見ても相手が☖5四銀1枚の利きに対して、自分は☗5六銀と☗3七桂で2枚利いている。自分の優位とばかりに意気揚々と☗4五銀、と歩を取ると、4七の地点に隙ができる。☖4七歩、とたたかれ、☗4七金と吊り上げられたことで、すかさず☖3八角を打ち込まれる。飛車金両取りの罠だ。豊島先生がよくありますよねとおっしゃる通り、角換わりでは特に飛車と金の位置関係には細心の注意を払いたい。

①☖4五歩の地点の利きは自分が1枚勝っているからと
☗4五銀と出ていくと…
②目障りな☖4七歩のたたき。
これに☗同金と応じてしまうと…
③☖3八角とされ、飛車と金どちらかを奪われ、
馬を作られる最悪の展開に

1歩で金銀1枚以上の効果!お得なキャンペーン?!

☖4七歩とたたかれるのも嫌だったが、次によくある順として☖8八歩とされるケースを紹介された。☗7八の地点を守っていた金が同金と応じて、壁形(自玉の逃げ道を塞ぎ悪形とされる)になるのもまずいのだという。

①終盤、敵に攻め込まれた時、8八の地点に壁金がいると☖4八とを手がかりに、☖5八金、☖6八金と2枚の金で詰んでしまう。

①8八に金がいると玉の退路が封鎖されてしまう
ここから☖5八金→☗7八玉→☖6八金で詰み

②壁形ではなく7八の位置に金があれば、たとえ相手に3枚の金が渡ったとして、同じように☖5八金、☖6八金と追われても、☗7九玉、☗8八玉と、何とか上部へ脱出して玉の逃避行が実現できる。

②相手の金にどんどん迫られても、
壁が無いので追い詰められない
☗7九玉、☗8八玉と逃げていける

美濃囲いを作った時も、☗1七の歩は☗1六歩と上がり、風通しをよくしておくようにと習うのは、最終的に逃げていくことを考慮した非常口の意味合いなのだな、とこの説明を聞いて改めて理解が深まった。

十字飛車の狙いも秘めた☗3五歩

☖4五歩への対応、じゃあ一体どうすれば?(歩でたたかれて角打ちの両取りされたり壁金作られたりと思わしい順が無い)となった時、ふわりと突いていく☗3五歩が今日のポイントになった。
これは後手側(受ける立場)からしたら絶対に取ってはいけないそうだ。

取ってしまうと、☗4五桂と跳ねられ、☖4四銀で対処しても、☗2四歩→☖同歩のあと、☗2四飛車と走られてしまう。
王手銀取り、見事に十字飛車が決まるのだ。(下図①と②)

①☗3五歩を☖同歩で取ってしまうと…
②☗4五桂→☖4四銀→☗2四歩→☖同歩のあと、
☗2四飛車と走られ、十字飛車の大技が決まった

ちなみにこの順を回避しようと、☗4五桂に対してお互いに攻め合う☖4五銀を選択してこられたとしても、☗同銀と取り返した後、次に☗3四歩とする狙いが生まれる(下図③)。☗3五歩が攻め筋を広げる味の良い一手になっていることは間違いない。

③☗3五歩を突き捨てた効果で
次に☗3四歩で攻める狙いも生まれる

負けたことは無駄にはなりません!

とよぴー先生のお悩み相談室は、1級〜2級の方から、定跡を勉強している時の方が負けてしまい、勉強してない時の方が好調だったのだが、定跡を覚えていなくても初段になれますかという悩みだった。私も全く同じで、特にこの4月からはかなり本腰を入れて勉強しているのに、強くなっている手応えはというとちょっぴり心許ない。

これに対し、豊島先生がアマチュアの頃、アマ四段ぐらいで定跡をやってこないおじさまがいらして苦戦したというエピソードを披露してくださった。
長年培った勝負勘を武器に将棋を楽しんでこられたおじさま達の秘技には、さすがの先生も翻弄されたのだろう。

しかし、結果がすぐに身につくわけではないので、負けたことも無駄にはなりません、と柔和な表情ながらも真っ直ぐにカメラを見て話す言葉には、優しさの中にも確固とした先生の信念を感じた。何度も諦めることなく挑戦し続ける豊島先生らしさがあって、深い。

実際、定跡の丸暗記ではなく、意味を考えながらということに関しては、豊島先生の将棋講座を学んでまだ2ヶ月半だが、説明がわかりやすく、腑に落ちながら勉強できていると実感している。
何より、新しいことを学ぶのは、幾つになっても楽しい。このひとことに尽きる。
次に豊島先生がどんな世界を案内してくださるのか、毎週楽しみでたまらない。

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