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9月第4週放送・最終回(いつか憧れの)初段を目指す!スキがない将棋


「最終回」はいつだって切ない

9月24日、ついに迎えてしまった豊島先生の将棋講座最終回。私は新千歳空港の出発ロビーで、スマホの小さい画面を万感の思いで見つめていた。
前日に行われたJT杯将棋日本シリーズ北海道大会の現地観戦に訪れていたため、NHK+のアプリで視聴していたからだ。もちろん録画予約はしてあったが、最後の瞬間は先生やファンの皆様とリアルタイムで一緒に迎えたかったのだ。

普段にも増して優しい笑顔の豊島先生。責任感の強い先生なので、半年間講座をやり抜いた安堵感にも包まれているのかもしれないと感じた。
3月、告知にワクワクしながら、ゆるふわで続けてきた観る将を今度こそ、豊島先生と一緒に本気出そうと決め、この半年間は本当に一生懸命に取り組んできた。まだ森林限界には程遠く、登山口からせいぜい数分程度といった歩みだが、それでも私の棋力が着実な進化を遂げたことは間違いない。

厚みを生かして勝つ…厚みってどこ?

最終回のテーマ、厚みを生かす、将棋でいうところの厚みってなんですかと山口先生が質問する通り、私もニュアンスでしか理解していなかった。
豊島先生が仰るには、自玉を安全にしつつ、相手への攻めにも利いている状態が中段付近に築かれている事をいうそうだ。私はてっきり守りの面ばかりの意味合いの用語だと思っていたので新しい発見だった。

パーフェクトな一手は☖3五歩(放送では視聴者が首コテンしなくて済むように先後逆で解説してくださっている)。持ち駒の桂馬で☖5五桂を打つ合わせ技の準備だ。講座を受講してきて、次の手と合わせて…というパターンをたくさん学んだので、観戦していても次の指し手の狙いを自然と考えるようになった。

桂頭を狙いつつ、次に☖5五桂の時に4七の銀を3六へ逃がさないように味付けしている。さすが!

勝利へと向かう寄せでは☖5五桂の利きがあるうちにどんどん相手玉に迫っていく。☖4六桂で玉を下段へ落とし、最後は今日のテーマ「厚み」を築く☖3五銀がトドメの一手となる。
相手にとっては、敵玉の姿が全く見えなくなるうえに、(渡辺明九段風に言えば)ビジュアル的にも銀の厚み感が心を折れさせる。盤石にしてスキ無し、これぞ豊島将棋。最終回に相応しい素晴らしい一局だった。

☖4六桂。取られる前に5五桂にもう一働きしてもらう。
相手玉を下段に落とす効果的な一手
3筋に築かれた難攻不落な銀タワー。どこからも攻め入る事が出来ず、先手側から見ると強烈な圧迫感だ。

最後のお悩み相談はサバンナ高橋さんから

お悩み相談室も最終回という事で、質問は番組MCのサバンナ高橋さんからだった。今回講師を経験した事で、対局する上での心持ちに何か変化はありましたか、という質問をされた。
すると豊島先生、対局も楽しみながら指せるようになってきています、とファンにとってはとても嬉しいコメントだった。豊島先生ほどのトップ棋士でも、次はあんな事をしてみようとか、純粋に楽しみながら将棋に取り組む気持ちを持っておられる事にとても感心した。先生がよく揮毫される「無倦」の言葉通りだ。
この将棋講座を通じて過去の棋譜や戦型を紐解き、視聴者にわかりやすいようにと工夫して言語化することで、先生ご自身が構築してこられた知識の整理と体系化にもきっと役立ったのだろう。

サバンナ高橋さんのもう一つの質問は、今後、研究会をされる予定はありますか?と、これもまたファンにとって聞いてみたい質問だった。おひとりで研究を進めておられる事で知られる豊島先生にとって、今年は「す」先生こと菅井竜也八段とのVS匂わせ⁈ポストが話題を呼んだ。
この質問には豊島先生、愛らしい八重歯をみせながらニッコリ笑い、秘密です、との事。いけずなお人だ。放送後の補講の為に作ってくださったXアカウントは残されるそうなので、豊島先生の今後のポストから推測する楽しみを残してくださったのだと思いたい。

日を追う毎につのる「とよぴーロス」

この記事を書いていて、豊島講師とお別れした寂しさは時間が経てば徐々に薄れていくはずだと思っていたら、なかなか振りほどけない事に気がついた。
聞き手の山口恵梨子先生も、ご自身のXアカウントで4連投でポストしてくださったので一部を紹介したい。

数ヶ月前に収録が終わっていた、という事なので、恒例だった豊島先生の予習告知は収録時の記憶を遡ってか、台本を確認してポストしてくださったのだろう。
テキストの1週分は結構なページ数なので、ここで何を説明した、としっかり内容を理解していないとスラスラとは出てこない。豊島先生にとっては容易い事かもしれないが、伝えたい内容が毎回明確だったからこそ、私のように初段を目指すなんておこがましいド初心者にもしっかりと届いた。

余韻のある人とは

日々を過ごしていくなかで、数えきれないほどたくさんの人と出会い、会話をする。その中でも、自分にとって特に強く印象に残る人は、「自分の事を認め、決して否定しない人」ではないだろうか。

世の中、自分に自信満々な人なんてそうはいない。なぜできないんだと叱咤されたり、こうするべきだと”べき論”を押し付けられたりのほうが圧倒的に多く、無意識のうちにそういう言葉に自己肯定感を消耗させられている。
ダメな自分に落ち込む事があっても、そのままの私でいいんだよ、と優しく声をかけてくださる人のことは、どんなに時間が経っても救世主のように深く心に刻まれている。

6月第4週放送のnoteにも紹介した豊島先生の金言は、きっとこれからもたくさんの困難に負けそうな私を支えてくれる。何度読み返しても涙が出そうなほど大好きな言葉なので再度掲載して、私の将棋講座復習noteを締めくくりたい。

豊島先生の分かりやすいご説明は、知らない事だらけの将棋の中でも、新鮮な感動に溢れていました。今は正解だとしても、明日は違うかもしれない、そんなドキドキを“自分で”感じ取りながらも、先生に教わった数の攻めなど普遍的な知識はしっかりと根づかせます。
毎週盤の前に座り、駒に触れながらそうか!と少しずつ理解できる楽しさを味わえることは、日頃のストレスも忘れるほど没頭できた最高の時間でした。
本当に、本当にありがとうございました!

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