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「クソカード哲学」について


挨拶

どうも、人鳥と申します。
これまでに「スクラップ」カテゴリの雑語りや、マイナーカードを無理やり使ったコンセプトデッキ記事などを暇つぶしにあげております。

今回は「クソカード医学会」に関しての記事となります。
なんやそれと言う方は「クソカード診療所」で検索検索、当記事での説明は割愛させていただきます。

最初に断っておきますが、私はいわゆる「医者」ではありません。
「変なカードを強引に使ってデッキを組む」というのは一見それっぽいのですが、私がやっているのは「《冥界の魔王ハ・デス》をアドバンス召喚してビートダウンや!」「『キューピット』カードを寄せ集めてひとつのデッキで使ってみたい!」みたいなソロモード想定のお遊びデッキであり、カードの活用ではありません。

この記事ではその辺の差異、すなわち「クソカード」「治療」とは何ぞや、という話をしていこうと思います。

「クソカード」定義

まず大前提として本家本元は「・クソカードの定義は各々の判断にお任せします。」を基本として掲げています。
ただまぁ本当にそのままお任せされると色々話が進まないので、当記事では以下の定義に当てはまるカードを「クソカード」とします。

クソカードとは、その存在によって、出来ることが増えないカードである。

補足1

「出来ること」と言うのは、勝率を高めるためのデッキ構築に限らないあらゆる行為を含みます。
つまり、「モンスターの攻撃力を限界まで引き上げてオーバーキルしたい」「ループコンボにおいて無限の数値を生み出したい」「デッキのカードを全て除外してやりたい」などという、勝敗の観点から見れば非効率的過ぎて実用性のないものも含まれます。

非効率な行為の中でも「この可愛いカードを入れることでデッキの雰囲気がより華やかに出来る」と言ったような、個人の好み・こだわりに関するものは「出来ることが増える」に当然含みません。
しかし逆に「特定の好きな(可愛い)モンスターにフィニッシャーを務めさせるために役立つ強化効果を持つ」カードならば、「出来ることが増える」カードに含まれるでしょう。


例えば、《ゴースト王-パンプキング-》をアンデットサポートで展開し、《闇晦ましの城》で強化を狙い、闇属性アンデッドやその他の汎用サポートも使用することでビートダウンに成功したとします。

このデッキにおいてパンプキングはフィニッシャーと言う役割が存在しており、アンデッドサポートによって展開され、ビートダウンのエースとして効果を発動して打点を上げるなど、その能力が生かされている「意義のあるカード」……に見えそうになりますが、パンプキングの代わりに《龍骨鬼》を入れてもコンボの動きに何の支障もありません。

「同じような動きが出来る」とかではなく、龍骨鬼はパンプキングと種族属性レベルが一致する上に、最初からパンプキングの効果フル適用打点を超えていることから、ビートダウンにおいてこの2枚を比べてパンプキング側を選ぶ理由がありません。
《闇晦ましの城》も……実用性はともかく一応汎用アンデッドサポートなので、ちゃんと《龍骨鬼》を強化してくれます。
「かつてテラナイトの登場でガジェットは環境から追いやられた」とかの「実質上位」とはわけが違い、ただ殴るだけと言う前提においては完全な上位互換になってしまうのです。

これではパンプキングは「無理やり入れてるだけのクソカード」と言われても致し方ありません。
この扱いを払拭するためには、「攻撃力が上昇することそのものが利点になる」か、「攻守ステータスの数値そのものを活用する」かする必要があるでしょう。
(攻撃力の低さで《狂惑の落とし穴》を避けられるとか、《禁止令》で指名されにくいとかは流石に考慮しないものとします。)

補足2

また、「出来ること」はデッキの本筋となるコンボルートそのもの以外も含みます。
どういうことかと言うと、「《サンダー・ボルト》や《灰流うらら》は患者ではない」ということです。当然ですね。
これらのカードはデッキのメインギミックに基本的には関与しませんが、そのメインギミックを通すためであったり敵の行動を妨害したりするために有用なカードです。

サーチ不可能札に対して「『引ければ強い』でも構わない」とも言う事が出来ます。
ただし「サーチ対応」と言うのが既にある程度他カードとの差別化になっているのに対し、「素引き前提」はあらゆるカードが比較対象に上ってくるためそう緩い話でもないです。
実際に上記2枚は他の誘発や除去と比較して強力な性能と見做されているからこそ多くのデッキに入っており、断じて「本筋と関係ないけど適当に入っている」カードではありません。

補足3

「デッキ」とは本来のルール上においては40枚以上60枚以下の公式使用可能なカードを詰め込んだものですが、この記事、特に先述の定義においては「一定の勝ち筋を持ったものに限る」ものとします。

この「一定の勝ち筋」に関しての厳密な定義は出来ません。

例えば補足1の最初に挙げたド派手過ぎるコンボは、成功すればまず勝てるため勝ち筋でしょう。
逆に「上級モンスター(展開効果なし)のみを40枚集めた」として、相手の協力がない限り誰も召喚出来ず、自分ターンに出来ることがターンエンドと超過手札の墓地送りくらいしかありません。

ルール上はこれもデッキではありますが、勝ち筋が無いためデッキとは呼べないと言われるのも致し方なしでしょう。

また上記ほど極端ではない例として「攻撃力の高いバニラや装備魔法を詰め込んだだけの単純なビートダウン」は、現代においてかなり通用しづらいとはいえ一応の勝ち筋であり、その方針で組んだ40枚も「弱いだけのちゃんとしたデッキ」でしょう。
では「レベル1バニラのみ40枚」や、「《火の粉》や《レッド・ポーション》のような効果の低いライフアドカードのみを詰め込んだ40枚」は?

勝つためには相手が10ターン近くかそれ以上に棒立ち無抵抗である必要があり、理論上可能であるとはいえ流石にこれを「勝ち筋がある」と呼ぶのは苦しいと思われます。

ただこれらの「弱いデッキ」と「弱すぎる紙束」を厳密にライン引き/定義づけするのは極めて困難です。
攻撃力いくつなら、とか何ターン以内に、と言ったところで反例は無数に出てきます。

よってこの記事では、「デッキは最低限の勝ち筋を持つべき」と言うに留めます。悪しからず。

「治療」について

では治療とは何か。
当然「患者では無くす」ことが「治療」に当たるはずです。

つまり、そのカードが存在することによって出来ることがあるのを示すのが治療である、と私は考えます。

先ほど補足で挙げたパンプキングの話は、現在ニコニコ動画において「ヌケニン@いのちのたま」氏が治療動画を上げています。

具体的な動きは動画を見ていただくとして、大まかに言うと「種族を利用した盤面展開・属性を利用した素材利用・《魂の造形家》によるステータス参照」の3種を全て用いた物であり、このうち二つであれば他のモンスターを使っても代用できるものの、全てを満たすのは《ゴースト王-パンプキング-》のみとなる、と言うものです。

この治療において、パンプキングの本来の個性となる要素(極めて微妙なパンプアップ効果)は無視されていますが、私はこのデッキのパンプキングを別なカード(「より強力」なはずの龍骨鬼など)に変えると成立せず、しかもちゃんと戦えるデッキの勝ち筋に絡んでいるという理由で、完璧な治療動画だと思います。

逆に完璧でない例について……ネガティブな例での名指しは避けたいのですが、ぼかすと話が進まないのでカード名と施術内容は出します。
一応読み飛ばすならこの区切り線から7段落ほど先の区切り線まで。


《スクラップ・クラッシュ》の治療案として、スクラップの被破壊時効果は場所をモンスターゾーンに指定していない点に着目し、《超装甲兵器ロボ ブラックアイアンG》の装備カードと化した《スクラップ・ワーム》3枚を叩き割ることで大きなリターンを得るコンボを上げている動画があります。

コンボ自体は確かに、クラッシュを別なカードに変えても成立しない……のですが、結果として起きているのはあくまで単なる「サルベージ効果の同時発動」です。

スクラップは手札に来たモンスターをさほど好きに吐けず、手札にあるよりデッキや墓地に居て欲しいカードの方が多いことから、「3枚一気にサルベージする」のはその先の明確な狙いも無しに行うべきではありません。
「墓地落とし効果をワームに割き他のカードを落とせていない」状況で強引に3枚回収したところで、手札に戻せるのは初動のラプター以外にはゴーレムやシャークなどのコンボパーツがせいぜいであり、むしろ墓地を荒らし手札で腐るカードを増やすことに繋がりかねません。

仮に「手札の枚数を稼ぐこと自体を狙う」にしても、そもそも動画では「ラプター+ファクトリーに加え更なる指定を入れる」レベルの相当な上振れ初動であるというのもマズい。
先述の「サルベージの質」問題と合わせ、「『ものすごく良い手札』から始動し、『コンボパーツが手札に来る事故』の手札に変えてしまう」だけとさえ言えます。

なお「次ターン以降の展開に備えて手札にモンスター(ラプター)を1枚サルベージしたい」だけなのであれば、初動ラプターに加え「ゴブリンを墓地に落とせるカード(ファクトリー/フラクトール/天キ/おろ埋のうち一枚)」or「オルトロス(《スクラップ・エリア》の余り)」などより緩い条件から、簡単かつ次ターン以降も継続的に行えます。

言うなれば「《闇晦ましの城》はパンプキングの効果発動条件になるので他のカードに変えられないカード」と言っているようなものと言えます。
(確かに「効果を発動させる」のは固有だが、実際はその効果発動によってもたらされる恩恵パンプアップは他カードでも起こせる)

よってクラッシュのコンボは実用性・実現性が低いのみならず「クラッシュによって出来るようになったことがある」とは言い難く、方向性こそ違うものの「【パンプキングビート】の類例」だと私は思います。


具体例:何が患者で、何が健康なのか

さて、ここまで堅苦しい言い回しで定義だのなんだの言ってきましたが、鋭い人であれば先ほど述べた「患者」の定義は極めて緩く、ほとんどのカードが患者ではなくなることに気付かれたかもしれません。

例えば、《スクラップ・マインドリーダー》と言うカードがあります。
有用な効果を持ったモンスターとは言い難く、私はコイツを採用してランクマッチに挑む人を見たことがありません。

以下画像出典は遊戯王OCGカードデータベース
モチーフが曖昧で、イマイチ世界観のよく分からん奴

しかしマインドリーダーは「2体しかいないスクラップのレベル1のなかで、チューナーなのも、強制デメリットが無いのもこちらだけ」であり、また「攻守0の機械族である」と言う特性を持ちます。
もう一方のレベル1スクラップこと《スクラップ・サーチャー》は一見競合なのですが、その強力な展開効果から積極的に活用するデッキが組みやすいことがむしろ追い風になります。

例えば手札にスクラップモンスターが無い事故が起きており、サーチャーのために入れた《ワン・フォー・ワン》と、リサイクラーのために入れた《幻獣機オライオン》があるとします。
この時オライオンを捨てサーチャーを特殊召喚した場合、サーチャーの強制効果がチェーン1、オライオンの任意効果がチェーン2に置かれるため、幻獣機トークンは破壊されてしまいリンク召喚に繋げることが出来ません。
しかしここでもしデッキ内にマインドリーダーが居れば、幻獣機トークンを破壊せずにリンク2の《スクラップ・ワイバーン》などに繋ぎ、手札事故を脱せる可能性があるのです。

攻守0、すなわち攻守同値をサポートする「機巧」モンスターに関しても、先ほど軽く触れた《スクラップ・リサイクラー》を活用した展開デッキであれば《星遺物-星鎧》を《機巧磐盾イワタテノ多邇具久タニグク》で蘇生するコンボを採用することがあるので、現実的にその恩恵を得られる可能性があります。
「機械のようで機械じゃない」スクラップにも実は機械族が4体(狭義カテゴリ外のリサイクラー含)存在しますが、機巧の効果に対応するのはマインドリーダーしかいません。

よって、間違いなく《スクラップ・マインドリーダー》は「その存在によって出来ることが増えるカード」であり、私は患者だとは思いません
実際に採用されることがほぼ無いにもかかわらず、です。

理屈の上だけで実際にはほとんど使わないカードが患者でないなら何が患者なのか?

その辺を具体例と共に触れていきたいと思います。
幸い(?)にして私の愛するスクラップには「そこそこ」のカードが多く在ります。

……なお、ここから先スクラップの全カード(《スクラップ・フィスト》除)に触れていくので、それなりの文量があります。
また、それぞれの効果に関して詳細な解説はしないため、必要なら下の公式データベースリンクから関連カードを見るなどして確認してください。

患者度0:健康優良

非の打ちどころのない健康体。
このページで詳しく触れる必要も無いでしょう。

《スクラップ・ワイバーン》《スクラップ・ゴーレム》
《スクラップ・ラプター》《スクラップ・リサイクラー》
《スクラップ・キマイラ》《スクラップ・エリア》
《スクラップ・ファクトリー》

患者度1:健康

まぁ普通に健康。
誰が見ても普通に個性のあるカード。
上記「0」との区別はそう明確な物でもないです。

《スクラップ・シャーク》《スクラップ・オルトロス》
《スクラップ・ゴブリン》《スクラップ・サーチャー》
《スクラップ・スコール》《スクラップ・ドラゴン》
《スクラップ・ツイン・ドラゴン》

患者度2:不摂生

胸を張って健康とは言えないものの、病気なわけでもないカードです。
人間で言う「血圧が高い」とか「脂肪が多い」みたいなもんだと思ってください。
この辺から軽い解説を入れていきます。

《アトミック・スクラップ・ドラゴン》
その有用性が議論になりやすい大型シンクロ。
積極的に出す切り札とは言い難いが、EXからの自陣破壊や墓地干渉として手頃で替えの利きづらい性質を持つ。

《スクラップ・デスデーモン》
現在カテゴリ内で出す意味はほぼ無いが、デーモンの名を持ち素材縛りを持たない唯一のレベル7シンクロである。

《スクラップ・コング》
即自壊を生かしたファクトリーやグリーンバブーンの起動が古くから有名だが、特段組み合わせなくとも「特殊召喚すればデメリットを持たない」素材用のレベル4非チューナーと言うだけで実は唯一。
春化精と組むなら打点の高いレベル4であることも地味に侮れない。

《スクラップ・ポリッシュ》
パンプアップ効果の数字そのものもそこそこ大きいが、どちらかと言うと相手ターンに能動的にスクラップを割れる効果が現状とても貴重。
「1」で挙げたスコールに次ぐ形の素引き狙いとなるが、ワイバーンを相手ターンに妨害として活用したいなら併用してもいいだろう。
下級モンスターにも戦闘破壊されかねないワイバーンの打点を上げられるのも、相手ターンを凌ぐ上では結構ありがたい。

《スクラップ・ビースト》
あえて特記しておくが、このカードは私が「アッキー」氏に治療依頼を出して治療して貰ったカードである。
ラプター登場以前は普通に使われていたモンスターであり断じて「使って使えないカード」ではないが、カテゴリ内での競合が極端に多く「存在によって出来ることが増えない」例の典型だった。
氏の治療によって「レベル4獣族チューナー」としての競合の少なさに活路を見出され、カテゴリ外の獣族デッキにおける活躍が見込まれている。

患者度3:体調不良

わりと病気ではあるものの、入院治療を要求するわけでもないカードです。
普通にデッキで使うにあたって強みや固有性を感じにくいものの、生かそうと思えば生かせるくらいのラインであり、言い換えれば「簡単な治療が通じる」程度の病状と言えます。
「少し考えれば固有性を見出せるから患者じゃない」と見るか、「専用の考え方をする必要がある時点で患者」と見るかが割れるラインでしょう。

《スクラップ・ソルジャー》
メインデッキの上級チューナーと言うだけで一定珍しく、《アルティマヤ・ツィオルキン》も出せる。
キマイラの召喚からツインドラゴンが出せるのも古典的コンボであるが、《蛮族の狂宴LV5》対応に関しては若干ネタ寄りか。
またシンクロ先が厳しく制限されており、ツィオルキンのような特殊な条件でない限りカテゴリ外シンクロモンスターが出せない。

《スクラップ・ハンター》
実はカテゴリ外のチューナーも落とせる。
ただし「ハンター+破壊対象」を並べる手間と「ゴーレム+2体」を並べる手間がほぼ同じであり、《ライトロード・ドミニオン・キュリオス》の存在が無視しづらい。
春化精並びに地属性チューナーを絡めつつ、破壊そのものをサーチャーの展開に活用するなどすることで差別化できる。

《スクラップ・ブレイカー》
相手依存があるが、自分の場が空いているときに召喚権を使わずファクトリーの効果発動を狙えるのはコイツのみ。
相手依存なだけでサイバードラゴンのような自分依存はないのも嬉しい。
モンスターとしても唯一のレベル6でありバロネスあたりを出したい場合は助けになるほか、ラプターのサーチ対象の中で召喚権を使わず活用できるモンスターも他には居ない。

《スクラップ・マインドリーダー》
既に触れたとおり。
ワンフォーワンやタニグクで展開出来てデメリットの目立たないスクラップモンスター。

患者度4:入院患者

私的にはここからが「医者の治療が必要な患者」です。
通常の手段では活用が難しく、差別化点を無理やり探す必要のあるカード。
「他のカードと違う要素」を見つけるだけなら可能でも、そこから「このカードを使うからこそできること」を見つけるのは困難でしょう。

《スクラップ・ワーム》
スクラップ唯一のレベル2であり、唯一の昆虫族であり、唯一のダイレクトアタッカーであるチューナー。
レベル2と言えばスプライトではあるが、如何せん【スクラップ】はエルフやギガンティックと相性の良いデッキとも言い難く、昆虫族EXも種族縛りを求める閉鎖的な効果が多い。
また、《アティプスの蟲惑魔》程度の縛りを抜けて昆虫族リンクモンスターを出すだけならば、《虫忍 ハガクレミノ》経由と言う選択肢も忘れてはならない。
他のスクラップカードと違う部分は多く見つかっても、具体的にそれを使って何が出来るかを見出しづらいモンスター。
リサイクラーでも落とせる《ボルト・ヘッジホッグ》とのエクシーズや、昆虫族チューナーとしての希少性を何かに繋げたい。

追記(23/11/24)
恐竜族とスクラップを合わせたデッキ構築において、《ベビケラサウルス》《プチラノドン》がレベル2であることを用いたスプライト混合であれば、スプライトの効果で展開出来ることに強い意味が出て来ます。
元々【恐竜族(進化薬軸)】【スクラップ】にはシナジーがあるので、そこの間をラプター以外から繋ぐアプローチとして有用だと思います。
アダマシアなど他にも「元々スクラップと組み合わせる意義のあるレベル2」は存在するため、そのような構築においてはスクラップ唯一のレベル2であるこのカードの採用意義があると感じました。

それぞれ必ずしも主要な展開ルートを務めるわけではありませんが、存在することによってデッキに幅が出るオルトロスやシャークのようなポジションと言えます。

《スクラップ・オイルゾーン》
バトルフェイズを放棄し効果を無効にするスクラップ専用の蘇生展開。
効果が無効になるのは《アイアンコール》なども同様であるため、問題なのは戦闘放棄の方。
戦闘放棄デメリットが意味をなさない先攻であれば展開補助として十分使えるものの、「サーチ手段のない素引き札だけど先行なら使えるかも」程度なのはやはり問題か。
固有性と言う面で見るとかなり厳しいためもっと下のランクでも良いのだが、即効性のある蘇生としての上位互換が制限カードの《死者蘇生》くらいしか無いこと、先攻でなら十分な実用性があること、「魔法罠破壊」を「スクラップ名称によるモンスター破壊」に変換するカードと言う点では一応固有であることなどから、「ギリギリで『ギリギリ患者』ラインにしてもいい」と言う判断。でも患者。

患者度5:重篤患者

4と同様の活用困難性に加え、「まぁあったらあったで使える」程度の最低限の性能さえ担保できないカード。
強いて言うなら魔法罠である限り先攻ワイバーンの効果で割る的に使えますが。

《スクラップ・カウンター》
主にチューナーが持つ自壊効果を発動させやすくするという明確な目的は分かるが、それだけ。
反射ダメージを狙うのはスクラップで積極的に行いたい戦術でもなく、自壊効果をサルベージのために行うのならば他の手段がある。
「守備モンスターで耐える」ことが通じた時代のコンセプトカード、と言う評になるだろう。

《スクラップ・クラッシュ》
罠かつ条件付きで発動に手間がかかる、表側で残るカード限定で除去として弱い、自分のフィールド魔法なども巻き込む三重苦。
魔法罠状態のスクラップを割れば固有効果に繋げる……と言う話もあるが、その仕込みやこのカードそのものの発動にかけるコストに対して、得られるリターンを考えればトリビア止まりだろう。
一応オイルゾーンと併用することでカテゴリ内でもコンボ可能だが、リターンに対して現実的でないのは同様。そもそもサーチが効かないのでカテゴリ内である意味がない。

患者度EX:危篤

4・5のような単純なカードパワーの低さ・活用幅の狭さのみならず、固有性と言う観点から特に大きな問題を抱えているカード。
これまでのカードと比べても、さらに「このカードならではの要素」を探すのが難しい。

《ポンコツの意地》
凡骨ではない方の意地。
相手フィールドに蘇生できる点を除いて《取捨蘇生》のほぼ下位互換。
選択権が相手にあることとスクラップ指定であることから、差別化点やデメリットの活用も極めて難しい。
ここまで触れた他の魔法罠には「必要な時にサーチ出来れば」評価が上がるだろうものもあったが、このカードは墓地リソースを失うデメリットの大きさに加え、そもそもスクラップ名称を持たないためその手の将来性を期待するのもかなり苦しい。
攻撃力しか見ないCPU相手なら、相手依存要素を管理できるのでギリギリ使えるかもしれない。


「患者度」総括

以上です。

この具体例、特に「3」と「4」の境で以って、私の思う「患者」について伝わったでしょうか。

いくつか抜き出すと、スコール3積みさえ稀なのでまず採用されないポリッシュや、役割をオルトロスに食われがちなブレイカーなどを「患者でない」としています。
これらのカードは、それぞれ「ワイバーンを妨害カードとして構えるための手段を多めに入れたい」とか「破壊時効果を最大限使いたいので様々な手段サーチから破壊が出来るようにしておきたい」などの目的に対し答えてくれるカードであり、真剣勝負でこそ実用されないものの「このカードがカードプールにあって良かった」と言われうるカードです。

全体1000アップ自体もうまく決まれば普通に強い

逆に「デメリットは重いが展開蘇生カードとしてはギリギリ使える」オイルゾーンや、レベルや効果に固有性があるはずのワームを患者寄りとしています。
オイルゾーンは先攻で使えるかもと言う話もしましたし、ワームだってレベルが違うことで出せるモンスターが違うほか、【ダイノルフィア】の残したライフにトドメをさせる可能性だってあります。

ただピンポイントで役に立つ状況があると言う話だけなら《火の粉》でさえ同じことであり、それよりも「死者蘇生のほか、春化精や《星遺物を継ぐもの》のような積極的に展開に絡めやすいカードに対して優位を作りにくい」「ただ低レベルのシンクロやエクシーズが出来ても、それだけで終わってしまう」と言うような、他のカードとの関係を踏まえた判断になっています。
ワームに関しては執筆時点の見解。現在は上部追記の通り。)

一見どうしようもないデメリットばかりのクソカードを治療できるのも、この「カードの価値は他のカードとの関係性によって変わる」性質があるからだとも思います。

「治療」と言うエンターテインメント

さて、今や(※)「クソカード医学会」は、ニコニコYouTubeともに展開し、時に何万何十万の再生数を誇る人気コンテンツです。
※別に私は黎明期からのファンとかではありませんが……

これは決して不思議なことではなく、「弱いカードを工夫して使う」と言うのは武藤遊戯の《クリボー》を始祖として、「通常モンスターは仮の姿」なHERO、「弱くても支えてきた」遊星のモンスターなど挙げればキリのない、遊戯王の華のひとつとも言えるモチーフなのです。
もちろん学会長ことあまくだり氏による継続的な動画投稿や盛り上げ、マスターデュエルの存在によるプレイヤー層の拡大など様々な要素が重なってはいるでしょうが、遊戯王を愛するユーザーにとって「クソカードの活用」は字面以上に普遍的なものだったと言えるでしょう。

しかしそのように「ウケるエンタメ」であるがゆえに、医学会が広まるほどに「よりエンタメ性の高い」ものが良しとされてはいないでしょうか。
医者の視点としてはともかく、少なくともコメントの傾向としては「劇的に弱いカードを」「環境でも通用する強力で実用的なデッキで」使う事こそが「良い治療」で「良い医者」なのだと見做されているように思います。


根本も根本の話として「人を救う」こと自体が目的である現実の医療と違い、クソカード医学は別に「カードを救う」こと自体に価値がある訳ではないので、「難しいこと抜きでエンタメならエンタメで良いんだよ」と言われればそれはその通りです。

しかしそのエンタメ性ばかりを見るあまり、せっかく「カードの価値」について真摯に考え良い案を出した治療に対し「環境で通用する実用性が無いので結局ネタ」「裏方ポジションでメインになっていないので結局弱い」と言ったコメントがされることも多くなってきていると感じます。

それに対して感じる違和感、本家OPで「使い道の分からないカード」と言われることは単純なカードパワーやデッキの強さとは別ではないか……と言うのを言語化して整理するために書かれたのがこの記事になります。
あとスクラップのカードについて定期的に喋りたくなる私の病気の発散も兼ねています。

そんなわけでオチも何もないですが、書きたいこと書いたため目的は達成。
長くなるので……と言うか既に発散のせいで長くなっているので、ここで締めさせていただきます。

好きな本家治療はやっぱり《鉄壁の布陣》な、人鳥さんがお送りしました。

ここから先は要らん話です。

要らん話

スクラップ魔法罠の大半は、
(1)リンク召喚時にスクラップ魔法罠サーチ
(2)フリーチェーンで自分のカード破壊
って言うリンク1が来れば救われると思います。
VRAINS連中がやたら持ってる「サーチするリンク1」は全決闘者の夢にして妄想強化の万能薬。

今まで言ったとおり、クソカードをクソカードたらしめているのは性能そのものの低さよりもその固有性の無さ、「他のカードでも良い」点であり、名称指定で無理なくサーチできるならそれだけで「他の汎用カードでは駄目」な理由になりえるからです。
(2)はクラッシュの発動補助であり、純スクラップ唯一の相手ターン妨害ことワイバーンを安定して起動する意図であり、どうせ妄想なんだから盛っておけの精神です。

クラッシュは曲がりなりにも範囲除去なので、あらかじめ構えておけばモンスターメタの永続効果などに対して使えることもあると思います。

でもカウンターはそもそも守備表示への攻撃をさせないといけないので、それでもそこそこ辛いと思います。数値自体は大きいので遊びようはあるでしょうが。

ポンコツに至っては墓地除外デメリットや、サーチするには名称が~と言う話に加え、もしももしもで「除外デメリットを逆手にとれるスクラップモンスター」が来たとしてなお「相手に選択権がある」ので永遠にポンコツだと思います。

《ポンコツの意地》を救える新規カードや、治療できる医者が現れることは一生ないよ!
仮にそんなことがあったらカクリヨノチザクラちゃんの脚にうずまっても構わないよ!

以上、要らん話でした。

イラストは好き
「ガラクタの寄せ集めで立ち上がる」フレーバーも好き

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