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33.宮様スキー大会国際競技会

国際スキー連盟(FIS)公認の競技会である宮様スキー大会国際競技会が毎年3月に北海道札幌市で開催され、優勝者には皇族からカップが下賜される。その函館地区予選が2月にニヤマ高原スキー場で開催され、私もジャイアント・スラロームで出場することになった。ジャイアント・スラロームは日本語では大回転と呼ばれ、回転に近い小刻みのターン技術と、スーパー大回転の持つスピード感を併せ持ったダイナミックな種目で、人気が高い。アルペンスキーの基本の種目とされることがある。スーパー大回転・滑降が高速系種目と呼ばれるのに対して回転・大回転は技術系種目と呼ばれる。
スキーに限らず、スポーツで大会に出場するのはこれが初めてである。それだけに前々日から緊張しはじめた。スキー板は既に1年生の夏にレース用の堅い板を買っていた。前の晩、Oが持っていたワックスをスキー板に塗った。ワックスはスキーの滑走性の向上と、滑走面の保護のために使用する。私が使ったのは固形のもので、専用のアイロンで溶かしてスキーの滑走面に垂らしてからアイロンを動かしてまんべんなく塗りこむ。冷えて固まった後、プラスチックの厚い定規のようなスクレーパーで余剰分を削り落とした。
大会当日、我々は顧問のみっちゃんの車でニヤマ高原スキー場へ向かった。この日は一日授業は休みになる。スキー場に着くと、大会の横断幕みたいなものが張り出されていた。しかし、所詮は函館地区の予選である。それほどギャラリーはいない。平日だったから当然か?私はけっこう緊張するタイプで、既にこの時から緊張していた。はたしてゴールにたどり着けるか?初心者なので初めからタイムは気にしていない。完走することが目的である。
ニヤマはファミリーで楽しめることは勿論、レーサーの基礎的技術を養う事が可能な環境もあり、ストイックにスポーツと向き合える玄人好みのスキー場という面も持ち合わせている。私はどちらかというとストイックにレースに望むタイプである。後年、スキーに慣れてくるとゲレンデのスピード狂になった。
準備が整うと、コースの下見を兼ねて、コースの整備をする。エッジでスタート地点からゴール地点まで、滑走面の凹凸を無くしていくのである。レースのコースとなるのは「フリコ沢」コースだ。問題は最大斜度35度をどのくらいのスピードで、なお且つコースアウトしないように滑り下りられるかであった。
一通りコースの整備が終わるとリフトを2回乗りついでスタート地点で待機する。いよいよレースが始まった。私は最後の方のスタートだ。スタート地点から見ているとさすが道産子、上手いな~~~と思える選手もいれば、早々にスピードの出しすぎでコースアウトする選手もいた。そういう姿をみてじっくり作戦を練る。最初は慎重に、「フリコ沢」さえクリアしたら後はスピードに乗って滑り降りる作戦にした。
そんな事をいろいろ考えていると、とうとう私の出番が回ってきた。慎重にスタートすると着実にポールとポールの間をくぐりぬけていく。しかし、斜度のせいか、思ったよりもスピードが出てしまった。そしていよいよ「フリコ沢」である。エッジを効かせてスピード調整したが、その甲斐もむなしくコースアウトしてしまった。しかし、まだリタイアではない。態勢を立て直して根性でコースに戻り再度スタート。1分くらいのタイムロスはあったかもしれないが、何とか「フリコ沢」をクリアし、後はそのままスピードに乗って念願のゴールすることが出来た。結果は参加賞だが、スキーを本格的に初めて1年ちょっと。それで大会に参加して完走できたのである。自分自身にちょっと自信が持てるように思えた。レース終了後、ロッジの食堂で食事していたとき、顧問の黒木先生が「よくやった」と言って握手してくれたことは未だに忘れていない。

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