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香り

久しぶりにゆっくり映画を見た。

『セントオブウーマン』という1992年の映画である。盲目の退役軍人と、お世話係をすることになった青年の話である。

もちろん内容も素敵で、少し長いけれどその中にいくつか響く言葉もあって。
その中で、出演シーンは一度っきりだが、ものすごく印象に残った女性がいた。

彼女はドナという女性で、レストランで彼を待っている。彼女と主人公フランクがタンゴを踊るシーンがあるのだけど、演奏も、そして踊りもあの空間も全てが素敵で釘付けになった。

まずドナの美しさ。黒いドレスにゆるくまとめられた美しい髪。女性で惚れる女性っているんだなとあらためて思った。
そして何より印象に残ったのが、フランクがドナの香りを見事に当てたこと。

香りから蘇る記憶については以前も触れたことがあるが、ああ、やっぱり香り、っていいよね。と思った。

「石鹸の香りがする女性になりなさい」かつて同じ高校に通っていた母がシスターから言われたと聞いたことがある。
ドナはまさにそんな女性で。きっと本当に石鹸の香りがするのか否かは意味深いが、フランクは見事にその香りを当てた。

私も人生で一度だけ自分が使っている石鹸というか、香りを当てられた経験がある。私もその彼の香りを忘れない。その香りには思い出が詰まっている。いまだにその分かりきっている香りを嗅ぎに行ったことはないが、たまに街中でその香りに出会うことがある。その度にその香りは私の記憶をよみがえらせる。

香りってなんて素敵なんだろう。
自分は香水はつける人ではないが、それでも人それぞれ特有の香りはある。
いつかは私も、香る自分の香りを探してみたいと思った。

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