私が愛した永遠の七日

前置き

 この記事は、以前使っていたブログサイトに載せていたものです。ブログサイトのサービス終了時にnoteに移転しようかな~と迷って、結局埃かぶったままだった記事です。しかしながら、このたび、私の好きだった作品がまったく別の作品になって帰ってきてしまったらしい、と聞いて、いてもたってもいられずこの記事を発掘してきた次第です。

 その作品というのが、中国発のゲームアプリ、「永遠の七日」です。「永遠の七日」は2019年5月に日本語版が配信され、私は配信されてすぐのころにアプリをダウンロードして、メインの更新がなくなるころまで遊んでいました。日本では2020年4月にサービス終了してしまいましたが、本国中国では今でも更新の続いている人気アプリです。

 「永遠の七日」というゲームは、私にとって、そのシステムにこそ最大の魅力が詰まっていたゲームでした。だから、「永遠の七日」という作品がどんなゲームだったのか知らない人に、少しでも知ってほしくてこの記事を再アップします。

 以下の文章は、「永遠の七日」のサービス終了時に一部消失してしまったリンクに関わる文章を少し修正した以外は、プレイ当時(2019年7月)のままのものです。当時私が感じていた興奮を、少しでも届けることができれば幸いです。


本文

 今日は私が絶賛激推し中の「永遠の七日」(とわのなのか)という作品を紹介したいと思います。「永遠の七日」は、「IdentityⅤ 第五人格」「陰陽師本格幻想RPG」「荒野行動」などで知られる中国の大手メーカー、NetEaseが手がけるアプリゲームです(日本版の運営はDeNA)。このゲーム、おそらく確実に人を選ぶのですが、刺さる人にはメチャクチャに刺さると思うので、まだこのゲームを知らない刺さりそうな人に届いたらいいなと思ってこの記事を書きます。

 「永遠の七日」は、タイトルのとおり終末の七日間をループする、マルチエンディング形式を採用したスマホRPGです。舞台は近未来的な都市で、突如世界に現れた異形の侵略者から都市を守るために戦う異能者の集団の指揮官になることになった主人公は……という、いかにも日本のゲームやラノベ風な筋書きです。OP主題歌に鈴木このみさんやMYTH & ROIDさんを配置していたり、先行配信されている中国版では「STEINS;GATE」とコラボしていたりと、日本のループものへの熱いリスペクトを感じる作品になっています。

こちらは、アニメ「Re:ゼロから始める異世界生活」のEDでおなじみのMYTH & ROIDさんが歌う主題歌です。
どんな雰囲気の作品かは、なんとなく伝わったでしょうか?


 では続いて、この作品の魅力は何か?


 シナリオ、キャラクター、グラフィック、BGM……飽和するアプリゲーム市場には、このあたりがしっかりしていて魅力的なゲームなどごまんとあります。ですが、私があえて「永遠の七日」を推すのは、この作品の魅力が“「閉ざされた都市の中で同じ七日間をループする」というコンセプトにのっとった独自のシステム設計”にあるからです。


 アプリゲームといえば無限に画面をポチポチするだけの作業がメインだったのも今は昔、最近ではシナリオテキストの分量を声高に訴えたり、良質なシナリオが喧伝されるスマホゲームが少なくなくなりました。けれどその多くが、「クエスト、もしくはミニゲームをクリアして、その報酬としてシナリオを読む」という形式をとっていると思います。


 しかし「永遠の七日」では、「主人公の行動・選択によってシナリオ展開とエンディングが変わる」という「ゲーム体験」にこそ重きが置かれていて、そのために徹底した固有のシステムが形づくられています。

 最大の特徴は、行動力の設定です。このゲームでは、都市で行動する(=シナリオを進める)のに行動力を消費します。ゲーム内で1日に活動できるのは12時間で、1時間過ごすのに行動力20を消費し、現実の時間で1時間経つとゲーム内行動力が10回復します。つまりどういうことかというと、ゲーム内で1日を過ごすためにはプレイヤーは現実時間で1日待つ必要があるのです。しかもこの行動力、課金アイテムなどで買うことができません。


 その上、「永遠の七日」はコンシューマーゲームと違ってセーブデータのリセット&リロードはききません(一応七日間を「はじめから」やり直すことはできますが)。選択肢を間違えた、こちらを先にやっていれば、と思ったことがあったとしても行動した後ではすべて遅いのです。


 正直、多くの人はこの説明を読んで「不自由なゲームだなあ」と感じると思いますが、私はこの不自由さこそが「永遠の七日」の魅力だと考えています。プレイヤーはまさしくゲームの中の主人公と同じ七日間を過ごし、主人公と同じ「あの時、ああしていれば」という無念を抱き、次こそは別の結末を迎えようと努力するでしょう。


 ゲームの進行はRPGというよりもSLG的で、やはりほかのスマホアプリゲームではあまり見ないシステムが採用されています。都市でできる行動にはモンスターを討伐して行動できる場所を広げる「エリア討伐」、キャラクターと仲良くなったりイベントを進行したりするための「巡回」、イベント進行に必要なパラメーターを上げるための「建設」、建設できる建物の数を増やす「開発」の4種類があり、プレイヤーはそれぞれに適したキャラクターを配置して行動していくことになります。


 これらの行動を、どんな順番で、どのように行うかによって、主人公の進む道、果てはエンディングが変わっていきます。例えば、二つ提示されたエリアのどちらを先に攻略するかで仲間になるキャラクターが変わったり、特定の日までに仲良くなっていないと(シナリオ上)離脱してしまうキャラクターがいたり……といった具合に。


 上述したとおり、ひとつひとつの行動をやり直したりすることはできませんから、何か失敗したとしても――例えば、大切なヒロインを助けるためのパラメーターが足りず、彼女を死なせてしまったとしても――その失敗を取り戻すためには、一度エンディングを迎え、再びループするしかありません。なんとも過酷な設定ですが、このゲームの中では、プレイヤーはまさしく、よりよい結末を迎えるために様々な試行錯誤を繰り返すループものの主人公になれる、と言ってよいでしょう。


 こうした尖った設定のゲームシステムの基部とは裏腹に、MOBA風のバトルシステム、キャラクターの育成要素や多人数協力マルチ、素早く強敵を倒せるかを競うランキングシステムなどはかなり既存のソーシャルゲーム寄りで、そこは若干のアンバランスさを感じるかもしれません。


 ただ、そこを補って余りあるほど、この作品で得られる「ゲーム体験」は強烈なものだと思います。ループもののシナリオが好きな方や、限られた時間をうまくスケジューリングしてより良いエンディングを目指すタイプのゲームが好きだ、という方にはぜひ一度遊んでいただきたいゲームです。



 今回キャラクターなどシステム以外の要素にはほとんど触れずに紹介しましたが、ひとつだけ補足。
 川井憲次さん作曲の劇判がとにかく最高で、中国版の公式サイトでは無料で視聴できてしまうのでぜひお試しを。

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