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岩手県金ケ崎町でのコラー獣作りワークショップレポート

先日、岩手県金ケ崎町にある金ケ崎芸術大学校(旧菅原家侍住宅)さんにてコラー獣作りワークショップを行いました。金ケ崎芸術大学校さんのホームページはこちらです。

これまでのワークショップでは民話や妖怪ゆかりの地を訪れて素材を集め、導入ではこうした話を語って参加者の皆様のイメージを膨らませてから制作を行っていました。金ケ崎町にも「大工と鬼六」という有名な物語が伝わっています。

しかし今回のワークショップでは、既存の民話や妖怪について提示せず、街にある素材そのものを観察・探究しながら想像を膨らませる過程を大切にしました。

まち歩きをして「こらくた」を集める

ワークショップ8月10日(土)と11日(日)の2日間の日程で開催。

初日は同時開催されていた建築物について探究するまち歩きと並行して、金ケ崎芸術大学校さんの周辺にある不思議な形のもの(コラー獣作りで使う素材「こらくた」)を参加者の方々と一緒に探しました。

まち歩きをする中で、このように坂を上った先の景色が見えにくいような小高い丘や、前方の見通しが悪い曲がり路がたくさんあることを学びました。このような地形から、かつては要害として活用されていた歴史を持ちます。
美しい自然、歴史を感じさせる古民家ー。建築に詳しいファシリテーターさんの説明がとても分かりやすく、金ケ崎の魅力を体感することができました!

定番のこらくたである木や石などの自然物だけでなく、ワークショップで案内していただいた古民家で見つけた板目や昔の道具など珍しいこらくたを発見。金ケ崎ならではのこらくたの写真がたくさん集まりました!

「定番の」と言いつつ、自然物もその土地やその季節、そのタイミングで様々なものが見つかるのでとっても面白い!個人的に一番気に入っている柿のヘタの部分。
この葉っぱ、明らかに顔ですよね!
古民家ならではの木の床にある板目模様。これだけでも十分妖怪みたいに見えます!
金ケ崎芸術大学校さんの庭にあった不思議な形の岩。
古民家の柱にあった釘隠し。

偶然の産物!不思議な色合いのコラージュシート

こうして集まったこらくたをWordで編集し、コラージュシートを作ることに。

普段は出来上がったシートをコンビニのプリンターで印刷するのですが、今回は金ケ崎芸術大学校さんにあったプリンターを使わせていただきました。

するとここでハプニングが!

なんと、プリンターの不具合なのか、それともワークショップがより面白くなるようにというプリンターの粋な計らいなのか、ブラックとマゼンタのインクが入っているにも関わらず何故か色が出なかったのです!

こちらがそのシート。イエローとシアンのみ反映され、不思議な色合いになっています。ちなみにこの前に出てきたシートはシアンしか出ず、青一色の不思議な色合いになりました。

しかし、一緒に宿泊しワークショップの準備を手伝ってくださった方々とのやり取りの中で「これはこれで面白い!敢えてこのまま使おう!」ということになりました。ハプニングが起こったら、むしろそれに乗っかってみる…個人的に大切にしているマインドです。

そもそも切貼民話が生まれるきっかけの1つである子どもたちとのまち歩きワークショップの時も、偶然撮れた手ブレ写真を活用するところから伝説の生き物作りがスタートしました。

コラー獣作りワークショップがスタート

さて、こうして偶然生まれた不思議な色合いを持つコラージュシートを用意してコラー獣作りワークショップを行うことに。

今回は金ケ崎芸術大学校内でいくつかのワークショップが行われており、その中の1ブースを担当させていただきました。

特に導入は行わず、机の上にこらくたの写真を並べて興味を持ってくださった方に随時説明をする形で進めました。

机の上に、こらくたを印刷したカードを並べました。

最初は大学生や大人の方々が参加して盛り上げてくださり、少しずつ興味を持った小学生の男の子たち2名がワークショップ中盤から終盤にかけて参加。累計で7〜8名ほどの方々がコラー獣作りに参加してくださいました!本当にありがとうございます✨

【制作過程①】完成形のイメージを越えて生まれたコラー獣

ここからは、参加者の方々が生み出したコラー獣を紹介します。

最初に紹介するのは、金ケ崎芸術大学校さんで定期的にワークショップを開催されている男性。コラー獣作りワークショップは初めての参加となります。

制作序盤に声をかけさせていただくと、カブトムシやクワガタなどの昆虫のようなコラー獣になりそうだと教えてくださいました。

しかし、なかなかイメージ通りの素材が見つからないのがコラー獣作りの面白さでもあり難しいところ。なかなか昆虫のような姿にするためのこらくたが上手く見つからず苦戦されている様子でした。

そこで、「完成形をイメージせず、まずは純粋に切って並べてみると良いかも知れませんね。これまでの経験上、計画を立てないほうが不思議と面白いコラー獣ができるんです!」とアドバイス。

すると、これまで並べていた形を一度崩して新たな形に並べ始め、何やら面白い形のコラー獣が少しずつ出来てきました。

おお!なんだか蜘蛛や蟹のような姿!

そして、このコラー獣を背景素材と組み合わせ、まるでコラー獣が大学校に侵略しているような作品が完成!

よく見ると背景素材の一部に切り込みが入っており、コラー獣の脚を入れ込むことによって金ケ崎芸術大学校を覆いつくしているような立体感が表現されています。

さらに、他の参加者の方から
「コラー獣同士で並べると物語が生まれそう!」
というアイディアをいただき、私が作ったコラー獣(下の写真右側)と並べてみることに。

なんだか向かい合っており、戦ってそうな感じです!

私の作品は森を守る猿のようなコラー獣。りんごのような形をした盾(もともとは大学校のふすまに描かれていた模様)と、おしゃれな剣(もともとは道中に立てられていたお守りのようなもの)を持っています。

2体のコラー獣を並べてみると、侵略者vs守護者のような雰囲気を感じます。
また、巨大な蜘蛛や蟹のようなコラー獣と、小柄な猿のようなコラー獣という大きさの対比を楽しむことができます。

「並べてみると、なんだか向かい合っているみたいな構図が本当に戦っているみたい!」と参加者の方が呟いたことで気付いたのですが、偶然の構図が物語の世界を一層引き立てているように思えました。

それにしても、プリンターによって生み出された色合いが、どこか雑誌のスクープ記事のような雰囲気を醸し出していますね…!

背景を反対から見ると…?

一緒に宿泊し、深夜の時間だったにも関わらずコラージュシートの印刷や切り抜きを手伝ってくださった大学生。コラー獣作りワークショップにも参加してくださいました。

そんな彼が、金ケ崎の空を写した背景素材を見て

「この背景素材は空を写したものだけど、逆から見ると、なんだか水面みたいにも見える」

と素敵な発見!

空を写した背景素材なのですが、プリンターの発色の影響もあってか、確かに水面のようにも見えます!

これまで、こらくたの部分にばかり着目しており、背景素材の効果についてはあまり考えていませんでした。しかし、この呟きを受けて背景素材を観察することからも新たな想像や物語が膨らむ可能性があるということに気付くことができました!

他のワークショップとのコラボレーション作品

続いては、前回埼玉県坂戸市で行ったワークショップにも参加してくださった方の作品。

習字✖️コラー獣のコラボレーション作品!

この日、コラー獣作りワークショップをしていた向かい側の机で書道のワークショップが開催されていました。そこで、書道×コラー獣というアプローチを編み出してくださったのです。

こらくた同士の混ざり合いを楽しむだけでなく、他の表現方法とのコラボレーションを楽しむというアプローチが新鮮で、同じ場で多様なワークショップが行なわれている状況ならではの良さを感じることができました。

【小学生の男の子の表現①】釘隠しに着目して…

このように大学生や大人の方々がコラー獣作りを楽しむ姿を見て、それまで少し離れたところにいた小学校中学年の男の子がコラー獣作りワークショップに興味を示してくれました。

彼は木々が写った写真を楕円形状に切り抜いた後、釘隠しのこらくたに着目。

木々の写真を切り抜いた後、画面中央上にある釘隠しに着目。

ハンドスピナーや扇風機のような形だったためか、回転しそうだというイメージを持った様子で、そこから「風を起こす」という性質を連想しました。

だんだんとコラー獣が出来てきました!

表現しながらコラー獣の生態系についてイメージを膨らませて話していたため「素敵だねぇ!どんなコラー獣なのか、説明を紙に書いてみる?」と提案すると、コラー獣の名前や生息地、持っている力や特徴を白い紙にまとめて作品に貼り付けました。

こうして、豊かな森に生息するコラー獣「リーフフェニックス」が完成✨

釘隠しの形状からコラー獣の姿形を考え、素敵な作品ができました!

【小学生の男の子の表現②】表現の伝播

さらに彼は2体目のコラー獣を作りたいと話し、近くで制作していた大学生(空を写した背景素材を逆から見る発見をした大学生です)の側で再び写真を切り抜き始めます。

下の写真、画面下側が大学生、上側が小学生なのですが、一緒に作る中で表現方法の伝播が生まれました。

画面下側の大学生。中を切り抜き輪っかのような形になった素材を使っています。

大学生が用いた「写真の中を切り抜き、外側の部分だけを使う」という工夫に触発された様子で、先ほどのコラー獣でも使っていた釘隠しの内側の部分を切り抜いて、それぞれ別の位置に貼り付けたのです。

こちらが小学生の制作途中の様子。2作品目でも続けて使っている釘隠しの内側を切り抜き、外側の輪郭を活用しています。

こうして出来上がった2体目のコラー獣がこちら。

こちらが小学校中学年の男の子の2作品目。

私が「ポケモンなら全種類わかる」という話をしていたのをしっかりと聞いていたからなのか、全体的にポケモンの技をイメージして作られています。

画面右側にある顔のような部分はポケモンの技「こわいかお」「かみつく」をイメージしているとのこと。釘隠しの部分を回転させて飛ばす攻撃も可能だそうで、素材をよく観察した上で技を考え出したことがうかがえます。

作品全体の雰囲気として、まるで異世界と現実世界とを繋ぐリングからコラー獣が出現し、様々な技を繰り出している様子が伝わってきます。

まとめ

以上、岩手県金ケ崎町の金ケ崎芸術大学校でのワークショップレポートでした。他にも素敵なコラー獣がたくさん!

こちらはもう1人の大学生の作品。作っている中で画面上側のコラー獣がアルパカのように見えたり、画面下側のコラー獣?がバットを持って打席に立つ人に見えたりと、見立ての世界を楽しんでくださいました。1つひとつの発見がワークショップ会場の温かな雰囲気へと繋がっていたように思います。とても素敵!
こちらは先程紹介させていただいた小学生のお母様の作品。背景素材を敢えて逆さに使うことで異世界の雰囲気や立体感が表現されています。伸びゆく竹のような表現や、コラー獣に付けられた髪飾りのような形など、和や舞踊をテーマにした美しさが伝わってきます。コラー獣本体だけでなく、コラー獣を包む世界観が表現されていることで、1枚の作品から想像が膨らみますね✨

今回のワークショップを通して感じたコラー獣作りの可能性は次の5点。

ワークショップをさせていただくたびに、毎回新たな発見があるのでとっても幸せ!!

特に、
新たな視点を生み出すきっかけとして、素材や背景の色合いをアレンジする

新たな物語が生まれるきっかけとして、コラー獣の並べ方(出来上がったコラー獣をシャッフルしてランダムに2体を選び、即興で2体のコラー獣が登場する物語を考えるなど)を工夫する

というアプローチは、ぜひ今後のワークショップの中で取り入れたいと思いました。

また、民話や妖怪を前提としなくても、コラー獣やそれに因んだ想像、物語が生まれるということが分かった点も大きかったです。

もちろん民話や妖怪に因んだ場所であれば、地域の文化を知るきっかけになったり、もともとある物語と新たな物語との比較を通しての気付きや発見が生まれたりする可能性があるため引き続き取り入れていきたいです。

しかし、これらが十分に残っていない地域でも、ワークショップを行うことで新たな民話や妖怪などの地域文化を生み出すことができるのではないかと思いました。

神奈川・山梨・埼玉(吉川市と坂戸市)に次いで5事例目となったコラー獣作りワークショップ。今後も様々な土地で行いたいです。

「うちの街でぜひ!」というお声をいただければ、ぜひぜひワークショップをさせていただけたら嬉しいです

いつも通り?長文になってしまいましたが、最後までご覧いただきありがとうございました!

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