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時空跳躍〜Cyclone〜


…雨の匂いがするな。

地下鉄の階段から外に出た俺は空を見上げた。

樹々がザワザワと揺れ、遠くで雷も鳴っている。

家に着いた時には雨がポツポツと降り出してきた。


今夜はAlfredのメンバーと飲みにいき、もうめちゃめちゃ喋って大笑いして。

そんな楽しい余韻に浸りながら、俺はベッドにゴロンと転がるといつの間にか眠りに堕ちた。


…どのくらいたったんだろう。

ゴォーッという音で目が覚めた。

窓の外は風が吹き荒れ、

大粒の雨が窓ガラスを叩いている。

「うーん。今何時だ。」

スマホの表示は午前3時。



喉の乾きを覚えた俺はキッチンへ行き、ICY SPARKを手に部屋に戻る。

半開きの扉を開けた時、雷鳴が轟いた。

薄灯りの部屋が一瞬ぱっと照らされる。

「え!!」

ベッドの脇の机にひとりの青年が突っ伏していた。

こわごわと近づいて、そーっと顔を覗き込むと、
なんとそれは紛れもない自分自身の顔。


机にはノート。

英語の歌詞はほぼ出来上がっている。

そして「Cyclone」の文字。

「3年前の俺だ…」


そうだったな。

この頃は本当にいろいろあって、
なにかと困難続きだった。

周りは敵ばっかりだと思ってたから、狼のような目をしてたと思う。

でも、Alfredのみんなと一緒に乗り越えることができたし。


あ、そうだ!

机の端においてあった大きめのメモ帳をそっと取ると、一気にペンを走らせる。

「今の状況が辛くて苦しいのは知っている。

でもそれはもうすぐ終わる。

自分たちの曲についてとやかく言う人もいるだろうが、そういうのは放っておけばいい。

近い未来、Alfredに共感してくれる仲間がたくさんいる。

自分を信じて進んで行け!

自分の好きを貫け。

突き抜けろ!」  


一心不乱に綴ったメモをそっとノートに挟んだ瞬間、ぐっすり眠っている俺がピクっと動いた。


おっと!起きたらヤバイ。

足音を忍ばせながらそおっと扉を開け、眠っている背中へ呟いた。


「頑張れよ。俺」


窓を叩きつけていた雨はいつの間にかやんでいる。

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