ゐつぺゐ

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 ホームセンターで包丁を買った。こういうことから後になって足がつくのだろうか。車に乗り込むとパッケージを取り外して片手で握ってみた。刃先の尖りが既に痛みを彷彿とさせ、手が震えた。タオルで包丁を巻いてバッグに忍ばせる。僕はエンジンをかけた。  山道を走った。高速道路を使えば一時間とかからない目的地までの道のりだった。それを幾分か遠回りしてまだ辿り着けないでいる。落ち着きが欲しかったのだと思う。    小学生の頃、勉強もスポーツも成績は可もなく不可もなく、目立ちがあったかなかった

    • 足りない女

      「マスター、これは」 「あちらのお客様からです」 「へえ」  マスターが指した方で笑って手を振る口髭丸眼鏡。わたしはそこから目の前のテーブルに置かれた苺のへただけをギチギチに敷き詰めたグラスに視線を戻した。 「ねえ、マスター。強いのある?」 「勿論。当店自慢の《歯には歯を》でございます」  わたしはマスターがドゴッと重たげな音を立ててテーブルに置いた収納ケースを開けて中に入っていたバズーカで口髭丸眼鏡に向けて放った。店は半壊した。街の灯りと冷たい風が入ってくる。反動で外れた肩

      • ファイナル・デトネーション・ツェッペリン -機械探偵最期の事件-

        「ゴッホよりッ! 普通にッ! 可愛い幼ォ女好きーーーーッ!!」 「黙れクソ野郎! 連続女児誘拐及びヒッポリチョ翁殺害及び違法武器密輸及びカレーうどんの汁を私の白シャツにドット打ちした罪で貴様を粛正する!」  僕と先生、そして一連の黒幕と思われる人物は飛行船内で対峙した。元より人が乗るために設計されていない内部は思いのほか狭かった。 「コンバヤシ君! キミは下がっていなさい!」 「先生! まさか!?」 「ああ、そのまさかさ! 私は憤っている! ブチギレちゃったのさ! とっておき