美しい顔
私がフォローしている佐藤芽衣さんが、『生成AI並にかわいい!』というタイトルで、生成AIが作るルックスや文章について記事を書かれていた。とても興味深いので、ぜひご一読を。
その記事について、ボンヤリと考えながら駅の構内を歩いていたその時、宝飾メーカー、TASAKIのポスターが目に入った。モデルのGemma Wardが90度身体を寝せて、こちらを見つめている。その瞬間、私は「生成AIはこの顔を超えられないだろう」と思った。
Gemma Wardは2003年に登場したオーストラリア人モデルだ。2004年にはあらゆるブランドのショーに出演し、世界中が彼女のdoll-like face:人形のような顔に夢中になった。丸いおでこ、離れ気味の青い眼、わずかにへの字になった口…主張は少ないが慎重に出来上がったパーツが、円の中で有るべき場所に適切に納まって成り立っている顔(と私は思う)。私の手元にある雑誌を確認すると、2007年頃にはショーへの出演回数が減っているが、最近また、モデルとして活動されているようだ。
生成AIによる画像製作について詳しくは分からない。加算平均か加重平均(たくさんのデータを足して平均)をするか、教師データを基に細かな修正をするか…いずれにしても”個性”というような特徴的なものは消え、その結果、女性の画像であれば大きな目、細い鼻梁と小さい鼻翼、小さい口という想像の範囲内の”美しい”ルックスが出力されるだろう。Gemma Wardのでこっぱち気味で、つるんとした、思わず手のひらをそのカーブに当てたくなるようなおでこは、その学習過程で失われてしまうに違いない。離れ気味であるがゆえに親しみを感じさせる眼も、黄金比か白銀比に配置されてしまい、への字口も…
生成AIが作る顔はアラが無く、それを美しいと言うこともできるだろう。だが、一度見たら忘れられないような魅力的な顔、人が行きかう駅の構内であっても一瞬で心を捉えるような顔を生むことは可能だろうか?それは、Gemma Wardの顔を生んだような人間の遺伝子の複雑な組み合わせ、偶然の産物によってしか成しえないと思うのは楽観的過ぎる考えだろうか?
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