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変異株覇権レース(1)

 定点観測下の平均患者数の2023/12/10識別データベースを表1とします。
 右側2列目の第29週の平均患者数が、赤一色となり前回調査時の全ての都道府県平均患者数を超えました。日本国を席捲する異変を思いたくなりますが、平均患者数は、取り敢えず当初目標とした変異株エリスの第6週目の6.14に達していませんし、多頭性にせよ単独にせよ新たな感染を牽引する覇権的変異株を表1から窺い知ることは出来ません。

     表1:定点観測下の患者数・2023/12/10識別データベース

*左初列は都市規模別都道府県名で、赤=大都市圏。青=中都市圏、黒=小都市圏となります。

       図1:変異株エリスとその後の患者数経過(1)

*左右グラフでスケールが異なります。    
*表1のC部分の赤色帯が、図1の波形右端の上昇部分を表します。

 定点観測下の患者数と、補正した患者数の両経過をグラフにして並べますと(図1)、変異株エリスの山は共に下降して底を衝き、波形右端に少しばかり上向きに転じた波形を共に示しています(縦棒矢印の右側)。この上向き部分が識別データベースの赤色域 に該当していると思われます。

 表1の赤色域 は、具体的に何を表すのか検討しておかねばなりません。
 変異株エリスが凋落し、新たな変異株が登場しては消退する現在の感染状況を、都健安研センターの世界のコロナウイルス変異株流行状況(12月15日更新)は報告しています。その中に日本の変異株上位5種を示す部分がありますが、報告は定期的で、状況によっては随時資料追加されることもありますので、経過的に状況を把握するにはそれぞれをコピーして手持ちの資料として整理しておかねばなりません。
 その手持ちの資料から、直近の状況をまとめて表2としました。

         表2:国内変異株上位5種の推移(1)

*HK.3は、変異株エリスの中国系子孫で、11月に入って国内変異株の首位になりました。  
*変異株ピロラは、11月中旬に国内侵入したもののHK3に抑えられています。
*右端のGK以下の文字は、Pango命名規則に従った変異株頭文字です。

 表2の16~19週は、変異株エリス支配時期終了前を示すもので、23~26週、24~27週の変異株数順位と対比するために示したものです。
 各週間の一連の流れは、図1の新たな変異株覇権レース以後に相当し、変異株HK.3、変異株ハリスとその子孫、ピロラ登場等による変異株覇権レースの現実を表していると思われます。
 中国由来の変異株HK.3は、国内登場から2~3週間で日本国変異株数首位の座を奪いました。10月下旬頃、韓国に一旦登場した変異株ピロラを抑え、上位圏内から排した主役でもあります。その感染力の強さは、24~27週の変異株順を暫く維持する可能性を推測させます。HK.3が、何時までピロラを抑えきれるかがこれから暫くの焦点と思われます。

 欧米の感染状況は、変異株ピロラ中心の変化がドラスティックです。
 10月上旬、既にデンマーク、イギリス、フランス等で変異株上位5種以内に侵入したピロラは、12月上旬には欧州の7~8割の国に侵入し、12月中旬現在、欧州主要8ケ国で変異株数首位の座を奪うに至ってます。一瀉千里の勢いで、今や欧州全体が変異株ピロラの専制体制下に入りつつあります。
 アメリカでも、24~27週に入りピロラは変異株上5位以内に登場しました。これからは、経済文化全般に関係深い日本に大きな影響を与える可能性があります。

 それにしても、遺伝子解析を通して、変異株ピロラがオミクロン株を上回る新たな感染をきたす、と予測した世界の自然科学水準に驚きます。同時に、譬えようもないもどかしさも感じます。

 表題を、変異株覇権レース(1)と変更します。次回を同(2)とする予定です。
                   2023/12/19
                   精神科 木暮龍雄


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