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コロナ感染・定点数化の意味(4)

引用が多いので、前回シリーズの表1を再掲します。

       表1:A,B,Cの各定点数、平均患者数、定点患者数

*‘患者数’は、2024/2/19~2024/2/25の各都道府県のホームページから求めたものです。
*厚労省患者数報告は平均患者数のみで、B定点数は都道府県ホームページによるものです。   
*ABC の各都道府県の定点数×平均患者数は、各‘患者数’に等しいことを確認しています
*A,B,C の各右端の定点患者数は、平均患者数に定点数/5000を掛けたものです。

 当シリーズは、東京都のコロナ医療機関数419を都道府県に応分するには、人口数比と患者数比のダブル補正で対応可と思っていました。ところが、都道府県ホームページで知る定点数は、表1中央のB定点数が示すように、神奈川県定点数367をはじめ、ダブル補正した多数のC定点数より多い傾向を示すものでした。人口数比と患者数比以外に補正対象があったのかと当然思うことになります。表1のB定点数の背景が分ればなあと無いものねだりになります。 
 けれども、当シリーズがB定点数設定の背景を知りたければ、その背景は当シリーズ自身が探さねばならないことになります。きつい課題ながら、それなりの結果を得たつもりで、以下にその経緯を述べます。 

 先ず、表1のB、Cの定点数を、人口数を背景にしてA定点数と比較して図1としました。目的は、A定点数の立ち位置を、B、C定点数を通して確かめることから始まります。

                   図1:都道府県人口とA,B定点数、A,C 定点数

青=A定点患者数波形、赤=B定点患者数波形、黒=C定点患者数波形です。

 図1グラフで確認すべきことは、左右の赤と黒の線グラフは、共に淡黒色の棒グラフ=人口数)と青の線グラフ(=A定点数)に沿って並行していることです。患者数が人口数比化すれば、人口数の棒グラフはA定点数(青の線グラフ)と重なりあうことになります。B、Cの線グラフがA定点数グラフに並行してほぼ沿う波形は、B、Cも共に感染者数が人口数比化している状態を表していると、当シリーズは判断します。
 感染者数の人口数比化が事実であるならば、A定点数だけでなく、感染者数が関与するすべての領域でそれは認められなければならないのです。それがA定点数の立ち位置であり、図1でその目的は一応達成されたと当シリーズは判断しています。しかし、これは行きく尽く処の究極であり、現実は右図の如きであるのを常に心得ておくことが必要となります。

 問題は、図1左の赤のB定点数グラフでした。少数の都道府県を除いたほぼ全てで、あたかもB定点数は、A定点数に一貫した上乗せ部分を被せたような波形を示しているのです。上乗せ部分は、都道府県によって凸凹を示しそれぞれが異なりますから、この上乗せ分が人口数や患者数に関連する数値の可能性を否定するものでした。つまり、この上乗せは、感染に伴う自然経緯が生み出したもの思えないと判断するに至ります。

 この上乗せ数値が、一定数の掛け算による連続数値とは判断し難く、加減算による数値を推測させるもので、それが図1左両グラフ波形が等間隔を置いて並行している要因に推測されました。
 表1の神奈川県B定点数から、相応するC定点定点数を引き、同様に神奈川県以下の全ての都道府県のB定点数から相応するA定点数を引き、両者をグラフ化して図2に示します。

      図2:都道府県人口とA、Cそれぞれの上乗せ分 

*赤線の定点数のプラスの上乗せ分は大阪府、兵庫県、福岡県で顕著です。       
*赤線の定点数のマイナスの上乗せ分は、愛知県、北海道、宮城県で顕著です。
*プラスマイナスの上乗せは、表1の定点数から判断された可能性があります。
         *期間を明示したのは、赤い線グラフの定点患者数に`患者数’が引用されたためです。

    横一線のグラフは、各都道府県にとって定数を意味しており、変数は含まれていないと思われます。図2の赤い線グラフが、図1のA定点数波形に一定の間を置いて並行する波形を説明すると思われます。上乗せ分のプラスマイナスが、図1の前1/4の赤線のプラスマイナスのぶれに従っていることは明らかです。恐らく上乗せ分は、この辺りの変動の激しさを調整するためにC定点数を基にして勘案され、その結果B定点数が生まれたものと当シリーズは推測しています。
 表1B、C 両グラフの‘定点数‘ を見比べ、次に図2赤の線グラフをみれば、上乗せの凡その背景が推測されようというものです。
 しかし、そうであるならば、人為的で操作的な処置の結果である上乗せは、定点数の意味を一変させることを知らねばなりません。

 しかし、何故こんな面倒なことをしなければならなかったのでしょうか。
 表1に登場したC定点数は、ダブル補正した新新定点数によるもので、多くの人が東京都医療機関数419の応分に適すると思われたに違いありません。ところが、表1のC定点数を見れば分かるように、都道府県によって激しい変動を示すものです。これを基に419を応分しますと、不公平が生じるのは明らかです。加えて、長いコロナ感染経過は地域差を生み、感染対策や医療効果の成果を、患者数を如何に減少させるかを以って表し、少ない定点数の患者数を目標とする都道府県があっても不思議ではありません。都道府県コロナ感染の今後の医療予算措置等が、この定点数=医療機関数で決まるとあれば、それだけでも問題が生じるのは当然です。
 なんらかの上乗せは、厚労省にとって必然だったのではと推測します。
 
 上乗せして行政的配慮が加えられたことに、当シリーズとしては異議を唱えるものではありません。行政の立場から見れば、当然あり得ることと思うからです。けれども、そうだとすると、B定点数を基にして得られたこれまでの成果(当シリーズは批判ばかりして成果は皆無です)も、つまり=(X+Y)/Xも、=XY/Xも、背景に上乗せありとすれば、疑わしきものになるのは必然です。それは同時に、厚労省が定点患者数を報告しない  ‘正しい対応‘  を示していることにもなります。
 
 厚労省が報告する毎週患者数は、B定点数で処理された表1のB平均患者数であり、定点患者数ではありません。人為的操作による定点数で求められた平均患者数ならば、自然な感染経緯を表すものではありません。確かに‘患者数’を医療機関数(=定点数)で割ったものですから、「一医療機関の平均患者数」の文言は通るかもしれませんが、その平均患者数はその一医療機関だけに通用するもので、他医療機関の平均患者数と関連するものではありません。加えて、人為的定点数から得られた平均患者数は、必然的に人為的なものでしかないことを知らなければならないのです。

 上乗せの正当化に、オープンデータ時の raw data を集計し直したりしてはいけません。raw data は自然科学の原点で,  respect して守るべきものです。国立感染症研究所は、先頭に立って raw data を守る自然科学の殿堂と当シリーズは信じています。
                
                     2024/4/8
                     精神科 木暮龍雄


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