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東北北海道地方に新たな感染波の可能性

A:当シリーズの「一医療機関の平均患者数」への基本的スタンス

 定点観測による「一医療機関の平均患者数」報告を利用せざるを得ないとあれば、この報告の基本構造を弁えておく必要があります。定点数5000を都道府県数47で割り振りしていますから、都市規模別定点数は、当然、小都市圏(22)>中都市圏(16)>大都市圏(9)の割合になります。従って、1定点の医療機関の診療規模は等しいとする建て前に従えば、患者数も当然この順に従うことになります。オープンデータ時の都道府県別感染者数とは全く無縁ですから、常にこのことは念頭に置く必要があると思われます。

B:新たな感染波の可能性について

 「一医療機関の平均患者数」報告に、15週目の2023/8/28~2023/9/3の新規患者数が追加報告されました。新規患者数を加えたデータベースD-1を作成し、それを基に8行政ブロック別患者数のワークスペースD-2を作成し、D-1、D-2は本文末に掲載しました。両者を基にして、コロナ感染の地域的広がりとその経時的変化をグラフ化して検討しました。

 図1左は、D-2ワークスペースを基にグラフ化した8行政ブロックの全患者数の経過です。図1右は、左図で最大の患者数差が見られた東北北海道地方と九州地方の患者数を抜き出して比較したものです。12週(グラフ上は9番目となります)までの全体に緩やかに上昇する感染者数波形は、経済活性化を目指した規制緩和、夏休暇、お盆休み等がもたらした感染拡大が推測されます。けれども、12週を境にして突如表れた波形変化は、新たな感染の始まりの可能性を推測させるものでした。

   図1:8行政ブロックと東北北海道地方、九州地方の患者数推移
          2023/5/19~2023/9/3

患者数は、「一医療機関の平均患者数」報告によるものです。
*グラフ上の通し番号1~12は、「一医療機関の平均患者数」の2~4週目を除いたものです。
*赤と青の地方の色は、左右グラフで同じです。

 右図の東北北海道地方と九州地方の患者数推移の間隔は、前週より拡大し、青の折れ線の東北北海道地方の患者数は尚上昇中です。前回述べた2022年9月中旬からの東北北海道感染の如き新たな感染への可能性は継続し、要経過観察が2023/9/3現在でも必要と思われました。2022年東北北海道感染に関しては前回シリーズをご覧ください。リンク先はこちらです。
 
 当然、東北北海道地方の各道県の感染経過の詳細を知る必要があります。比較対象として、関東地方と西日本(関西地方、中四国地方、九州地方)の「一医療機関の平均患者数」報告に基づく都道府県別の患者数推移をグラフ化して検討することになります。

    図2:東北北海道地方、関東地方、西日本の患者数推移
           2023/5/19~2023/9/3

*患者数は、「一医療機関の平均患者数」報告によるものです。
*横軸1~15は、9が前回までの12週目に相当します。   
*北信越地方、中部地方の患者数グラフは関東地方と西日本の中間の波形でした。
*西日本患者数は、四地方(九州、四国、中国、関西)の平均患者数をまとめたものです。
*グラフ各地方の色はグラフごとに違い、特定地方を示すものではありません。

 図2上段左側の東北北海道地方の12週以後の患者数増は、急峻な上昇を示す県、一休みする県等と様々ですが、基本的には上昇中が明らかです。下段の西日本の患者数が平均値並みに平坦なのに比べれば明らかに特異的で、新たな感染発生の可能性を示唆しています。関東地方の波形は、基本的には患者数は上昇過程にあると思われますが、東北北海道地方と西日本の波形の中間に位置している感じです。
 それにしても西日本の患者数の落ち着きぶりに驚きで、移動するコロナ感染を実感します。

 問題は、「一医療機関の平均患者数」報告に基づく北海道と関東地方の東京都、神奈川県等の大都市圏患者数です。図2上段右の茨城県患者数波形が突出しているのは、近隣の東北北海道地方波形と似ていることで理解できますが、同左図の北海道患者数が平均患者数以下で、青森県や岩手県の患者数より少ないことは理解に苦しみます。関東地方の東京都と神奈川県は、オミクロン株感染開始時から全国感染者数の1位、2位を常時占めていたものです。それが同図では平均感染者数以下となり、且つ他の関東地方内各県の感染者数より常時少ないのは常識では考えられないことで、奇妙としか言いようがありません。当シリーズとしては、「一医療機関の平均患者数」報告の定点数割り振りで、大都市圏患者数が少なく算定された結果と推測していますが、当シリーズの推測の思い過ごしでしょうか。

 当シリーズとしては、この問題にいつまでもかかわり合いたくありませんが、もし、この「一医療機関の平均患者数」報告が、今後のコロナ感染の救急病床、ワクチン対策、その他もろもろのコロナ対策等に影響を与えるかと思うとなんとかせねばとの思いに至ります。また、この「一医療機関の平均患者数」報告が、将来コロナ感染に関する学術的な公的資料の一つになるかもと思うと、恐怖以外の何ものでもありません。
 けれども、当シリーズがいくら指摘しても、自分で気が付かねば対処の仕様はありません。

C:東日本の死亡者数を「一医療機関の平均患者数」は報告すべき

 西日本の感染者数を見ても、感染の全体的勢いは明らかに低下している傾向があります。現在の感染変化が、2022年9中旬~2022年10月下旬の東北北海道感染のような危機的状況に直ちに繋がる可能性は少ないかもしれません。しかし、死亡者数の増加を伴えば、1年前の状況に一歩近づくことになるのは確かです。警戒は当たり前ですか用心に越したことはありませんから、死亡者数報告は重要です。

D:データベースと8行政ブロック別患者数ワークスペース

    Dー1 一医療機関の平均患者数 2023/5/19~2023/9/3

*患者数は、全て15週までの「一医療機関の平均患者数」報告によるものです。
*1週目は2023/5/12~2023/5/19、最後15週は92023/8/28~2023/9/3の患者数報告です。
 *都道府県の配列は、8行政ブロック別の北から赤、青順に配置。

 Dー2 8行政ブロック別の患者数 2023/5/19~2023/9/3  

*各週の行政区分患者数は、D-1の同区分の平均値です。
*第1週~第5週間の3回分欠落は、当シリーズでネット上探しましたが見つかりません。
*人口数は、2022年総務省による都道府県人口によります。
   *行政ブロック別平均患者数が、関東地応<北信越地方、関西地方<四国地方は文中説明。 

                      2023/9/9    
                      精神科 木暮龍雄





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