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ブルース名盤紹介37 The Complete Recordings 1927-1934 Vol.2 / Memphis Jug Band

前回はVol.1を紹介しましたが、
今回はVol.2を。
(↓前回リンクです)

後期メンフィスジャグバンド

1927年から
録音活動を開始した彼らですが、
このVol.2では
1930年からの録音が収録されています。

この時期のメンバーは

ウィル・シェイド:ギター、ハーモニカ、ボーカル
チャーリー・バース:ギター、ボーカル

この二人はほぼ固定メンバーですが、
1934年のセッションからは
初期メンバーでカズー担当のベン・ラミーが
姿を消しているのは寂しいところです。

ジャグ担当は、ハムボーン・ルイスから
再びジャブ・ジョーンズへ。

メインボーカルに
チャーリー・ニッカーソンや
ハッティ・ハート。

ヴァイオリンとして
チャーリー・ピアース。

バンジョー・マンドリンに
ヴォル・スティーブンス。

ウォッシュボードやドラムで
チャーリー・バースの兄である
ロバート・バースが加わります。

1929年の世界恐慌をへて、
1930年代は、商業録音の全体的な減少など、
バンドも不況のあおりを受け、
苦しい時期でした。

そのためか、
1930年6月のレコーディングの後は、
異なるバンド名義や、
ソロ名義での録音を数曲残すのみ。

しばらく空白があり、
1934年にまとまった録音を行うと、
その後は、レコーディングを行なっていません。

しかし、シェイドは1960年初頭にも
旧友チャーリーバースとともに
メンフィスジャグバンドとして
活動を行っているのが発見されています。

1963年には
ガス・キャノンのカムバック・アルバム
”Walk Right In”のメンバーとしても、
録音に参加しました。

とはいえやはり、
この1934年の録音をもって
バンドの歴史は一旦の区切り。

そんなことを思いながらしみじみと
聴いていきましょう。

曲の紹介

He's In The Jailhouse Now

1930年11月21日メンフィスにて。
メンフィス・シークス名義での録音です。

シェイドのハーモニカによる
キャッチーなイントロと、
チャーリー・ニッカーソンの
ボーカルが魅力。

ブラインド・ブレイクなど
多くのミュージシャンに演奏された
ミンストレル・ソングです。

ちなみに、
Spotifyでは再生回数上位に来ている
人気曲です。

You Got Me Rollin’

1930年11月28日メンフィスにて。
カロライナ・ピーナッツ・ボーイズ名義の録音。

こちらもチャーリー・ニッカーソンのボーカル。
マンドリンの音色が印象的ですが、
ウィル・ウェルドン説と、
ヴォル・スティーブンス説があります。

聴きどころはジャグの音色。
残念ながらジャグを誰が吹いているか
不明となっています。

Little Green Slippers

1934年11月7日シカゴでの録音。

ベン・ラミーの
カズーがないのは寂しいですが、
バイオリンのチャーリー・ピアスが
サウンドに彩りを加えています。

ロバート・バースのドラムも
この時期における
彼らのサウンドの特徴の1つ。

Jug Band Quartette

1934年11月8日にシカゴで録音。

メンフィスジャグバンドとしては
最後の録音ですが、
この乾いた哀愁がしみます。

最後と思って聴くと感慨深い雰囲気。
おだやかな諦念をたたえた、
美しい締めくくりではないでしょうか。

Better Leave That Stuff

最後にDisc2に収録された
ウィル・シェイドのソロ名義の曲を。

1928年9月24日メンフィスでの録音。

ウィル・シェイドのボーカル・スタイルが
よくわかる録音です。

このほの暗いブルースフィーリングが
バンドサウンドをただの陽気なものから
一線を画す理由となっているのでしょう。

普段はジャグを吹いている
ジャブ・ジョーンズが
ピアノを弾いていますが、普通に名演。
こんなに弾けるのに
ジャグ担当、という所がまた良いですね。

まとめ

今回は2回にわたり、
メンフィスジャグバンドについて
書きました。

彼らの作り出す音楽の魅力、

それはギター1本で歌う
カントリーブルースよりもポップであり、
また、ジャズバンドよりも
ラフなサウンドにあるかと思います。

チープな楽器を使い、
巧みなアンサンブルで生み出される
楽しくノリの良い音楽。

そしてそこに確かに存在する
ブルースのフィーリング。

この「ジャグバンド」という形態こそ、
後のロックバンドに通じるものがあると
思わずにはいられません。

そしてその偉大なるリーダー
ウィル・シェイドのことも
私たちの記憶の中に
大切にインストールしておきたいです。

というわけで、
戦前ブルースの心のバイブル、
メンフィスジャグバンドの青盤、赤盤
”The Complete Recordings 1927-34 Vol1,2”
について今回は書かせていただきました。

いかがでしたでしょうか。

ブルース ファンだけでなく、
ロック好きにもおすすめです。

ありがとうございました。

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