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ブルース名盤紹介38 The Complete Recordings / Cannon’s Jug Stompers

前回のメンフィス・ジャグ・バンドに続き
ジャグバンドつながりで。

今回はガス・キャノン率いる
キャノンズ・ジャグ・ストンパーズについて
紹介します。

キャノンズ・ジャグ・ストンパーズ

キャノンズ・ジャグ・ストンパーズの
オリジナルメンバーは以下の3名。

ガス・キャノン:バンジョー、ジャグ、ボーカル
ノア・ルイス:ハーモニカ、ボーカル
アシュレイ・トンプソン:ギター、ボーカル

ギターはその後、
イライジャ・エイヴリィ
ホージア・ウッズと変わります。

このCDでは、
ガス・キャノンのリーダー音源と、
ノア・ルイスのリーダー音源を
まとめた仕様になっております。

それでは、
中心人物である
ガス・キャノンについて
紹介します。

ガス・キャノン

主にバンジョーと、
ジャグという、一般にはビンなどの
大きな水差しを吹いて
音を出す楽器を担当。

ちなみに、
キャノンが使用していたジャグは
パラフィンの缶だそうです。

そのジャグを首から下げ、
バンジョーを弾きながら吹くという、
印象的なスタイルで演奏します。

生まれは諸説ありますが、
1883年9月12日
ミシシッピ州の北の方にある
レッド・バンクスという地域に
生まれたと記録されています。

12歳の頃には、
ミシシッピ州の北西部にある
クラークスデイルという
農業と貿易の中心地へ移住。

ちなみにクラークスデイルは、
ブルースの父と言われる
W.Cハンディのバンドも含む、
多くのバンドが活動している
活気ある街でした。

現在デルタ・ブルース博物館があり、
ブルースファンにとっては、
重要な街と言えるでしょう。

当時の彼の楽器は、
フライパンとアライグマの皮で
自作したバンジョーでした。

15歳の頃家を出て、
ミシシッピデルタの
製材所や堤防、鉄道キャンプで
演奏をスタート。

W.Cハンディのバンドにいたフィドル奏者
ジム・ターナーに影響を受けたり、
ギタリストのアレック・リーに
ナイフによるスライド奏法を教わるなど、
この時期に、彼の音楽性が形成されました。

堤防や、鉄道で働きながら放浪、
合間に音楽を続ける中、
たどり着いたテネシー州のアッシュポート。

そこで農作業をしながらバンドを結成し、
後のストンパーズのメンバーになる、
ノア・ルイスや
アシュレー・トンプソンとも出会います。

ノア・ルイスはハーモニカの名手で、
2台のハーモニカを
鼻と口を使って演奏するなどの技や、
大音量を持ち味としていました。

キャノンは、
そうした出会いをかさねながら、
メディスンショーなどでの
演奏活動やツアーを
小作農として働きながら続けます。

南部の音楽の中心地である
メンフィスのビール・ストリートにも
ノアルイスとともに、頻繁に訪れました。

そして1927年に、
バンジョー・ジョー名義で、
初の録音のチャンスが訪れます。

その後、
メンフィスジャグバンドの
レコードがヒット。

キャノンもそれに負けじと
ノア・ルイス、
アシュレイ・トンプソンとともに
キャノンズ・ジャグ・ストンパーズを結成。
録音活動を開始します。

それでは、曲を聴いていきましょう。

曲の紹介

Poor Boy, Long Way From Home

1927年11月シカゴでの録音。

サイドメンとして、
ギターにブラインド・ブレイクが参加。

少年時代にクラークスデイルで
ギタリストのアレック・リーに
教わった曲。

バンジョーでの珍しいスライド奏法を
聴くことができます。

キャノン自身によるボーカルの
深いブルース表現も見事。


Minglewood Blues

1928年1月30日メンフィスにて。

記念すべき
キャノンズ・ジャグ・ストンパーズ名義の
最初の録音。

メンバーは
アシュレイ・トンプソン:ギター、ボーカル
ノア・ルイス:ハーモニカ
ガス・キャノン:ジャグ、バンジョー

の初期メンバー。

ノア・ルイスのハーモニカによるイントロ。
アシュレイのギターと、
キャノンのバンジョーによる、
淡々と刻まれるリズムの気持ちよさ。
それをジャグの低音が支えます。

アシュレイによる、
ハイトーンのボーカルも味わい深く、
ブルージーなこぶしの絶妙な音程感が
最高の名唱を聴かせてくれます。


Violla Blues

1928年9月20日メンフィスで録音。

この時期は、
ギターにイライジャ・エイヴリィが参加。
リード・ボーカルはノア・ルイスです。

ドライなサウンドでラフなテイク1と、
エコーがかかり、
少し丁寧さが加わったテイク2が
残されています。
ここではテイク1をピックアップ。

後にグレイトフル・デッドが
1stアルバムでカバーしたことでも
知られています。


Walk Right In

1929年10月1日メンフィスでの録音。

ギターとボーカルは
ホージア・ウッズが担当。

キャノンはバンジョー、ジャグ、
そしてボーカルの低音パートを歌います。
ノア・ルイスのハーモニカは変わらず。

後にルーフトップ・シンガーズがカバーし、
1963年に、ビルボード誌第1位のヒットに。

レコード会社がそれに便乗してか、
メンフィス・ジャグ・バンドの
ウィル・シェイドとともに
キャノンはアルバムを録音。

その復活アルバムのタイトルにもなった、
キャノンの代表曲です。


Money Never Runs Out

1930年11月28日メンフィスでの録音。

この日を最後に、
ストンパーズの録音は途絶えます。

キャノン自身のバンジョーと歌。
ホージア・ウッズのギターと、
おなじみノアのハーモニカ。

ジャグ奏者は不明との記載ですが、
おそらくハムボーン・ルイス。

同日同じスタジオで
ノアルイス・ジャグ・バンド名義で
録音があり(本作にも収録)、
そこでハムボーン・ルイスが
参加しています。

そう考えると、ジャグ担当は
ハムボーンだと考えるのが妥当。

メンフィス・ジャグ・バンドでも
聴かせてくれた、図太いジャグ演奏が
素晴らしいです。

ちなみにクレジットは
ハム・ルイスとなっています。

キャノンの憂いのある
表現力豊かなボーカルが
心にしみる作品です。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

メンフィス・ジャグ・バンドとともに
当時の人気を2分した
ジャグ・バンドの偉大なリーダー、
ガス・キャノン、
そしてジャグ・ストンパーズ。

30年代中盤には、
都会的なブルースの流行に押され、
彼らの音楽は
過去のものとなってしまいます。

しかし、
チープな楽器で紡ぎ出される
その音楽の豊かさは、
今なお新鮮に、
およそ100年後を生きる
我々の耳に響きます。

目の前のガラクタは、
楽器に変えることができるかも、
そう考えると、
楽しくなってきませんか?

最後まで読んでいただき、
ありがとうございます。

ワクチン休暇で、
3日連続投稿することができました。

また書いていきます。

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