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#BlackLivesMatterと、それを日本に住む私たちも「対岸の火事」として見過ごすことはできないよって話


ここ一週間ほど、アメリカで起きている白人警察官による黒人男性殺害事件に端を発した抗議デモについて日本でもニュースやSNSで話題となっています。

私にとって「アメリカ」とは人生の2/3を過ごして来た「第二の故郷」で、今も大切な家族や友達が暮らしている場所なので、#BlackLivesMatterを他人事として無視することはできません。

しかし、日本に住んでいて、アメリカとはまったく接点がないからといって、この問題を「対岸の火事」とは言い切れないこと、そして、日本に住んでいる方にとっても「無関係な話」ではなく、「自分も向き合う必要がある問題」だということに気付いていただきたく、今自分が思っていることや伝えたいことをまとめました。

これから綴るのはここ一週間、アメリカの友達をはじめとする、私の周りにいる友達とのやりとりを通して私が感じ、英語と日本語での情報格差がある中、日本の方々と共有したい、と思ったことです。

私は当事者である黒人でもなければ、人種差別問題の専門家でもなく、私自身、まだまだ学びの過程にありますが、すでに私の友達二人が#BlackLivesMatterについて、わかりやすくnoteをまとめてくれているので、このnoteと、ayanoharuさんのnoteを通して、一人でも多くの日本に住む方が「対岸の火事ではない」ということに気付き、#BlackLivesMatterについてもっと知って、学んで、話そうと思うきっかけになればという思いを込めて、発信します。

「黒人対白人」ではなく、社会構造に組み込まれた制度的な差別への抗議の声

連日、#BlackLivesMatterを取り上げるニュースの冒頭で「アメリカ社会に根深く残る人種差別問題...」とアナウンサーによって読み上げられますが、何がどう「根深い」のかニュースでは解説されることがなく、「黒人対白人」という構図ばかりがフォーカスされている気がしてなりません。

#BlackLivesMatterは白人警察官という 「個人」から、黒人男性という「別の個人」に対する暴力への抗議ではなく、本来すべての「個人」を守る役割を担うべき警察や政府、そして司法までもが黒人への差別を容認し、助長している今の社会構造そのもの、そしてその社会システムによって支えられている制度的な差別への抗議だということをもっと日本のニュースでも取り上げて欲しいと思います。

今回警察によって命を奪われたGeorge Floydさんの以前にも、Breona Taylorさん、 Ahmaud Arberyさん、Tamir Riceさん、 Ariane McCreeさん、Freddie Grayさん、Trayvon Martinさん、 Eric Garnerさんの他、数えきれない方々が家で寝ていたり、ジョギングをしていたり、スーパーから帰宅しようとしていただけなのに「黒人だから」という理由だけで疑われ、命を奪われています。

そして、差別が引き金となった殺人を犯したのにも関わらず、加害者は裁かれることなく、その行為を容認する社会システムに支えられて、制度的差別はアメリカ建国の頃から何世紀も変わることなく、今も蔓延しているのが現状です。

「コロナの時アジア人も迫害された!」という訴えがお門違いな訳

そんな中、「数ヶ月前欧米でコロナの感染が拡大した時、アジア人も差別受けたやん、その時アジア人を差別していた人の中に黒人もいたよね」という声がここ数日よく聞かれます。「ももこもアメリカで差別受けたことあるでしょ?黒人の命だけ守ることの方が逆差別なのでは?」という声も。

確かに16年以上アメリカで暮らして来た中で、差別を受けたことが無いとは言えません。今でこそSushiの世界的な認知度は高まりましたが、私がはじめてアメリカに引っ越した2000年代初頭は学校にもやしが入ったお弁当を持っていくと、「うわっミミズ食べてる〜気持ちわるっ!」とお弁当ごと捨てられたこともありました。母に「お弁当じゃなく、みんなと一緒のサンドイッチを学校に持っていきたい」と毎日泣きながら訴えていたのは今も鮮明に覚えています。

とはいえ、私は、公園で散歩している時に突然銃を突きつけられ射殺されたり、スーパーからの帰り道で押さえ込まれ絞殺されたり、命を落としてしまうかもしれないという恐怖を感じたことは一度もありません。私の経験や、一過性のコロナ禍でアジア人が受けた差別の経験は、何百年、何世紀にもわたって、「自国」にて迫害され、常に命の危険に晒されて来た黒人のこれまでの苦しみ、恐怖とは比べものにならないと私は思います。

そして、これまで自分のことを迫害し続けて来た社会システムに対して、抗議の声を黒人があげている中、「自分も差別を受けた」と主張するのは黒人の切実な訴えを遮ることになってしまいます。

誤解のないようにいうと、もちろん、黒人・白人・アジア人関係なく、すべての命が大切であることは間違いありません。ただ、これまで日常的に命の危険に晒されることがなかった私や白人には特権があり、その特権があるからこそ、今、この瞬間は自分の話ではなく、これまで無視され続けてきた黒人の必死の声に耳を傾けるべきだと思っています。

そして、これはayanoharuさんのnoteでも強調されていた点ですが、黒人がどのような形で抗議の声をあげるかに対して、特権を持つ私たちが口出しする権利は一ミリたりともありません。特権を持つ者が口出しする行為は、抗議の声を発信する黒人の口を塞ぎ、黒人が再び抑圧される社会システムを助長することに繋がるからです。

対岸の火事ではない

そして、自分は差別などしたことないし、これからもしないという人も、黒人を残忍に扱ってきた社会の一員であり、黒人の犠牲によって成り立っている現代社会システムの恩恵を受けているという事実から逃れることはできません。私たちは白人によって書かれた教科書をもとに西洋視点の世界史を学び (英語ではこれをEurocentric Curriculumと言います)、ワイドショーで人気芸人が顔を黒塗りにしたブラックフェイスを見て笑いながら新年を迎え、なんの疑問も持つことなく「白=良」、「黒=悪」という思い込みのもと、美白化粧品をドラッグストアで購入する日々を過ごしています。

社会システムに組み込まれている制度的差別のもとでは、あからさまに差別をすることはなくとも、無意識の内に、私を含むすべての人の行動や選択の中に差別意識が働いているからこそ、haruさんのnoteにもある通り、「あなたが恩恵を受けたいか受けたくないかに関わらず、そういう構造の中で私たちは生活している」という点に気付くことが今、日本に住んでいる私たちに求められています。

だからこそ、#BlackLivesMatterは対岸の火事ではなく、日本に住む私たち自身の問題でもあるのです。

中立的な立場を取ることは加害者に加担することと一緒

黒人の不利益の上で成り立っているこの社会システムの一員で、この社会からなんらかの形で恩恵を受けている以上、何も行動に移さないまま中立的な立場を取ることは、暴力に加担することになってしまいます。

何も今すぐアメリカに飛んでデモに参加してほしい、という訳ではありません。ただ、#BlackLivesMatterについて自ら知ろうと、学ぼうとし、考え、誰かと話し、議論することは、それ自体が一部のグループの犠牲によって成り立っているこの社会を構造から変えるために、自分に何ができるのだろう、と考え出す大きな一歩になると思っています。

最後にharuさんのnoteの締めくくりを共有させてもらいます。

もう一度言いますが、黒人の方や抑圧されるコミュニティの方にとって、この「政治」問題に関わるか関わらないかに、自身の選択の余地はないのです。毎日、毎秒、向き合わざるを得ない、日常なのです。
あなたが関わらないと決めることができるのは、特権です。

一方で、あなたも#BlackLivesMatterが立ち向かう社会の一員であり、関わると決めることができます。行動を起こす力があります。
沈黙は、暴力です。

少しでも、この問題について知ろうと思っていただけた場合は、以下に日本からでも取れるアクションをまとめているので、ご参考にしていただけると幸いです。

知る・学ぶ

・制度的差別をわかりやすく説明してくれる動画(日本語字幕あり)

・Netflixで観れる差別を扱ったドラマ
   - 13th (日本語吹替・字幕あり)
   - LA 92 (日本語吹替・字幕あり)
   - ボクらを見る目 (日本語吹替・字幕あり)

考え・話し・議論する

セサミストリートと差別について考える - CNNとセサミストリートによる共同企画、子供向けとはいえ、とってもわかりやすく差別について解説してくれている番組なので、大人の方にもおすすめです (英語のみ)
Online Conversations Hosted by NYU JCA - 大学の後輩たちが#BlackLivesMatterについて話し合うイベントを企画しています!大学外の方も参加OK、Zoomにて開催予定!詳細はサークルのインスタページからどうぞ!

寄付をする

余裕のある方は日本からでも寄付を通してデモに参加する人々を支援することができます。10ドルからの寄付が可能です。

Black Visions Collective - ミネソタ州の黒人支援キャンペーンをリードしている団体
Reclaim the Block - ミネアポリスのコミュニティと市議会議員のリードによって地域の安全と健康を促進する団体
Minnesota Freedom FundNational Bail Fund Network - 寄付金が保釈金の資金となり、デモに参加して逮捕された方々を支援することができます

また、友人のnoteにも参考になる支援方法が記載されているので、ぜひ併せて読んでみてください。


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