ジャズとは何か考えさせられた夜

ある日の某老舗ジャズセッションでの出来事。ステージに上がったギタリスト。セレクトした曲はAll The Things You Are。弾き始めると「お!?巧いな」という印象。でも何となく既視感。そう、彼はPat Methenyのコピー(アルバム『Question and Answer』に収録)をそのまま弾いていたのです。でもそれを知らないであろう、会場にいた多くの人々からは大きな歓声(気がついていた人も私以外にもいたかも知れませんが)

Methenyのフレーズを一通り弾き終えた彼は安堵した表情で伴奏に回ろうとしました。ところがホストミュージシャンのみんなは流石でしたね。それに気がついていたようで「もっとやれ!」的なゼスチャー。みるみるうちに彼の顔は紅潮。そのまま固まってしまいました。

でも、これって難しい問題ですよね。もしかしたらサポートミュージシャン(みなさんプロの方でした)の方々が気がつかないで、そのままのいい感じで演奏を終わらせていたかも知れません。でも、これってジャズと言えるのでしょうか?

こちらが例の『All The Things You Are』です。私が言うまでもないですが、凄まじい演奏ですよね。こんな凄い演奏をコピーできるだけのテクニックが彼にはあったということです。その努力たるや称賛に値します。サポートミュージシャンからソロの延長を促された時にパニックにならずに独自のインプロヴィゼーションを展開させていたらと考えると残念です。

もしかしたら、この経験を機に徹底的に分析して、そのアイディアを、どんな曲でも、どんな拍子でも、どんなキーでも、どんなテンポでも演奏できるように鬼のような練習をしているかも!?そうなっていることを祈ります。

ジャズの魅力は一体なんでしょう?私は双方向のコミュニケーションではないかと思っています。私の尊敬しているギタリストのDavid T. Walkerはこう仰っています。

「他の人と一緒に演奏をする時はいつもどんな音楽であれ状況にあった演奏をするようにこころがけてるんだ」

素晴らしい心構えですよね。

David T. Walkerの仰るとおり、他の人と一緒に演奏をする時に、どんな音楽であれ状況にあった演奏をするようにこころがければ、自ずといい演奏になるのではないかと思います。スキルの差、好みの違いなどあるかと思いますが、自分のできる範囲でベストを尽くすことですね。

ということで「ジャズとは何か?」と考えさせれた結果、David T. Walkerの言葉に助けられました。明確な答えはまだ私には分かりませんが、その心構えで演奏を続けている限り、きっとジャズは楽しいし、続くのだと信じています。


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