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アーカイブ3 渡邉格さんのお話 2 菌の法則 (2016年11月19日)

・精神と発酵の関係性

菌の法則、どうやったら菌が下りてくるのか?というのはだいたいが調和だということがわかりました。
つまり菌が降りる要因はひとつではなく複雑に絡んでいて、全体のバランスが取れた時に可能になるということです。
例えば、何かひとつの素材がいいから菌が降りてくるかというとそうでもなくて、あるいは環境がいいけれども素材が悪かったらダメなんです。
調和が崩れないように、ひとつひとつの要因がすべてだいたい及第点であればいいということですね。
要因のひとつとしてスタッフの精神構造が安定していること。
ものすごく仕事が嫌で嫌でしようがない、私のことが大っ嫌いで仕方がないスタッフが一人いると、発酵が良くないんですね。
ときには腐敗したり、一番ひどいのは納豆菌が出たりしたことがありますね、パン生地がデロンデロンになるんですよ。
ビール職人が不満を募らしていてビールが発酵しなくて、そのビール酵母を使ってもパンも発酵しなかったことがあります。
そのようにね、人の精神というか、働く精神状態というのはパンの発酵に関わってきます。だからうちではバカンスをとるようにしていますし、週休2日を取るようにしています。
なるべくきちんとした食材を使った賄いを出すとか。今年もバカンスを1か月半とるんですよ。その間は有給ですし、そんなに悪い労働環境じゃないと思うんですよね。働きたいと思いません?しかしね、意外とすぐに辞めてしまう。
昔ながらの職人的な働き方というのは大変です。
まあ、それは置いときましょう。
発酵しないときのもうひとつの条件、それは原材料の生命力ですね。
原材料が腐敗しやすいと、だいたい発酵しないです。腐敗しない原材料の話は後でしようと思います。
それからもうひとつは、環境の変化ですね。
農薬が多くまかれる時期とか、どうしても麹菌に変な菌が混じるような気がしています。
精神が発酵に関係あるなんて思えないっていう方いますか?なんの宗教だよ、気持ち悪いなって思われる方いらっしゃいます?実は私もそう思っていました。
そんな科学的な事実の範囲外のことなんてあっちゃいけないっていうか、現象としてあっても、それは自分の勘違いだとか、いろいろ理屈をつけてたんです。
結構そんな感じで人間の脳というものは常識にとらわれて、正しい現象を見えなくすることが多くあると思うんですよね。
なので、一回常識を取り払ってこれからの話を聞いてください。すっげえ気持ち悪いカビの画像とか出てくるんで、そういうものをみてゲーと思われるかもしれないんで、そういうものを見たときになるべく常識を外してもらいたいなと思います。

・麹の採取方法

さて、うちでは5種類の野生酵母を使ってパンやビールを作っております。
そのうちの酒種について話をします。
この酒種というのは寺田さんのやっているところの、お酒をつくる前の酒母(しゅぼ)というものですね。
だいたいお酒造りと同じような工程で作っていきます。
麹を採取して、米麹を作って、乳酸菌を採取してこれを合わせて、1か月冷蔵して、その後、酵母が降りてくる。
この過程の中の、麹の採取の話をしていきたいと思います。

麹を採取するときは、竹の筒に蒸したお米を置いておくだけなんです。
虫が寄り付かないように杉の板で作った上下段に棚を設置した箱に入れておきます。
この中にただ置いておくと、ガーっといろんなカビが降りてくるんですけど、最初は赤とか黄色とか白とかいろんなカビが入ってくるんですね。
なんかほんとにカビっていうと、すげえ気持ち悪いとか思うじゃないですか。
みなさんだいたい殺菌してしまう。するとどうなるかというと、調和の世界を分断してビジネスチャンスに変えて製薬会社だけが儲かる、みたいなそんな世界に繋がっているんじゃないかと私は思っていますが、話しを戻すと、気持ち悪いカビを捨てないで取っておくんです。
箱の中の下段に入れるんです。そしてまた新しい米を蒸して竹筒に入れて、杉箱の上段に入れておきます。
そうすると3、4日するとまたここが黒とか黄色とか赤とかいろんなカビが入ってくるので、またこれを下の段に置いて、新しいご飯を上に置く、というのを3日ごとに、2か月ぐらい、ずっと繰り返します。
そうすると少しずつカビの色が緑になっていくんですね。
麹カビの割合が少しずつ増えていくんです。最終的には全部緑になっていく。
ほとんど悪いカビが入ってこない状態になります。
気をつけなきゃいけないのは、この間に環境の著しい変化があったり、あるいは私のことを大っ嫌いと思うスタッフを育てたりしないことなんですよね。
ここで超いやだ!っていう感情を持った子がいると、やり直しになっちゃいます。あと黒いカビが出たからと言って殺虫剤とか殺菌剤とか、そういうものをまくと環境が悪化して、著しく調和が乱れてしまって、変な菌が入ってくるという繰り返しになるので、化学物質や余計な行為は排除するんですね。
だから、この期間はこの箱の中の掃除はしないんです。
結局、この原材料と労働環境と自然環境の3つが及第点になり、調和すればいいということがわかってきました。
私の本『田舎のパン屋が見つけた「腐る経済」』を読まれた方はお気づきかと思いますが、古民家じゃなければ麹採取はできないと書いたんですが、あれは間違いだったので赤ペンで訂正しておいてください。
古民家の方がいいのはいいんですが、それよりも周りの環境の方が大切だし、労働者の環境も大切だということがだんだんわかってきています。
ここで一番重要なことは、悪いやつらが悪いものを消す。意味がよく分からないと思うんですけど、浮遊している農薬などの化学物質を、私が悪いと思いこんでいた黒いカビが分解してくれるような感じがするんです。
そして悪いと思っていたカビが、場をだんだん浄化して、最終的に緑の麹がきちっと入ってくる、みたいな感じがしています。

・洗濯機のカビから、経済改革へ。

洗濯機のドラムにカビがつくのはご存知ですか?このカビの種類も色々あって、せっけんなどの生分解できる洗剤を使っている洗濯機のドラムには、自然界に存在する5,6種類のカビがくっついているそうです。
一方、合成洗剤しか使ってない洗濯機のドラムには、自然界にほとんど存在しないような2種類のカビがやってきてどわーっと繁茂するという話なんです。
そこでドラムを薬剤洗浄して「うわー、こんなにきれいになった!」と喜んでその排水を海に流すのか、それとも合成洗剤をやめるのか、どちらかだと思うんです。

人間なかなか便利なものに出会ってしまうとやめられないので、そこをこれから経済でどうやって改革していくかという話に繋げていきたいと思っています。

この合成洗剤につくカビは分解した物質が浮遊してアトピーの原因になるらしいんですよね。
皆さん薬剤洗浄してまた海に流しちゃうんでしょうけれども、海には様々な生物がいて、例えば牡蠣の養殖場にも私たちの排水は流れていったりします。
その牡蠣を食べて腹があたったりします。
ノロウイルスとかO157とか、おかしなウイルスや菌がいっぱい蔓延していますけれども、そういうものも、臭いものには蓋をしろという私たちの安直な行動からの結果が負の形で還ってきているのかなと、私は思ってます。

・調和と循環の世界。

菌の法則というのはね、調和の世界、循環の世界です。
何かが突出していいのではなくて、全体的に良くなきゃだめ、最低8割くらいですかね。
しかし企業の意向で、その菌の法則と科学技術との間に分断線がひかれちゃっています。
菌の世界をやっている寺田さんとか私とか、どっちかというとこの業界では気持ち悪い人間だということになってますよね?なってない?俺だけか(笑)
結構気持ち悪いという評価をいただいてるんですけれども。科学の世界の人たちからすると、何をやってるんだ?と思われるかもしれないんですが、私は企業の論理どころか資本の論理、つまり企業も仲間にしてきちっと調和の世界を作って行かなければいけないんじゃないかと思っています。
資本の論理、つまり株主が企業を操っているからお金という存在が悪いんじゃないかという話になりがちじゃないですか。
お金は悪いものだと思われる方いますか?
私はめちゃめちゃ悪いものだと思ってました。
妻がお金を貯めるタイプだったので、そういうのやめろ、みたいなこと言ってた時期もありますけれど、このお金から自由になるために私がパンク的DIYをやってみた結果どうなったか、という話をします。

渡邉格さんのお話 3 経済の話へ続く

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