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フマレテカオレ #ひと色展



1年目の子でもやらないようなミスを3年目の私がやってしまった。 

大学生たちの会社説明会や、入社した新人の講習も任されてる私が犯していいミスじゃなかったと、心底そう思う。


お得意先の会社に、お得意先の“ライバル会社”さんへの見積書を送ってしまった。
しかも、ライバル会社の単価の方が安いことも漏洩して、私と上司は2つの会社に頭を下げに行くことになった。

先方には、情報管理の甘さをご指摘され、単価を下げざるを得ない状況になってしまった。

先方に怒鳴られ、会社に戻ってからは部長に怒鳴られた。
今日一日、私と課長は、その件で時間を使った。


帰社してから課長は苦い顔をして、

「まあ、わたしも、こんなミスしたことあるから…まあ、しょうがない。
いや、しょうがなくは、ないんだけど、うん…起きたこと、だから…次からは、絶対に起こらないようにしよう。
っていうか、あなたに任せっきりで、チェックしなかったわたしも悪い。
いや、っていうより、わたしが、かなり、悪い。ごめんっ」

と、言った。

「何年やってんのよ!」って怒鳴られたほうが楽だった。だから、課長のその優しさが怒鳴られるよりも心に突き刺さった。

報告書、顛末書で帰りが遅くなり、課長とふたりで会社を出る。わたしは、ずっと謝り通しで、駅まで歩いた。

課長とは電車の方向が逆。
駅についてすぐにわたしの電車が来て、どうしようもない気持ちのまま最後に謝罪して、駆け出そうとした。すると、上司が私の手首をつかんだ。

ほんとは、情けなくて申し訳なくて、もうずっと泣くのを我慢してたのに、上司の顔を見てすべてが壊れた。

「やっぱり、呑みに行こうよ。まだ謝り足りないでしょ?」

そう言って、彼女は困ったように優しく笑った。

自分だって謝罪ばかりで大変だったくせに、こんな時に部下を気遣えるなんてすごいって思った。

わたしは、涙でぐちゅぐちゅになりながら頷いて、こんな女性に、なりたいって、そう思った。








たぶん800文字くらい!





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