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小説 「つくね小隊、応答せよ、」

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第二次世界大戦末期。 東南アジアの、とある島。 米軍の猛攻により、日本軍は転戦(撤退)し続け、日本兵たちは、ちりじりに離散した。 そんな中出会った別々の部隊の若い日本兵の3人、…
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2021年12月の記事一覧

「つくね小隊、応答せよ、」(壱)

昔々、あるところに一実坊弁存という旅の僧侶がいました。 弁存は旅をして、仏の教えを人々に…

「つくね小隊、応答せよ、」(弐)

「艦砲射撃っっ!!!!」 叫んだと同時に、3人別々の場所へ飛び、伏せた。 きゅるるるるる…

「つくね小隊、応答せよ、」(参)

艦砲射撃の爆発で、土の中からはるばる飛んできたモグラ。そのモグラに串を刺し、火でじっくり…

「つくね小隊、応答せよ、」(四)

その3つの影を見て、恐怖が弁存を包みました。 みっつの影は、薄くぼんやり白く光っています…

「つくね小隊、応答せよ、」(伍)

「…で?娘は、食われたのか?」 夜の闇の中で、仲村が訊く。 「ああ、そうだな。食われた。…

「つくね小隊、応答せよ、」(六)

光前寺は、信州駒ヶ根の山の麓の寺です。苔むす石垣と林の中の石畳。その長い道の先に、本堂が…

「つくね小隊、応答せよ、」(七)

夏の真夜中。 密林。 這って進む渡邉の耳には、誰かが小声で言い争って、そしてそれを誰かがなだめているような、そんな声が微かに聞こえている。離れた場所なので、何の話をしているのかはわからない。 やがて、声のすぐそばまで近づいてきた。清水や、仲村のいる場所からは、50メートルほど離れているだろうか。人影は見えないが、茂みの向こうで、最低でも三人が話をしている。ふたりが言い争い、そして小声でひとりが仲裁し、なだめているようだ。 外国の言葉のようにも聴こえるし、日本語のようにも

「つくね小隊、応答せよ、」(八)

「久や、久、これ、久蔵、こっちよ」 「え、ここ人んちじゃないの?」 「うん、人様のお店じ…