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Peaceable Education #9 「幼児版ピースフルスクールプログラムの取り組み 座談会1」

~PSPを実践された先生方の座談会1「レッスンの中で発見したこと」~

ピースフルスクールプログラムはオランダで開発された子どもたちが社会参画するための学習プログラムです。その幼児版プログラムの実践について、この#9で紹介しています。
今回は、実践されてきたお二人の先生による座談会。みんなのみらいをつくる保育園東雲の元園長の成川先生と、同法人で長く保育に携わってこられた森永先生のご協力のもと、5月に行いました。

左:成川宏子 先生  /  右:森永紗希子 先生

ピースフルスクールプログラムで発見したこと

成川先生(以下なり):このプログラムをやっていくと、子どもが本当は意見を言いたいし、恥ずかしがりやも意見をもっていることがよくわかります。子どもたちが、聞かれた時にはきちんといろいろな意見を述べるのを何回も耳にしました。

森永先生(以下もり):大人は子どもを見ないで決めつけで動いてしまいがちですが、子どもは、大人が思う以上に成熟しています。ただ実際にはそれを伝える場が少なく、ピースフルスクールプログラムはそれができる貴重な場です。

子どもは意見を言ってもよい存在

なり:子どもに伝えるのに、指示・命令しなくても、言い方はあります。

もり:指示・命令しないというとインパクトがありますが、よく考えれば当たり前。自分にとって大事な人に指示・命令はしませんよね。なぜ子どもにはするのか。「靴はきなさい!」とか。でも、言ってしまったら言い直せばよいのです。

なり:伝え方は必ずあります。例えば、トマト栽培をする時、それをどうしたいのか子どもたちと話すことになりますよね。大人は食育と考えがちですが、話すといろいろな意見が出てきます。トマトがなるまで待ちきれない子どもは育てるよりも買いに行きたいと、全然違う意見も。そこに子どもの意志があります。大人が子どもの意見に耳を貸すことは、子どもを認めて子どもに自分は意見を言ってもよい存在であることを伝えること。そこから大きな可能性が広がります。

話の長い子をどう受け止めるか

なり:レッスンで、よく相談されるのは、話の長い子どもにどこまで聞くのか、どうフォローするのか。これはファシリテーターの技術でもあり、一緒に生活しているのでフォローする機会はいつでもあります。「尊重」や「こども主体」の意味のはき違えがあるかもしれません。

もり:人間として子どもと同じ目線で向かい合って、他の人の話も聞きたいからそれは後で話してねと頼めばたいてい伝わります。

なり:そのうち他の子どもからも「さっきそれは聞いたよ」と出てくることもあるし、本人が自分で気づく機会があってもよいと思います。

もり:レッスンが充分でなかったと思って、もう一回やろうとすると、子どもたちから「それ、もうやったよ」と。

なり:そんな時、ファシリテーターは、「このレッスンは大事だからもう一回やります」と、きちんと切り返しができるかどうか。自分の苦手に気づいて認め、よく考えていくことが次の成長につながります。

レッスンで大切にしてきたもの

なり:子どもたちを誘導しないこと。レッスンの狙いに達しなくてもその時間で終えたことを踏まえて、日常生活に生かすことでしょうか。これは重要と思っています。

もり:タイムマネジメントも、重要と思います。子どもが集中できる時間には限りがあって、4歳だと40分、5歳だと50分程度。だからレッスンは30分くらいで、子どもたちには「あ!もう終わった」くらいがちょうどいいかと。そうしないと、子どもたちに話が長いとは言えないですよね。

なり:見ていると、話し足りなかったらレッスンが終わった後に2人で話し込む、何も言わずにそこに残る子どももいますが、私も長いのはいいことじゃないと思います。レッスンを担当したスタッフは簡単に振り返りをするようにしてきましたが、「自分の話が長くて子どもたちに均等に話を聞けなかった」という反省を読むことも。子どももスタッフの表情を見て、言ってみようかとか、レッスンしている人は今緊張しているから言っても採用されないとか考えているのだと思います。
 

(座談会2へ続きます)

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