「ハートスートラ」観てきました

ミュージカル座の公演「ハートスートラ」を観てきました。金曜の昼回。平日なのでもちろん仕事をサボって(笑)。

般若心経をモチーフにしたミュージカルで、って話を聞いたときは「むむ?」って、面白そうだけれどいったいどんな物語になるの?ってのがぜんぜん想像つかず。一応仏教は興味本位で一通り押さえていて、昔は密教系、真言宗とか、あの辺の神秘的なのが好みだったんですが、最近は親鸞さんのファンだったりして。般若心経も一通りはさらったつもりだったのですが、実はあまり真剣に考えたことはこれまでなかった。一番有名なフレーズ、「色即是空、空即是色」はわかりやすいのでよく使います。大学で数学とか物理学とか勉強していると、このフレーズがすごく刺さるんですよね。数の世界と、宇宙と、ミクロと、全部繋がっている感じとか、目に見えるものはすべてその一面的な現れであるところとか、裏と表をひっくり返す感じとか・・・。

てことで、品川の六行会ホールへ。そういえば、「六行会」って、宗教団体かな?とか思ってたんですけど(演目が般若心経だし)、違うんですね。南品川宿の有志の方が始められた地元の互助会(?)なのだとか。立派なホールでした。

あ、以下、ネタバレ含みます。

のっけから心を鷲掴みされ、ぶるんぶるん振り回されるような演目で、なんていうか、すごく原始的な涙が流れました。物語とか、感情とか、そういうところではなくて、なにか根源的なもの、圧倒的な存在が自分の中を通り抜けていくような感じ。般若心経の朗読から始まって、そこに波形をもった低音が入った瞬間になにかはじけた。ホワイトノイズ的な混沌をもった音に、正弦波の低音が始まりの「一」をもたらした瞬間から、一が二、二が四、四が八、十六、三十二、六十四、百二十八、二百五十六・・・と、どんどん秩序がビッグバンのように膨らんできて、僕らは般若心経の世界へと転生した、そんな感じ。

僕らは主人公の目を通して、ストーリーテラーのおじさんと一緒に、世界を旅します。それは、不思議の国に落ちたアリスのような、もしくは、銀河宇宙を旅するジョバンニのような。般若を探し求めて、いろんな時代、いろんな場所を旅して。

一幕が終わって、休憩時間にパンフを読んでいたら、般若心経をミュージカルにするのは珍奇なことではない、例えば、キャッツも元々はエリオットの詩じゃないか、と書いてあって、そうだ!キャッツだ!って思いました。キャッツは僕が初めてまともに観たミュージカルで、たまたま通り道で訪れたロンドン公演。それ以来、日本でも四季さんのキャッツは何度も観に行ったり。いろんなミュージカルを観に行くようになったのもそれから。あの、キャッツの、意味がありそうでなさそうで、物語がありそうでなさそうな感じ。でも、歌が素晴らしいし、猫がカワイイからいっか!みたいな感じが、たぶん気に入ってる。般若心経って、そうか、そういうことだったのか、と。

そう感じて突入した第二幕はもう、キャッツにしか見えない(笑)

だって、「無無無」なんて、あれはまさにスキンブルシャンクスでしょ!ていうか、観音様、寄せてません?マーラはマキャビティだったり。うん、たぶん、物語自体が普遍的なんだろうな。普遍的だからこそ、何千年の時を超えて歌い、語り継がれる。いつの時代にも舎利子がいて、どんな物語にもカムパネルラがいて。

そして、メモリーばりの、最高の歌声、最高のデュエットを聴かせてくださった、ゆうとみすずはグリザベラとジェミマ。北川さんはさすが本当に素晴らしい歌だった。彼女の声色はいろんな歌い手さんたちとはちょっと違うところにある。太いんだけどはかなくて、力強くて優しい。圧倒的です。そして小此木さんは初めて聴いたのですが、彼女の歌声も素晴らしかった。監督さんが惚れるのがわかる気がする。すごいなぁ、こんなすごい歌唱を、同じ時代で聴けるなんて、世界はすごいと思う。歌は魔法。究極の。

絵が美しかったのは、やはり花。たくさんの花が咲いて、その色と光の美しさが脳裏に焼き付いています。詩とシンクロした花たちが、外界からの刺激に反応するのが神秘的だった。花をああいう目で見たことがなかった。眼も、耳も、鼻も、舌も、身も、意も、色も、声も、香も、味も、触も、法も。確かにそうだわ。そして、花がそうであり、かつ、僕らはある方向から見れば花と同じであるから、やはり僕らにもなにもない。

五蘊ダンサーズも美しかった!五蘊って、こういう姿なのか、いや、姿など無いのだ、御仏が我々にわかりやすい姿形で見せてくれているだけなんだ、と納得できるような美しさ。

三世諸仏ももう反則(笑)面白かっこよすぎる!あれは本当にやばい。おもわず「志村後ろ〜!」って言いそうになったわ!

あとは、耳がちぎれる音がリアルで怖気たのと、三蔵さんのムーンウォークがツボで吹きそうになった!

ということで、「ハートスートラ」、ホントに面白かったです。あ、サントラほしいなぁ!ぜひ、この楽曲たちをもっともっと聴きこみたい。いや、また次回聴きに来るから価値があるのかも。また今度、観に行きたいと思う、リピートしたいと思うミュージカルでした。

おしまい。


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