家庭医療のコア #9障害とリハビリテーション

※本記事は2020年11月24日に配信されたメルマガの転記となります。

☆今月のポートフォリオ☆
今月のテーマは「障害とリハビリテーション」です。
家庭医療ver2、総合診療専門医2018では「リハビリテーション」、総合診療専門医2019 typeA では扱われていません。type Bでは「包括的統合的アプローチ/多様な診療の場に対応する能 力」で書けるかもしれません。

新家庭医療専門医のルーブリック(https://www.primary-care.or.jp/nintei_sk/case.html )を読 むと、学習目標として「国際生活機能分類(International Classification of Functioning : ICF) に基づいて患者像を評価し、リハビリテーションの目標や処方を行うと共に、介入の成否から 評価や目標・処方の適切さを論じることができる。」 と記載されています。また、優を満たす 条件として「国際生活機能分類に基づいて患者像を評価し、リハビリテーションの目標設定や 処方を行うと共に、介入の成否から評価を行い、振り返ることができる。」と記載されています。

Gノート2017 患者中心のリハビリテーションにまとまっていますが、リハビリ介入を行う に当たって大まかな流れとして1患者の能力を個別評価し目標設定2どのような訓練をどの順 番、程度するか話し合い3実際に訓練4結果を再び評価5次回のリハビリテーションに適応も しくは情報共有の上ケアの移行 となっています。
リハビリを行うに当たって、セラピストはもちろん、看護師、医師等多職種との連携、情報 共有が必要です。それぞれが情報共有を行うにあたり、共通した分類、評価方法があるとス ムーズにいきますよね。そこで役に立つのが学習目標にもある国際生活機能分類(以下ICF) です。

ICFとは、2001年にWHOによって採択された概念です。患者の機能をプラスとマイナスの両 面から総合的に把握するツールです。ICFが出てくるまではWHO国際障害分類(international classification of impairments, disabilities and handicaps:ICIDH 以下ICIDH)が用いられてい ました。下記の図にあるようにICIDHでは障害というマイナス面を分類していました。疾病が 機能障害を生み、それが能力障害や社会的不利を生む、したがって介入も同様の順でアプロー チする、という一方通行的な考え方でした。そのため、疾病の治療やリハの中心となる機能障 害に対する機能訓練が困難な時に障害を持った人がその人らしく生きる方法を諦めることにな りかねませんでした。
ICFは3つの生活機能というプラス面から見るように視点を転換し、人の健康状態には3つの 生活機能と2つの背景因子それぞれが相互に影響し合っているとする考え方に変わりました。 暮らしにくさの原因は心身機能・身体構造だけにあるとはせず、活動や参加に着目して直接ア プローチしたり、本人の主体性や主観といった個人因子、取り巻く環境因子へアプローチする ことによって生活機能全体を改善し、QOLを高めることが可能となると言われています。

https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002ksqi-att/2r9852000002kswh.pdf 3-6の図参照
上記図の活動の評価ですが、この項目がADL、IADLの評価となります。評価方法も複数あるよ うですが、客観的指標の代表的なものとして機能的評価(Barthel Index)、機能的自立度評価 表(Functional Independence Measure : FIM)が使用されています。それぞれADLについて評 価項目が設定されており、評価により点数化されます。
FIMの参考)日常生活動作ADLの指標 FIMの概要 厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000184198.pdf

二つの大まかな違いですが、Barthel Indexでは現在できる能力「できるADL」を評価し、FIM は実際に行っていることを評価「しているADL」を評価しているといわれています。 例)能力的には自分で移乗できるが実際には心配だから介助してもらって移乗している
 →Barthel Indexでは自立の点数 FIMでは介助の点数

全体像を把握した上で目標設定です。目標設定を行う際、自分はどうしても漠然とした目標設 定になりがちなので指導医から「SMART」を意識した目標設定を行いましょうと言われていま す。
SMARTは意識するべきポイントの頭文字をとったもので
Specific(具体的)
Measurable(測定可能)
Achievable(達成可能)
Relevant(切実)
Time bound(期限が明確) です。
これらを用いると下記例ですが
例)1ヵ月後の院内音楽会へ参加できる(R)ように、まずは耐久性をあげて(S)30分以上(M)座位 保持ができるようになることを目標にするのはどうでしょう。次回カンファで確認したいです が、2週間(T)で可能(A)でしょうか。 のような感じになります。

あとはその目標に向かって実践し再度多職種で評価し方針を決定する形です。 何も考えていないとリハビリをオーダーしてあとはセラピストにお任せになってしまいそうで すが、一つ一つ意識し、多職種が発言しやすい雰囲気を作った上で、情報共有、考えを聴きな がら自分の経験値をあげていけるといいかもしれません。

文献1)Gノート 2017増刊号 Vol.4 No.2 これが総合診療流 患者中心のリハビリテーション
文献2)日本プライマリ・ケア連合学会 基本研修ハンドブック 第2版 文
献3)新・総合診療医学 家庭医療学編 //////////////////////////////////////////////////////////////////////////

文責:岡本雄太郎(専攻医部会 総務部門)
2022/05/11転記

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?