家庭医療のコア #7プロフェッショナリズム

※本記事は2020年7月28日に配信されたメルマガの転記となります。

☆今月のポートフォリオ☆
今月のテーマは「プロフェッショナリズム」です。

家庭医療専門医(Ver.2)、総合診療専門医(2019タイプA)では「プロフェッショナ リズム」、新家庭医療専門医では「高いプロフェッショナリズムに基づく診療」とし てエントリーに設定されています。総合診療専門医(2019タイプB、2020)では、 「公益に資する職業規範」に該当すると考えられます。(2018では該当項目はないと 考えられます)

ルーブリック(家庭医療専門医Ver.2)では「プロフェッショナリズムや倫理の原則に 関して問題のある事例に対し,何らかの枠組みを用いて【網羅的に情報収集し,葛藤 する問題点を明確にした上】で,妥当な意思決定につなげている。」(【●●】はボー ダーラインと優の違いです。)

ルーブリック(新家庭医療専門医)では「プロフェッショナリズムに関して課題を感 じた事例に対し、プロフェッショナリズムに関する【文献的定義も含め】、何らかの 枠組みを用いて【多面的に】情報収集した上で、考察・省察し、改善案を出すことが できている」と記載されています。(【●●】は優とボーダーラインの差異です。優で は、文献的定義によって問題点を明確化する事が求められていると考えられます)。

プロフェッショナリズムのポートフォリオは、日常診療において”本当はこうあるべき だ!”と感じた時に適していると考えられます。例えば、当直明けで患者さんへの説明 を簡素なものにした時に、例え疲れていたとしても、患者さんへしっかり説明する”べ き”だ、という事を感じたとすれば、それは良いエントリー候補と考えられます。

プロフェッショナリズムとは一言でいうと、“よい医師”とは何か、ということになりま すが、合意された定義はないとされます(1)。有名な枠組みとしては、ArnoldとSternに よる、卓越性、ヒューマニズム、説明責任、利他主義を柱としたプロフェッショナリ ズムの概念(2)があります。上記の例は、説明責任の項目に当てはまるわかりやすい例 ですが、“何かおかしい”と思ったときに、網羅的に情報収集すれば、どこに問題点があ るのかが見えてくると考えられます。

他の代表的な枠組みとしては、以下のものがあります。
①新ミレニアムにおける医のプロフェッショナリズム:医師憲章(3)
患者の福利優先の原則、患者の自律性に関する原則、社会主義の原則の基本3原則とプ ロフェッショナリズムとしての10の責務
②Swickの規範(4)
医師の患者と公衆への貢献を背景としたプロフェッショナリズムを構成する9つの要素 望ましい行動や態度は必ずしも普遍的ではありません。その意味で、原則同士が対立 することもあります。例えば、ArnoldとSternの説明責任を果たす事に集中するあまり に医師憲章の医療資源の適正配置の責務が果たす事が困難になったり、利他主義に注 力する過程で患者との適切な関係を維持するのが困難になったりする場面もあるかも しれません。そのような原則同士の対立の葛藤をどのようにマネジメントしたかを取 り上げる事も良いポートフォリオの題材になると考えられます。

参考文献
1) DeAngelis CD: Medical Professionalism. JAMA, 313(18): 1837-1838, 2015.
2) Arnold L, Stern DT: What is medical professionalism? Measuring medical professionalism, Stern DT (ed), Oxford university press, New York, 15-37, 2006
3) 認定内科専門医会プロフェッショナリズム委員会:米英合同医師憲章と医のプロ フェッショナリズムー日本版内科専門医憲章策定を目指すプロジェクトの成果―.内 科専門医会誌.18:45-57, 2006.
4) Swick HM:Toward a normative definition of medical professionalism. Acad Med, 75(6): 612-616, 2000.

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文責:岡本雄太郎(専攻医部会 総務部門)
2022/05/11転記

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