家庭医療のコア #11行動変容②

※本記事は2021年1月26日に配信されたメルマガの転記となります。

今回のテーマは「行動変容」です。
どうしても間食をしてしまう糖尿病患者さん、飲酒を止められないアルコール性肝障害の患 者さん、COPDにの呼吸苦に悩むも喫煙し続ける患者さん......こうした行動を変えることが 出来ないでいる患者さんに遭遇した事は1度とはなくあるかと思います。私も外来で診てい る患者さんの何人かの顔が思い浮かびますし、私自身の経験でも思い当たることが多々あり ます。

こうした患者さんに向き合うことは医療者にとってもストレスになり、たとえ患者中心の医 療モデルを理解していたとしても、ともすれば私たちは苛立ちを感じて医療モデルを無理や り押し付けてしまいかねません。医療モデルを実践するために今回のテーマである行動変容 へのアプローチについて学ぶ必要があります。

まずは患者さんとの信頼関係の構築と、相手の枠組みの理解、一方的にならない患者さんへ の教育が必要です。そうした患者さんとのコミュニケーションには「LEARNのアプロー チ」が有用であると言われています。すなわちListen(傾聴)、Explain(説明)、 Acknowledge(相違の明確化)、Recommend(提案)、Negotiate(交渉)のステップに分 けて患者さんへのアプローチを試みる手法です。患者さんから情報を引き出し、その行動の 背景となる事情や心理を理解したうえでそれに合った医療者側のプランを説明するというも のです。

次に理解するべきなのは、行動変容の課程には「ステージ」があるということです。医師国 家試験でも取り上げられる話題なので皆さんご存知のことと思いますが、行動変容の課程 は、無関心期、関心期、準備期、行動期、維持期、再発期に分けられると言われています。 それぞれのフェーズにあった支援が医療者には求められており、まずは患者さんがどの段階 にあるのかを把握する必要があります。

患者さんの行動変容における位置づけの理解や把握には他にもアプローチ方法が提唱されて いて、よく診療の現場でも取り入れられているのが「重症度-自信度モデル」かと思います。行動変容に対する重要度(患者さん自身が重要と思えるかどうか)と自信度(達成でき ると思えるか)を聴取し、4分割表のどこに位置するか理解することで、行動変容に何が必 要か把握することが出来ます。

こうしたアプローチをすることで患者さんの行動変容を少しでも助け患者中心の医療モデル の実践に近づくことが出来ますし、そうした経験を科学的に振り返ることでより深いポート フォリオを作成できるのではないかと思います。このメルマガが専攻医の皆様の明日からの 診療、PF作成の動機付けになれば幸いです。
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文責:岡本雄太郎(専攻医部会 総務部門)
2022/05/11転記

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