家庭医療のコア #5統合型ケア

※本記事は2020年5月26日に配信されたメルマガの転記となります。

☆今月のポートフォリオ☆
今月のテーマは「統合型ケア」です。
家庭医療専門医(Ver.2)では「統合型ケア」、総合診療専門医では「未分化で多様かつ複 雑な健康問題への対応」としてエントリーに設定されています。

ルーブリック(家庭医療専門医Ver.2)は「生物医学的に複数【かつ難しい問題】が絡み 合った事例において、主治医として専門医や医師以外の医療専門職との協働を適切にマネジ メントしている。【心理社会面、家族といった側面】にも配慮ができる。」となっています (【●●】が優とボーダーラインの差異)。

私自身非常にイメージがつきにくい分野でしたがボーダーラインと未到達の差を部分をpick upすると①生物医学的に複数の問題が絡み合った事例であること②専門医や医師以外の医 療専門職との協働が行われることであり上記2つが最低条件であることがわかります。それぞれをkeywordを挙げながら考えると

①生物医学的に複数の問題が絡み合った事例とは
keyword「多疾患併存 Multimorbidity」
いくつかの慢性疾患各々が、病態生理的に関連するしないに関わらず併存している状態であ り、診療の中心となる疾患を設定しがたい状態。認知症患者でDM、慢性心不全を合併して いる例や、陳旧性脳梗塞に心不全とCOPDを合併している例等、どれもが予後規定因子にも なり得るような状態です。それぞれへの介入のみで考えてしまうとポリファーマシーや予期 せぬ入院に繋がることがあるため、包括的なアプローチと優先順位をつけての対応が求めら れる。

②専門医や医師以外の医療専門職との協働が行われることとは keyword「Multidisciplinary approach」 専門医からの医学的情報や多職種、行政等の視点から情報収集を行い 医学的情報、ケアへのニーズ、家族・介護者の思い、ACPを踏まえチームへ共有した上でプ ランを作成する。 地域包括ケアの時代においては医療専門家、介護専門家、福祉専門家、地域住民、 自治体職員など地域ベースの統合(水平統合)と、在宅医療、診療所、各種施設、 中小病院、大病院、大学病院などの医療​福祉施設​間の統合(垂直統合)のふたつの 軸で家庭医は活動する必要がある。

①②を踏まえた上で、優の条件の【心理社会面、家族といった側面】 keyword「BPSモデル」
※詳しくは下記バックナンバーから第4回メルマガをご参照下さい https://drive.google.com/open?id=1h3LFsoc4TkMu9Q6h_pbyr1rWS_dHvVf2

【難しい症例】
keyword「臨床問題の複雑性」(Simple, Complicated, Complex, Chaotic) Simple, Complicated, Complex, Chaoticの説明については以下の藤沼先生のブログがわかり やすいです。 http://fujinumayasuki.hatenablog.com/entry/2014/05/31/194038#fn-caf217e2 自分の題材がどれに当たるか分析した上で、題材としてはComplicated、Complex、Chaotic な症例についての考察が望ましいと考えます

ポートフォリオ としては、複雑さの分析→介入の決定→介入の評価→さらなる介入という 感じで記述できると、複雑さの理解を示せます。

参考図書
・日本プライマリ・ケア連合学会基本研修ハンドブック
・新・総合診療医学 診療所総合診療医学編
 →藤沼先生の「未分化で多様かつ複雑な健子問題への対応」がまとまっています
・総合診療専門医 ポートフォリオ実例集
 →ポートフォリオの実例を挙げながら記載してありイメージしやすいです。

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文責:岡本雄太郎(専攻医部会 総務部門)
2022/05/11

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