あのミットに向かって 52話
ホテルに戻った雷道ナイン
監:今日はお疲れだった
全員:お疲れ様でした。
監:準決勝後に申し訳ないが明日の話だ
雷道ナインは息を呑む
監:今日の試合を見てわかったと思うが相手は去年の夏の大会優勝校、藤巻高校だ
そして、さほど去年とメンバーが変わっていない
西:マジですか?
監:あぁ本当だ
お前達に伝えるか悩んだが伝えよう
知ってるやつもいると思うが、去年の決勝、ノーヒットノーランだった…
全員:………
監:決して相手が弱かったわけではない
あの暁高校だからな
それでだ、俺達もノーヒットノーランやられるか?
全員:いいえ!
監:俺達は勝ちに来たんだろ?
全員:はい!
監:明日はここにいる全員、そして応援席にいる奴ら全てをかけて勝ちに行く!相手が誰であろうがお前達のバットで切り開いて来い!
全員:しゃぁーー!!
監:麻衣から藤巻高校についての話だ
麻:今日のピッチングは一条君にしてはあまり良い状態ではなかったわ
齋:マジでかよ
麻:これは私の予想だけど一条君、本気で投げた事無いんじゃないかな
全員:はぁ?
麻:どこか抜いたピッチングをしている
簡単に言うと舐めてるってことね
拓:おいおいおい
結:ブワッ!
齋:誰か哲を止めろ!!!
麻:でも、今大会何かと気迫のピッチングをする事がある。それが何故なのかわからないのよね…
〇〇:!?
拓:多分コイツのせいですね!
全員:!?
齋:何した!喧嘩でも売ったのか?
〇〇:いやいや売ってないですよ
相手は3年生ですから
拓:3年じゃなかったら売ってたのかよ笑
〇〇:逆に向こうから俺に話しかけてきたんですよ
西:だから3回戦の時に、話しかけられてたのか
〇〇:後、準決勝後もです。
西:さっきじゃねーか
町:それでなんて言われたのニヤ
〇〇:あの、智博先輩怖いです
あの人は準決勝に目もくれず、決勝を見据えてました。
その後、足元掬われますよって言ったら、
「いや、負けないから」と返されましたね
齋:はぁあ!?
西:舐めてやがんな〜
結:これは明日が楽しみだボキボキ
齋:ボコボコにしたんだろうなぁ!
〇〇:いや、出来ないですって!
町:言われたまま帰ってきたんだ〜
〇〇:いや、それは…
齋:そう言えば、森田
準決勝前に女と会ってたらしいじゃねーか
〇〇:!?
結:忘れてたわ
詳しく聴かないとな
西:彼女がいる事を俺達に隠してた事も詳しくな!
〇〇:彼女じゃないですって!幼馴染です!
齋:まず写真見せろ!
〇〇:ないです
結:ホントか?
〇〇:ホントです
西:なら携帯確認させろバシッ!
〇〇:あ、獲るな!(終わった…)
西:!?
西:全員可愛いじゃねーか!ボコッ!!
〇〇:ぎゃー
齋:お前こんな女がいながら俺達に隠してただと!!ギュッ
〇〇:いや、これには訳が…健吾助けて
大:えっ!無理
〇〇:同じ1年だろ?
春一っち!
春:ごめん!これは俺も…
〇〇:あ〜〜
結:この中で誰が幼馴染だ
答えろ!
そして、今日隠れて話してたのは?
〇〇:1番左の子です
話したのは………………全員です。
西:コイツ殺せ!!!
〇〇:ぎゃー
麻:楽しそうね
拓:アイツ終わったな
〇〇:誰か〜〜〜
先輩達にこの後、根掘り葉掘り聞かれたのは言うまでもなく…
そして、夜
〇〇:やっと終わった…
ぜぇぜぇ
春:お疲れ様だね
〇〇:本当だよ
春:そう言えば、御幸先輩が呼んでたよ
〇〇:わかった。行ってくる
コンコン
〇〇:御幸先輩来ました。
拓:おう!やっとか
〇〇:助けないからこうなったんですよ
拓:えっだって捕まりたくないじゃん
〇〇:それで何ですか?
拓:疲れて忘れてんじゃん!
真カットボール改
〇〇:そうだった!完全に忘れてた
拓:やるぞ!時間がない
〇〇:はい!
拓:先ず、いつもの真カットボールの握りは?
〇〇:フォーシームの握りから少し外側に指をずらして軽く握るくらいですかね
拓:まぁそうだな
でも、あの時お前は握りを気にしていなかったはずだ
ただ抑える事だけを考えて
〇〇:言われてみればそうかも
拓:何パターンかやってみよう
先ずは適当に握るパターン
だけどリリースはいつもと同じ様に最後にかすれ!
〇〇:はい!
いきます
ふー
シュッ!
ビューー
スパーン
拓:これはダメだな
球速も落ちているし、曲がりもよくない
〇〇:そうですね
後、あの時と感覚が違いました
拓:なら、次!
次は縫い目に沿って握ってみてくれ
〇〇:はい!
縫い目に沿うってことはワンシームと同じ
拓:よく知ってんな
〇〇:スリーシームの時に覚えました
いきます!
腕は真っ直ぐと同じ様に強く振る!
ンァ!
ビューーー
ズバン!
拓:これはこれで良いけど
高速ムービングってとこかな?
〇〇:そうですね
それから色々試し、最後
拓:いつもフォーシームの握りより外側を握って投げてるんだよな?
〇〇:そうですね
拓:逆にフォーシームの握りで投げてみたらどうだ
〇〇:それは考えたことなかった
拓:そして、お前意識を指に持っていき過ぎだ
また怪我するぞ
基本小指と薬指を強く握れば自然とカットボールになる
〇〇:そうなんすね
いつも指先で擦る様に投げてたから
拓:それなら真カットボールは今言ったので投げてみろ
〇〇:わかりました。
ふー
指先よりも薬指と小指を強く握る
ギュッ!
〇〇:!?
シュッ
シューーー
グイ
ズバン!
拓:ほらな
〇〇:投げやすい
同じ変化でいつもより負担少ないって最高じゃん
拓:それで真カットボール改だが、昔と今のを合わせてみたらどうだ?
〇〇:と言うと?
拓:薬指、小指を握るが、最後に中指でも擦るってことだ
そして、クロスステップで全身で投げてみろ
〇〇:握りの改良にフォームの修正…
身体リラックス
ザーッ(脚を高く上げて)
右バッターの胸元に
ドン(クロスステップで)
エグるように
シュッ
ビューー
拓:真っ直ぐ
ヒューーン
グン
カーン(別のものに当たった)
拓:!?
(おいマジかよ)
何だ今の変化…
捕れなかった
〇〇:すみません!
拓:おう…
(今のは正直言ってあの時より変化してた)
監:いつまでやってる
拓:あ!すみません!
監:お前がいながら…
それで今の球はなんだ?
拓:今のは今日の準決勝で投げたカットボールで
いつもより変化が大きかったので
付け焼き刃ですが、明日使えないかなぁと思って
握りとフォームを改良していました。
監:で、使えそうか?
拓:そうですね
1球か2球程度なら投げても良さそうですね
俺自身も捕れるかわからないですし
監:投げるタイミングはお前に任せる
拓:わかりました
監:森田!
明日7回からいくぞ!
〇〇:!?
はい!ありがとうございますボス!
監:御幸、投手陣を頼むぞ
特に〇〇には注意しといてくれ
拓:あ、わかりました…
(どうしてだろ?)
監:森田!最後、真っ直ぐで締めろ!
〇〇:わかりました!
ザーッ
指先一点集中、ココ!!
シュルルルル
ズバーン!
〇〇:ニヤッ
指のかかり方も最高
監:これだけは覚えておけ、
変化球を活かすも殺すも真っ直ぐ次第だということを
〇〇:はい!よかったです。
他の変化球にも手を出そうとしてましたからハハ
監:明日優勝するぞ
〇・拓:!?
はい!
次の日…
監:おはよう!
全員:おはようございます!
監:いよいよ今日が泣いても笑ってもこれがラスト試合だ!
思う存分野球を楽しんでこい!
全員:はい!
監:先発は大谷で行く
すごいプレッシャーだとは思うがお前ならやれる筈だ
大:絶対に打たせません!
監:そして、6回から菅野でいく
菅:はい!
監:お前はいつも通り投げれればどんな打者にも通用する!
お前の全てをぶつけてこい!
菅:はい!!
監:今の所これで考えてる
拓:(あえて言わなかったか…)
監:全員で勝ちに行く!
スタンドにいるもの、ベンチにいるもの、全員を代表して試合に出るお前達が雷道の全てだ。
そこ(グラウンド)に立つなら迷うな。
目の前のプレーに全力を尽くせ。
"お前達の雷道の野球を魅せてこい!"
全員:シャーー
ウ:試合開始は13時となります。
本日は暑くなる事が予想されますのでこまめに水分補給をし、十分に熱中症に気をつけていただきますようよろしくお願いします。
実況:天気は快晴。気温は33度
雲ひとつない甲子園の決勝に相応しい青空となりました。
今日が最終日。
これまで様々なドラマがありました。
その中で決勝に勝ち進んできた2校
まずは一塁側:西東京代表、雷道高校
指揮をとるのは片岡剛喜監督
ここまで雷道高校は、
2回戦、長崎の北陽高校に9ー7
3回戦、兵庫の暁高校に4ー0
準々決勝、神奈川の國學院附属高校に15ー1
そして、昨日の準決勝、
宮城の南山大附属高校に3ー2
で勝ち上がってきました。
注目といえば1年生の投手陣2人
大谷健吾選手と森田〇〇選手
特に森田〇〇選手はまだ甲子園で失点がありません
そして、打線も注目!
どこからでも点を取れる超強力打線、中でも4番の結城哲人君は前半は中々調子が上がりませんでしたが、ここ3試合.617と素晴らしい成績を残しています。
そして、その雷道高校を迎え撃つのは
三塁側:去年の覇者、石川代表、藤巻高校
指揮をとるのは神鳥一清監督
ここまで藤巻高校は
2回戦、
3回戦、
準々決勝、
そして、昨日の準決勝
熊本の武蔵山高校に4ー0
と全試合無失点で勝ち上がってきました。
注目といえば、やはりこの2人でしょう。
エース、一条正宗選手
相手に何もさせない王者のピッチング
150km/hを超える真っ直ぐには注目です。
そして、キャッチャー伊達統選手
今大会4ホーマーのスラッガーで
巧みな配球には雷道高校も苦戦するでしょう
去年の決勝でもこの2人はバッテリーを組んでました。
このバッテリーを雷道がいかに崩せるかが鍵となります。
さぁまもなく試合開始です。
ここで両チームのスターティングオーダーを発表しましょう
雷道高校 藤巻高校
1番:遊、西野疾風 1番:右、加賀大輝
2番:ニ、町田智博 2番:中、小松嘉人
3番:中、齋藤純 3番:三、和倉哲平
4番:一、結城哲人 4番:捕、伊達統
5番:三、濱田琢斗 5番:遊、大聖寺兼光
6番:捕、御幸拓也 6番:投、一条正宗
7番:投、大谷健吾 7番:一、高松実弥
8番:右、橋本静哉 8番:ニ、松原七尾
9番:左、白石悟 9番:左、津幡秀喜
となりました。
打順はどちらのチームも変わりませんね
先発は雷道高校が大谷健吾投手
藤巻高校が一条正宗投手
の投げ合いとなりました。楽しみですね
監:結城!決勝だ
アレをやれ。
結:はい!
全員円になれ
観客:来るか?円陣
結:俺たちは誰だ!
全員:王者雷道!
結:どこよりもバットを振ったのは
全員:雷道
結:どこよりも野球に励んだのは
全員:雷道
結:戦う準備はできているか?
全員:オーーー!!
結:我が雷道の誇りを胸に狙うはただ一つ
"全国制覇"
行くぞ!!
全員:オーーー!!!
観客:パチパチ👏
結:さぁ両チーム、ベンチ前に出てきました。
ザッ、ザッ
審:行くぞ!!
両チーム:シャァ!!
観客:パチパチ👏
審:今から雷道高校vs藤巻高校の試合を始めます
"礼"
両チーム:シャッス!!
To be continued…
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