あのミットに向かって 60話
ウ:11回の表、雷道高校の攻撃は、
3番、センター、齋藤君
実況:正宗選手は140球を超えています
正宗:高校野球最後にこんな試合ができるとは
思わなかった。
ゴゥ
ドン
実況:空振り〜
齋:全国制覇の最後の壁がこんな高いとはな
でも、全員で乗り越えてこそ
向こう側が見える
1人では決して見ることができない
仲間がいてこそ登れる
ぜってぇ俺たちが優勝する!
カキーン
しゃぁあああああ!!!!
実況:ノーアウトのランナーが出ました。
ウ:4番、ファースト、結城君
結:凄いな
これが最後の打席になるかもしれない
それなら悔いのないよう振り抜く
カキーン!
正宗:!?
実況:完璧な当たり
白球が飛んでいく
センターが止まった
〇〇:いったか?
小松:パシッ
実況:アウト〜
フェンス前でした。センターが下がっていました
もうひと伸びでホームランでした。
結:くっそ
少し差し込まれた
これがエースの想い。
重かった
ウ:5番、サード、濱田君
実況:濱田君はこの2打席ツーベースとヒットと当たっています。
統:芯をずらせれば
正宗:俺はお前を信じるよ
統:ふー
来い!!!
正宗:オラ!
ギューーーン
ブン!
実況:空振り
初球スプリット
濱:〇〇ちゃんも健吾ちゃんもよく投げてくれた
打って優勝を…
カキーン
したい!
統:引っ張りやがった
和倉:パシッ
濱:!?
和倉:七尾!シュッ
松原:はい!パシッ
実弥!シュッ
高松:パシッ
審:アウト〜〜
実況:ゲッツー!!!
スリーアウト
三塁側スタンド:らぁー
正宗:あざっす!
高松:さぁ決めようぜ!
〇〇:行くか…ふぅ
監:森田!
〇〇:はい!
監:ここまで来たら最後まで任せるぞ
いけるな森田
〇〇:!?
監:お前の気迫のこもったピッチング
これはチームを勢いづけてくれてる
必ず先輩達が打ってくれる
この場面を1年のお前に任せて申し訳ないがそれまで投げ抜いてくれ
〇〇:ブワ〜
わかりました。ボス
必ず抑えて戻ってきます
先輩達よろしくお願いします
俺はバックを信じてますから
結:ふっ
齋:おう!任せとけ
拓:お前のため最善ののリードをする
大:〇〇!頼むよ
〇〇:あぁ任せとけ
結:いくぞぉ
全員:しゃあ!
ウ:11回の裏、藤巻高校の攻撃は、
4番、キャッチャー、伊達君
拓:塁に出したくない
全力でいくぞ
腕を思いっきり振れ
〇〇:コク
あのミットさえ信じれば怖いものなんて何もない
バックには先輩達がいる
これだけ心強いことはない
そして、史緒里の為にも…
フン!
シューーー
カキン
審:ファール!
〇〇:ふぅー
統:重い…
〇〇:この空気にのまれるな
捻じ伏せろ
気持ちで!
ビューーー!
グイ
ドン!
審:ストライク!
拓:ここにきて…
球速が上がってきた
すげぇな
統:粘れる
カン!
ファール
ズバン
ボール
スパァーン
ボール
実況:際どい!
2ボール2ストライク。
まだピッチャー有利
拓:……………
〇〇:!?(ここで)
拓:解禁
"真カットボール改"
〇〇:ふぅ
拓:嫌いじゃないだろ?
こういうの
〇〇:この野郎…
監:御幸まさか…
竹:ん?
麻:御幸君、何かするつもりだわ
何するの?
拓:外れてももう一球ある
腕をしっかり振れ
ボールは絶対に捕ってやる
〇〇:……………
〇〇:今までの真カットボールに握りを改良とステップをクロスステップにそして、指先も追加することで大きな変化を生む
あのミットさえ信じれば今までより凄い球が
今よりもっと…
ザーッ
ぐぅ
ギュッ
ドン
小指、薬指を握って最後中指で擦れ!
ビュッ
ギューーーン
統:カットか
打てる!
グゥ
バチーン!
統:嘘だろ?
藤巻監:!?
雷道監:!?
麻:!?
竹:!?
観客:!?
史:!?
実況:空振り三振!!
統:曲がりが強くなった?
ここでまさかの新球種?
拓:ナイスボール!
〇〇:あざっす!
ミットだけを信じて投げました。
〇〇は手を見る
グゥーパァ
ウ:5番、ショート、大聖寺君
大聖寺:ここにきて新球種だと?
くそ、ただでさえここまでそんなに打ててないのにまた…
拓:あの一球で十分
相手の頭にあるうちに
仕留めるぞ
〇〇:コク
ふぅ
ンァシュ
ギュン
グイ
カン!
〇〇:サード!!
濱:パシッ、シュッ
結:パシッ
審:アウト!
観客:うぁらぁああ
〇〇:2アウト!
雷道ナ:2アウト
〇〇:やばいな
この言葉の真意は…
ウ:6番、ピッチャー、一条君
正宗:お前本当に凄いよ
拓:ムービングを
〇〇:コク
シュッ
ジューーーー
グイ
カン
審:ファール
正宗:相変わらず動くなぁ
拓:もう一球
グイ
バシン
審:ボール
ンァ!
シュルルーー
カキン
ファール
シュッ
バン
ボール
ギューーーン
カキン
ファール
〇〇・正宗:ふぅ、はぁはぁ
拓:最後、カットを…
〇〇は初めて首を振った
拓:!?
なら、スリーシームか…
〇〇はまた首を振る
拓:そういうことか…
このバッターには真っ直ぐで締めたいってことか
フォーシームか…
〇〇:コク
拓:最高のボールを…
〇〇:後1球あのミットへ…
ザーッ
ぐぅ
ギュッ
ドン
指先一点集中
"ココ"
オァラァあ!!!
ビューーーーーン
拓:いける…
スゥ
カッキーーーン
ドサ(誰かが倒れる音)
実況:打った〜
白球が高々と上がって伸びていく〜
センター齋藤が走る
齋藤止まった
もうひと伸びか?
正宗:いけーーーー!!!!
ガーーーーン
齋:えっ?
甲子園が静まり返る
そして…
観客:うぁああああああああああああああああああ
実況:サヨナラ〜!!!
劇的サヨナラホームラン!
打ったのはまさかの一条正宗!!!!
優勝は藤巻高校〜
正宗:しゃああああああああああああああああああ
藤巻ナ:正宗〜
藤巻ナインはベンチから全員飛び出していた
雷道ナインは1人を除いて全員グラウンドに突っ伏していた
拓:〇〇!!!!!
倒れたのは〇〇だった
拓:おい!大丈夫か!!!
〇〇:ウ………
御幸先輩打ち取れました?
拓:…………………
〇〇:まさか…
拓:そうだ…
サヨナラホームランを打たれた
〇〇:!?
〇〇はバックスクリーンを見た
すると11回裏のボードに1と出されていた
それを理解した瞬間〇〇は泣き叫んだ
〇〇:あぁぁぁぁぁぁぁあああああああああ
雷道ナインはベンチ、応援席も含め全員泣いていた。
誰も立てなかった
少し時間が経ち、選手たちが肩を組んで泣きながら整列し始めた
拓:〇〇立て。
〇〇の左手は震えていた
拓:お前もしかして…
左手が限界だったのか
〇〇:うぅぅ
すみません、指に力が入りません
拓:!?
なぜ気づけなかった
あの新球種が原因か
あの頃にはもう…
だから最後首を振ったのか
〇〇:首を振ってしまってすみましぇんでしぃたぁ
拓:くそ!バン
(限界は気づいていたのになぜあの新球種を選択をした)
(あぁ選ばされた時点で負けてたんだ)
審:整列!
3ー2で藤巻高校の勝利
"礼"
ありがとうございました。
観客:パチパチパチパチ👏👏👏
正宗:森田〇〇!ありがとう
ギュッ
(コイツ、力がはいってねぇ。まさか)
拓:すみません
コイツ怪我してるみたいです
正宗:まじか
統:ホントか?
拓:そうですね
変わりに俺が挨拶させてください
優勝おめでとう御座います
ありがとうございました
統:お前達強かった。
最後にお前たちと最後の試合で戦えてよかったよ
こちらこそありがとう
正宗:俺もギリギリだった
森田〇〇、甲子園でお前と出会えて、投げあえて
最高だった。お前はこれから最前線に立つ投手になるに違いない
また成長して逢えることを楽しみにしてるよ
〇〇はもう記憶がなかった
◯母:あの子大丈夫かしら
◯父:結構メンタルきてるだろうな
でも、俺達は見守ってあげよう
アイツならきっと戻ってくる
◯母さん、〇〇に帰省するように連絡入れといて
家で待っていよう
◯母:そうですね
美味しい料理作っておこうかな
史:〇〇大丈夫かなぁ
史母:本当惜しかったわね
史:〇〇のことを考えると涙が止まらないグス
なんで今、そばにいられないの
悔しいよ…グス
史母:〇〇君に連絡しといたら帰ってきてって
その時に話をしなさい。
〇〇君が全国でモテモテになったでしょうね
史:もう言わないで
史母:あなたからは甲子園のことについて聞かないこと。わかった?
史:はい。わかったよママ
史母:連絡しておいで
史:はーい
それからというもの
〇〇はインタビューを拒否させてもらい、主将が代わりに受けた
ベンチ裏
〇〇:ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい
俺のせいで優勝できず………グスグス
全員:………
拓:とりあえず病院に行くぞ、大谷も
大:あっ、はい
西:えっ?アイツ怪我してたんですか?
齋:はぁ?
春:そんなことは…
竹:俺が話そう
〇〇は左手に力が入ってない
4番相手に投げた新球。
あれが全てだった
だから、後の2人は気力で投げてたらしい
最後の一球を投げた後、知らないと思うが
〇〇は倒れた。
雷道ナ:!?
西:だからアイツ御幸に肩を持たれていたのか
(くそっ!その前に俺たちが点を取ってやれてればこんなことは起きなかった)
春:僕が打ってれば…グス
齋:哲人戻ってきたか
森田怪我してたらしい
結:ホントか?
齋:あぁ…
結:俺たちが打ってやれなかったことが敗因だ
アイツは最高のピッチングをしてくれた
責めることなんてできやしねぇ
てか、してはいけない
この甲子園。
1年に救われた
先輩として何もしてやれなかった
それが一番悔しい
監:全員着替えてバスに乗れ、ホテルで最後のミーティングをする
その日からテレビやラジオ、ネットニュース、SNSなど全ての媒体で甲子園の決勝が流された。
そして、ネットでは〇〇に対して賛否両論の意見がなされることとなった
「もう限界だったんだろ?早く交代すべきだ」
「なぜあの選手をマウンドにあげたんだよ」
「あの時点で雷道高校の負けは確定していた」
などと批判声が出たが一方で擁護の声の方が圧倒的だった
「あの森田って選手、最後打たれちゃったけど
かっこよかった」
「あの投手は次の世代のNo. 1投手だろ!」
「私も釣られて泣いちゃった」
「最高の試合をありがとう」
タクシーの中
大:お疲れ様。
〇〇:あぁ
大:負けちゃったな
〇〇:あぁ
大:グッ
悔しいのはお前だけじゃないからな!
俺だって悔しいに決まってんだろ!
投げたくても投げれなかった
俺がもう少し投げてればこんなことになってなかった!
何お前だけで背負い込んでだよ!
〇〇:…………
"ごめん"
あんな大口叩いといて情けないよな
俺たちのせいで雷道を優勝させれなかったってことだよな
大:そうだよ!
単純に力がなかったんだよ!
麻:2人ともそこまでにしなさい
すみません。
運転手:いえいえ
私も車のラジオで聴いてましたよ、
麻:えっ!
運転手:2人とも試合出てた子でしょ?
今、話していたことは他の選手たちの前で絶対に言っちゃいけないよ
頑張った選手に失礼になる。
あと誰もそんなことを求めていないし、聞きたくもないはずだよ
あとね、おじさん聴いてて久々に興奮したよ
あの頃を思い出して懐かしくなった
お礼を言わないとね。ありがとう。
〇・大:………
運転手:誰もあなたたちを責める人はいない
もし責める人がいたら無視をしなさい
あの試合を見て責める人はそういう人間だと思いなさい
あの試合は全国の野球ファンのの心に響いたはずだから。私もその1人だけどね
また1年頑張りなさい
来年待ってるよ
〇・大:ありがとうございます。
麻:すみません。ありがとうございました。
運転手:いやいや本当のことを言ったまでだよ
それから数日が経って
雷道高校は4日間の長期休暇となった
甲子園決勝
石川代表 藤巻高校 vs 西東京代表 雷道高校
3ー2
藤巻高校2連覇達成!!
雷道高校準優勝
長きに渡る夏の甲子園大会が幕を閉じた。
そして3年生は引退した。
To be continued…
次回から4話分特別編を出します
それが終わり次第、新シーズンスタートです
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