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あのミットに向かって2nd 3話(63話)

明日に控えた初戦の為に雷道ナインは今日も練習していた。

監:ポロポロするな!
それで明日勝てるのか?
カン!

西:んニャロ!バシッ、シュッ

監:カン!

春:はぁはぁ
ザーッ

監:こんなもんか!はぁはぁ
これでは甲子園の二の前になるぞ!

春:来いや!

監:カキーン!

春:兄を超える!
ザーッ
バシッ
シュッ

監:センター!
カキーン

奥村:バシッ

拓:バックホーム!!

奥村:ンァ!

ビュー

拓:バン
ナイスボール

監:無理に直接バックホームしなくていい
ワンバンでもいいし、繋げてもいい!
無理に純みたいなことはしなくていい
求めていないからな
その時の状況を瞬時に判断すること
これは外野全員に言えることだ!

外野陣:はい!

監:無理に投げてボールが逸れ、点を与えたら元も子もない。でも、相手に肩が弱いとも思われたくない。打球が浅いなら絶対に直接がいい。深いなら繋ぐ。そこを徹底的にしよう。いいな!

外野陣:はい!

監:ラスト!キャッチャー!

カキーン!

真上に高く上がった…


拓:俺たちは皆等しく挑戦者だ

パァン

試合前最後のミーティング

監:俺がお前達にこの1年をかけてやって欲しい事はそれぞれの守備の範囲を広げる事
足1歩分でも半歩分でも構わない。
範囲が広がればそれはチームにとって良いことだ

1人の守備範囲が広がればそれだけ投手も信頼して投げることができる

簡単に塁に出すこともなくなる

自分の今の守備範囲をイメージしてみろ

今は各々狭いはずだ

それが1年後全員の守備範囲を広くしてみろ!

ひとつの円にならないか

全員:!?

監:俺はそれを目指している
お前達なら出来るはずだ
全員でコツコツ積み上げていこう!

全員:はい!

拓:ありがとうございました。

全員:ありがとうございました。

小笠原:春一シート行くか?

春:はい!行きます!

高津:やっぱり甲子園出て結果残すだけのことはあるよな

村上:俺たちも負けてられないよな
〇〇と健吾、春一に全部持っていかれちゃ困るからな

高津:俺はティーバッティングするけど賢次郎どうする?

村上:俺もやる!

二宮:小野先輩!

小野:どうした?

二宮:〇〇と健吾の球って受けたことありますか?

小野:あぁあるよ
でも、2人とも違う個性過ぎてどちらの球も初見では全く捕れなかった。
今でもアイツらの球捕るとき緊張するよ

二宮:そんなにですか?

小野:俺もある程度捕手として磨いてきたつもりだ
それでも、あの2人の球は全てを打ち砕いてくる程だった

二宮:……………

小野:二宮がアイツらの球受ける時は俺も加勢する
今はある程度捕れはするからな

二宮:ありがとうございます。心強いです。

アイツらいつまで走るんですかね?

小野:最近ずっとあれだからな

〇〇:あぁああ!早く投げてぇ!

大:それ言わないで!俺も投げたくておかしくなりそうなんだから

〇〇:キャッチボールもダメってどういうことだよ

大:それは同感

〇〇:本当にダメなんかな?

大:あの約束守らないとあの医者に殺されるぞ
あと、監督からも俺たちあの後怒られたし

〇〇:そうだなぁ

大:後、数日の我慢って思って今は走るしかない!

ダダッダダダダー

〇〇:あ、おい!待てやぁーーー

麻:本当面白い

佑美:あれはただの野球バカですよ

美月:私は好きだけどな〜

佑美:美月は小悪魔だからな
まぁアイツらには見向きもされてないけどね

美月:佑美!そこは誰にでもって言ってよ

麻:貴女達も仲良しね

佑美:まぁずっと一緒ですからね
後は後輩ちゃん達をどう指導していくかですね

遥香:佑美先輩、美月先輩終わりました。

さくら:はぁはぁ

美月:走ってこなくてもいいのに

遥香:〇〇君達も走ってたので

さくら:私達もつい…

佑美:ちょっと意味がわからない
アイツらの真似したら負けだからね

さくら:そうなんですか?

美月:この2人は超がつく程天然だわ

佑美:私達も選手のサポート頑張りますか
沢山見て、吸収してね

遥香・さくら:はい!ありがとうございます

美月:佑美ずるいぃ
私も後輩ちゃん達に言われたい

佑美:そんなことで張り合ってくんなよ

麻:マネージャーもチームの一員だからね
選手達はプレーでマネージャーに応える
マネージャーはサポートで選手達に応える

それが強いチームよ

4人:はい!

麻:もう遅いし、明日は試合だし、今日はあがろっか?

4人:お疲れ様でした。

麻:はい、お疲れ様

さぁてあのランニングバカ2人をどう部屋に帰すか?

拓:麻衣ちゃん

麻:御幸君ね
あの2人どうしようかと

拓:おい!お前らもう上がれ!

〇〇:え〜

大:もう少し

拓:ダメ!
明日出れないからって走り回るなよ

〇〇:これでしか鬱憤は晴らせないですよ

大:うんうん

拓:監督にまたオーバーワークしてますって言ってやろうか?

〇〇・大:!?
それはダメ

拓:ならストレッチして上がれ

〇〇・大:は〜い…

麻:御幸君のことは言う事聞くのね

拓:いや違うよ。監督の名前出せばアイツら2人には効果的だから

麻:御幸君怖すぎ

拓:えっ、引かないでよ


秋季東京都野球大会予選開幕
24ブロックに分かれる為、会場が多くあり、雷道高校も会場の一つとなっていた
そして、甲子園準優勝したことによりメディアや偵察班、観客らが大勢、雷道高校に押し寄せてきていた。

〇〇:いつもより人多くないか?

春:それは甲子園準優勝したからじゃないかな?

大:そんな効果あるんだね

拓:でも、残念だよな。この2人予選出ないし
大体はお前ら見に来たに違いないからな

〇〇:そうなんすか?

大:何かしましたっけ?

拓:出た!鈍感
なんか腹立つわ

大:〇〇のことだ

〇〇:お前も入ってるだろ!

西:何遊んでんだ!ギュッ

〇〇:痛い!痛いっすよ西野先輩

西:御幸!監督が呼んでたぞ

拓:わかった!
すぐ行く

拓:監督!来ました

監:今日の先発は九条だ
お前が引っ張ってやれ

拓:はい!

監:わかっていると思うが、偵察も沢山来てる
俺たちが隠す必要ないよな?
俺たちはテッペン獲っていない
と言うことは

"挑戦者"

遠慮なく見せてやれ!

拓:はい!
失礼します。

拓:全員集合!

全員:おっす!

監:先発は九条

九条:はい!

監:お前のできることをしっかりやれ
お前は自信を持てば強豪相手にも通用するからな

九条:はい!

拓:いつも通り投げれば何の問題もないからな

九条:ありがとう

監:今日のスタメンは

1番、遊、西野疾風
2番、中、奥村源
3番、二、町田春一
4番、捕、御幸拓也
5番、一、小笠原世那
6番、右、橋本静哉
7番、左、鈴木正尚
8番、三、山﨑遥斗
9番、投、九条幸四郎
記録員、若月佑美

これで行く!

春:頑張ろうね鈴木君

鈴木:そうだな
一年は俺たちだけだからな

高津:くそ、次の試合だ

村上:試合でたいな

予選は2回勝てば、10月の本戦に出場出来る

1回戦、公立世渡高校

試合は雷道高校有利で進んでいた
4回終了時、5ー0

観客:勝って入るが、何か物足りないよな

そうだな

甲子園組が活躍してるとはいえ新鮮組が繋がらないな
九条は無失点だけど守備に助けられてる感じだし

それは周りから見たら明らかだった
奥村源、2打数0安打1犠打
小笠原世那、3打数0安打1打点
鈴木正尚、2打数1安打
山﨑遥斗、2打数1安打1失策
九条幸四郎、4回、50球、5安打、2四死球、1三振、0失点

美月:今日はダメだね

さくら:そんなにですか?

遥香:勝ってるのに

美月:苦し紛れの得点が多い
声も思ってるより出てない

麻:ダメですね

監:あぁ…
後藤、高津、大山、村上、5回から交代だ
準備しろ

4人:はい!

監:小笠原、奥村、鈴木、山﨑、交代だ
何がダメなのかそれぞれ考えろ
俺が目指している野球をお前らはやっていない
ただ野球をしているだけだ
そんな奴らにチームを代表する選手として出すつもりはない

4人:…………

監:試合してる側はわからないかもしれないが周りからしたら一目瞭然

吉田!美月を呼んできてくれないか?

吉田:はい!
タッタッタ

美月!監督が呼んでる

美月:わかった。

吉田:連れてきました。

監:美月、この試合これまで見てきて何か思うことあるか?

美月:声が出てません

監:ありがとう。それが聞きたかった
戻っていいぞ

美月:失礼します

監:気づいてたか?

4人:………

監:だろうな
今の段階でプレーに対して多くのことは求めていない。

だけどな!
野球として当たり前に声を出すことや野球に対する態度がなってないから交代させたんだ!
わかるか?
声出すことはそんなに難しいか?

4人:いいえ!

監:お前ら今まで先輩達の試合を観てなかったのか?
地区大会の決勝や甲子園での接戦の時、苦しい時程アイツらは声を出していた
俺は常に

"雷道らしい野球を"

と全員に伝えていた筈だ

「キツい時こそ声を出せ」

当たり前のことを当たり前のようにやる
それがどの場所でも出来ればそれが1つのルーティンとなり緊張が緩和し、野球がより楽しくなる

今のお前らは当たり前のことが出来てないんだよ

お前らはベンチで観てろ!

佑美:あんた達、どうせ1回戦だからって相手を舐めて試合に臨んだんでしょ
御幸君の最初の言葉忘れたの?

4人:!?

拓:甲子園準優勝はただの肩書きでしかない
  試合では何も意味もなさない。
  勝つことには常に貪欲でありたい

佑美:1番目の前で悔しい思いをした御幸君が次の目標を口にした。それを踏みにじってる

それがあなた達の打席の結果に繋がってる
頭冷やした方がいいよ

4人:すみませんでした。


それから交代した選手達が躍動し、
10ー0の5回コールドで雷道は初戦を勝利した。

しかし、選手達に笑顔は無かった

監:新チーム初戦どうだった。御幸

拓:今回は勝てましたが、これが上の相手に通用するとは思いません。選手それぞれが同じ方向を向いていない。チーム自体がバラバラなのが原因かと

監:そうだな。
これだと本戦に行ったとしても勝ち上がれはしないな。

全員:………

監:今のチームはお前達が作るんだ
俺の言葉で動いたらそれはただの駒でしかない。
もっと頭を回転させろ。自分で考えろ。何をこの時プレーすればいいのか、何をしたら相手が嫌がるのか、それを含めて野球だ
それを学ぶための試合にしてくれ。いいな!

全員:はい!

この後、もっと大変な事が起きることをこの時は誰も知らない

次回、雷道がまさかの予選敗退!?
監督の怒号が飛び交う!

To be continued…

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