カメラを持って出かけよう


フィルムを詰めて、カメラを持って出かける。
夕方、今日はいい光になりそうだなー。なんてふらっと。

カメラを持って出かけると写真を撮る目になる。
ずっと連続で何枚も絵が流れてくるみたいに景色が見えてきて、
平面になった目の前の現実を想像する。
街に出る時は50mmの短焦点レンズがいい。
近くて、遠くて、小さくて、大きいから、足を使わないといけないのがいい。

財布は持たずに、ポケットに千円札一枚だけ忍ばせておく。
久々にタバコでも吸ってみるか。なんて、コンビニでタバコを買う。
余計なことをしたい時は調子がいい時だ。
何かにワクワクしている。
公園の近くにあるかき氷屋さんでイチゴのシロップのかき氷を買った。
公園で食べた。
隅っこの方で水色のハイライトからタバコを一本取り出して吸う。
あんまり美味しくなかった。
大抵は、久々に吸うタバコはガツンときてたまらないねー。
となるのだが、今日はあんまり美味しくなかった。
このタバコは英雄くんにあげよう。

砂場では子供が遊んでいて、滑り台は薄い紫と黄緑というファンシーな配色に塗り替えられていた。
そのそばで、アイドル風の女の子が二人、交互にお互いをチェキで撮りあったりしていて
普遍的な公園の姿に少しだけ時代の酸味が効いているような面白い景色だった。

何かライブでもやっていないだろうか。
と街をふらっと歩く。
アメ村という場所はその昔、割と本気で地域全体を音楽の街にしようという動きがあったみたいで、至る所にライブハウスがある。
どこか行けば何かやってるだろうと何軒か回ってみたが、特にライブがやっていそうな様子もなく、ポケットに千円しか入ってないし、電子マネー使ってライブ観るのもなんかちょっと気分と違ったので諦めて湊町(なんばはっちの方)に向かった。

道頓堀の川が流れている両脇をなんとかしてお洒落にしようと頑張っているのだが
どうやっても道頓堀は道頓堀で、休憩しやすいようにと花壇の周りに少しだけ座りやすいようなスペースがあるのだけれど、それもストリートスケーター達のグラインドの餌食となって割れまくっていた。
妙に小綺麗なせいで、逆に汚れが目立つ感じになっていてそれがまた大阪らしくて面白い。
夜中はきっと酔っ払いの終点になっているんだろうと思う。

漫才の練習をしているコンビが何人かいて、少しだけ人目を気にしながらネタ合わせをしている様子もまた風情がある。
大阪とはこうでなくては。

ぼーっと、街の音を聴きながら溶け出してゆくいろんな感情を眺める。
日が沈み、出過ぎた紅茶みたいな濃いセピア色になってきた。
今日は感度100のフィルムしか入れていないので、自然光で撮るのはそろそろきついかなー。

なんて思いながら、席を立ってラボに向かった。

数枚しか写真、撮らなかった。
無限に撮れないからこそいい。
別にシャッターを押したタイミングも今日のダイジェストってわけじゃない。
もっともっと、端っこの方にあって忘れちゃってるような写真だ。

まず、家を出た時の廊下の写真。
傘が廊下の突き当たりに干してあって、その並びが可愛かった。
そしてかき氷屋さんの写真
公園について、3つ並んだ石のベンチの真ん中にかき氷をおいて写真をとった。
それから、自分の靴下の色が黄色で可愛かったのでそれを撮って
路駐してる自転車の鍵の曲面が綺麗だったのでそれはあえてフラッシュをたいて撮ってみた。

36枚しか撮れない、という人もいるけれど
36枚も撮れると自分は思う。
自分が切ったシャッターのことをなるべく覚えておきたいと思う。
その時の絞りとかシャッタースピードとかもなんとなく覚えてる。
廊下の写真は f1.4で1/60で撮ってる。
これは狙ってそうしたというよりは、この設定じゃないと厳しかったから。

アナログのいいところはとことんまで人が機械に合わせるところだ。
デジタルは便利でいい。だけど、機械が喋りすぎるときがある。

ぼんやりと歩きながら、カメラの目で世界を観ると現実がどれだけ色とりどりで豊かなのかがわかる。
視覚だけじゃなくて聴覚も触覚も臭覚も全てを使って自分がそこにあるということが思い出せる。

世界は今、たまたまとても平和で絶妙なバランスでもってまだまだ美しく優しい表情を見せてくれる。
愛するということには思うに、視点が必要だと思う。複数の。
自分の目の高さでは見えないようなところに誰かの心がそっと隠れていたりする。
そういう瞬間を感じることは、別に道具がないとできないわけではない。
自分は、表現をするということを生業としているけれど、むしろその逆の表現を体感するということの方が
表現自体の根幹なような気がしてならない。
与えるということは受け取るということでその逆もまた然りなのだな。
なんてわかってたことをもう一回確認する。
忘れるから何回だって確認すればいい。

今日はそんな風にしてまったり過ごしました。
楽しい1日だったのう。

POS部屋はこちらへ→https://www.mori-no-heya.com/
POS部屋とは、、、
Project Open Source Roomの略。
そもそもは、アーティストたちがひとつの場所に集ってアイデアや表現を出し合ってそれを共有しながら面白いものを作っていきたい。
という思いから始めようとしたプロジェクト。
結果的に、紆余も曲折もやんわりと経ながら単純に森良太が表現したいことを表現するだけの場所になりました。
シンプルにいうとファンクラブ。
だけど、ファンクラブと一言で括ってしまいたくない思いが絶妙な塩梅でProject Close Sourceな現状を生み出している、WEBの孤島。
そう、ここは楽園。