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気の利いたタイトルが思いつきませんでした。

3年3か月ぶりのアルバム発売、おめでとうございます。待ってました!というよりは、あれ?もう3年なの?というのが素直な感想です。音楽の知識は皆無ですが、私なりに書いてみようと思います。

01. 料理
配信されたのは午前0時。布団の中で胸が高鳴るのを感じながら再生ボタンを押しました。最初のイントロからユキチカさんが踊るのが見えました。(私はユキチカステップと呼んでいます。)疾走感のあるギターのメロディが大好きです。「愛の標識」とか「ウワノソラ」にも似たような印象があって、クリープハイプの曲だ!って思うあの感じです。伝わるかな。Aメロの「ぽこん」っていうかわいい音が印象的でした。なにかが湧いたようにも、何かが弾けたようにもきこえる。仲良く同棲している2人のお話かな?と思っていると、後半にかけてやや不穏な雰囲気に…。
「なぜか腹が減る こんなに悲しいのに」 という部分
メロディも尾崎さんの歌い方も歌詞も、言葉にならないほど好きです。
悲しいときも嬉しいときも、生きてればお腹はすくし、お腹がすくからこそ、確かに生きているという事を実感するな、と改めて思いました。
誰かと一緒にご飯を食べられるということが幸せと思える人でいたい。


02. ポリコ
よごれモンのエンディングでしたね。初めて聴いたときから耳から離れなくて、汚太郎たちのダンスも相まって、サビの部分をずっと繰り返し歌っていました。キャッチ―でつい口ずさみたくなる曲でした。
歌詞を改めて読むと、
ポリコが曲がったやさしさの先には何があったんだろう。
最後だけ「ぽり子」になっているのはなんでなんだろう。といろいろ疑問がわいてきました。もしかすると、ポリティカル・コレクトネスにかけてるのかな?どこかでそんな発言していましたか?
言葉をファッションとしてしか使ってない人たちへの皮肉や、なんでも発信できるからこそ、SNSリテラシーが必要になっていくことへの警告とか。読めば読むほど、うまく歌詞に隠れたメッセージが見えてくる気がしました。中立的な言葉、大切だけどなんでもかんでもそうすればいいもんじゃないよ、私は馬鹿だからすぐ忘れちゃうし、歌ってるくらいがちょうどいいな。


03. 二人の間
ダイアンさんに書き下ろしたということで、どうしても芸人さんの姿が浮かんできますよね。あ、うんの呼吸。互いに信頼関係があるからこそできるテンポは、コンビごとに異なっていて、それがそのコンビ(またはトリオ)の良さだったりします。曲の中に直接的な表現は一切ないのに、なぜかその雰囲気が伝わってきました。最初の 「っとととととと!」っていう打ち込みの音が好きです。[ウン…タン ウン…タン]っていうテンポも相槌やボケとツッコミを想像させる素敵な編曲だと思いました。


04. 四季
「年中無休で生きてるから 疲れるけどしょうがねー」 ←
めっちゃわかる!
タクさんのドラムが心音っぽくて、冒頭からもう、爽快ですよね。なんだか春先の街が浮き足立ってる雰囲気が見えました。四季折々にテンポや曲調がちょっとずつ変わるのもおもしろいです。生きてるのって休めない、ほんとに。問答無用で生きてるって感じ。なにをどう頑張っても朝がくるし、始まりがあれば終わりがある。今のところ生きることを終らせるつもりはさらさらないけれど、突然、あぁ!もう終わりにしたい!もういい!って感情が爆発するときがあります。でも同じくらい生きててよかったって思える時があるんだから、やっぱり生きることはやめられないですね。


05.愛す
言わなくても伝わると思ってるの?言わないと伝わらないからちゃんと大切なことは言葉で伝えてよ、思ってるだけじゃわかんないよ。と恋人とぶつかったことがあります。この歌の中の人はそれを後悔している。小さな癖さえも愛おしいくらいに相手を想っていて、もう戻らないってわかっているのに最後まで言えない、それはプライドなのかな。それでもいい、仕方ないって思えるくらいの愛だったとしたら本当に寂しい歌だと思いました。経験したわけじゃないのに、なんかこんなことあったような…って自分の思い出をかすめていくから、少し胸が苦しくなりました。


06. しょうもな
これでもか!ってくら言葉遊びがあって歌っても聴いても楽しい曲。
最初のポロンポロンって音、初めて聴いた時はカオナシさんがカリンバを演奏している様に聞こえました。冒頭のゆっくり刻まれるテンポはなぜか時計が進むようにも思えて、ギターとドラムの音が聴こえたと思えば、最後までスピード感のあるメロディに遅れを取らない歌詞。ずっとやけくそなんだけれど、「お前だけに用があるんだよ」っていう歌詞が最後は「世間様にいつか届きますように」って変化してるのは、特定の誰かだった「お前」がその他大勢と一緒になったのかな、「いつか」っていうのも、きっとすぐに連絡取れるような近い関係性じゃなくなったんだろうなって、感じられました。言葉ってすごいな、ほんとに。
昔付き合ってた男がDV気味で、でも好きだったから我慢してて、結局、共依存になってしまって。私が引っ越すタイミングで別れましたが…。なんかそれを思い出しました。私は好きだったけど、あんたは私のこと好きだった?


07. 一生に一度愛してるよ
ファンに向けたラブレターのような歌をアルバムの7曲目にいれてくるあたり、「やってくれたな!」ってニヤニヤしちゃいましたよね。シングルカットされた「四季」「愛す」「しょうもな」の後に、この曲ですよ?「絶対に聴けよ」「心して聴けよ?」って言われているような気がしました。そして、メンバーの「1.2.3.4」のカウント…!痺れますね。聴こえるか聴こえないか、控えめな音なのも好きです。なんだろう、1音も逃したくないと思って無意識に集中してしまう。
「と思ってたよ」の歌い方可愛すぎませんか?語尾に♪が見える…。バンドには変化を求めて、恋人には安心を求める。きっとバンドは娯楽としての必需品で、恋人は人生の必需品だからそう思っちゃうのかな。これ、彼氏がバンドマンだったらどうなるんだろう、彼女も安定した日々の退屈を幸せと気付けないタイプなんだろうか、とかちょっとだけ心配してしまいました。(お節介すぎる)
売れれば売れるほど外野の声が大きくなるけれど、それにanswerを出してくれたような歌。推しが丸くなってもいいじゃない。その変化すらも愛おしいよ。推しが幸せなら私も幸せだからいつまでも幸せでいてほしい。何度でもドキドキさせてくれるあなたたちに出会えてよかったです。安心して、変わらずそこで歌い続けていて欲しい。出会ったあの日は1019でした。


08. ニガツノナミダ
締め切りも制約も、誰かに必要とされているからこそついてくるものだと思います。数年前、「今まで必死に追いかけていた音楽というものに気づいたらいつの間にか追われていて、一度でも追い抜かれたらもう終わり。今いるのはそんな世界だ。」って言っていた尾崎さんが印象的でした。あの頃よりかはうまくやれていますか?
この曲はやっぱりバレンタインが浮かびます。厄介な行事ですよね。学生時代に好きな男に渡したくて渡せなくて、仕方がないから男の自宅のポストに詰め込んで帰ったことがあります。顔を見られたくないからめちゃくちゃに変装していったんですけど、後日、不審者としてほかの人たちの話題に上がっているの聞いたときは生きた心地がしませんでした。あの頃のドキドキとか、恋の駆け引きとか、もう味わうことができないと思うとなんだか寂しいけれど、母として、残りの余生を楽しみたいと思います。


09. ナイトオンザプラネット
このアルバムの表題曲。尾崎さんにとってもいろいろと思い入れのある曲で、なんだか親戚の子どもくらいの可愛げのある曲です。聴けば聴くほど深みにはまってきて、味わいがでてくる。するめのような曲ですね。早口でラップのように歌うのが印象的でした。まだ生で聴いたことはないですが、もしライブで流れてきたら、「噛まないかな??尾崎さん、いけるか?落ち着いて、大丈夫だからね。あぁ!間違ったりしないかしら!」と変なところが気になってしまいそうなので先に謝っておきます。すみませんでした。


10. しらす
長谷川カオナシさんの曲。もうイントロで「あ、カオさんじゃん」ってなりました。鈴の音?が耳心地よすぎてほっとします。「しらすのお目目は天の川」という表現。しらすは1匹で見ることって少なくて、大体何匹もの塊で見ますよね。だからたくさんの目が星のように見えて、それが流れるように体に取り込まれていく。だから天の川なのかな?なんてことを思いました。まあ、なによりあの踊りがかわいすぎる!カオさんは自分がかわいいことをもっと自覚してください。ライブでみんなで踊りたいなぁって思います。声が出せないから踊っちゃおうぜ、みたいな。曲調もそうですが、歌詞も素敵なので「みんなのうた」とかで採用されたらいいのにって思います。”にんげんっていいな″の画風でアニメにしてほしい。これは私の願望です。


11. なんか出てきちゃってる
なにがでてきたんだろう。歌詞が少ないのでひたすら後ろの語りに聞き耳を立てていますが、何回聞いても「あ~引っかからなかったか」の言い方が好きで好きで…。尾崎さんの低い歌声が好きすぎるのでもはや唐突に表れたご褒美曲です。本当にありがとうございます。ライブで演奏されることがあるとしたらどうなっちゃうんだ~~!?(トムブラウン風)です。


12. キケンナアソビ
キケンナアソビのMV公開時、まさかのR-18指定でyoutubeに制限されるという事態。尾崎さんの「こっちは遊びのつもりだったのに」発言には、緩むほほを抑えられなかったです。
イントロはお祭りのような陽気さもあるのに歌詞は全く陽気じゃない。そんなクリープハイプが生み出す違和感が好きです。最初は「じゃあ気を付けて」って突き放しているのに次は「それだけで良いのにな」っていいながらも 「って嘘だよ」の一言で全部ひっくりかえす感じ。少しずつ体だけじゃなくて心も欲しくなってくるんだよなぁ。浮気相手でいるうちは相手の彼女(彼氏)に対して優越感にも似た感情を持っているけれど、そんな関係で自分のものにしても、今度は立場が入れ替わって(いつか誰かにとられるんじゃないか)って自分が不安に苛まれることになるので、略奪愛には気を付けましょうね。

「しらす」「なんか出てきちゃってる」「キケンナアソビ」の3曲の流れは、異世界に放り出されたような感覚になりました。ちゃんと帰ってこられたかな。


13. モノマネ
「ボーイズENDガールズ」
の2年8か月後という細かすぎる設定、好きです。「ボーイズENDガールズ」では、一緒に住んでいなかったけれど、「モノマネ」では、同棲している。いつもとおんなじ道を歩いて、いつものおんなじ空を見ながら同じ家に帰って一緒にお風呂に入る。この2人の付き合いは短いものじゃないことがわかります。でも、近くにいる時間が増えたからこそ、見えてくるものもある。「おんなじ」が増えて分かりあった気になっていても、ふたを開けてみれば、結局なにもわかってなかった。「どこにでもある毎⽇が 今もどこかで続いてるような 気がして」の歌詞からは、2年8か月たった今でも生活の中に恋人の影を感じて失恋をまだ引きずっているのが伝わってきました。余談ですが、「ボーイズENDガールズ」は、ボーイズとガールズの間にENDをいれることで、この2人には終わりが来るということを表しているのかな、と思いました。あと、「シャンプーの匂いが消えないうちに早く会いに風が吹いても」という歌詞。「早く会いにきて」なのか「早く会いに行くよ」なのかわからないけれど、言い終わらないうちに次の言葉が入ってくることで、はやる気持ちを表現していると捉えました。好きです。
私も生活の中のふとした瞬間に別れた恋人を思い出すことがあります。それはいつも“匂い”が引き金となって、忘れていた記憶も、忘れたい記憶も無関係に思い出す…というよりかは、海馬から引っ張りだされる感じです。ほんとに言葉や写真よりタチが悪いなって思います。その思い出した時の「はぁ…」ってなっちゃう感じ、あれ、いつになっても慣れないなぁ。


14. 幽霊失格
なぜだかわからないけれど、この曲の幽霊は死んでないような気がします。生霊的な?それかこの人の妄想。生身の人間じゃないんだけれど、でも死んでないというか、そんな曖昧な状態。「写真にだけ写る美しさ」の部分、幽霊が写ったものは心霊写真として忌み嫌われると思うのですが、この人は写った写真すらも美しいと思う、恨んでいてもいいから成仏しないでほしいと願う。それほどまでに幽霊になった君を思い続けている。思い続けているのに触れられないというのはどんなに苦しいことか。尾崎さんがTwitterで投稿された「僕が人間失格なら、君は幽霊失格だ」という言葉。たった1文だけれど、僕から君への精いっぱいの恨み辛みが込められている気がしました。


15. こんなに悲しいのに腹が鳴る
アルバムのラストにふさわしい、たらふくお酒を飲んだ後のあったか~いお茶(ほうじ茶なら尚良)のような曲です。
どんなときでも、等しく腹は減る。嬉しいときも、悲しいときも。
「料理」
で始まり、この曲で終わる。今回のアルバムの裏テーマとして「食べること」があるのかな、と思います。「食べること」は「生きること」に直結していて、誰しもが避けて通れない。「死ぬほど生きたい」の歌詞、感染症のせいで世界が変化して、やりたいことを思うようにできなくなって、発信者側としての死を感じたのかもしれないと思いました。「何か食べたい」と思えるうちはきっと大丈夫です。

ライナーノーツとしてこれは機能しているのか疑問ではありますが、尾崎さんの言葉に背中を押されて書くことを決めました。彼らの音楽や言葉には、いつも支えられてばかりです。少しでも感謝を返したい、伝えたいと思いながら、今日もクリープハイプの音楽に浸っています。あなたたちに出会えてよかった。

#ことばのおべんきょう