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「刺さる」ゆるイラストを考える/絵が苦手でも簡単に描けるイラストの作り方(1)

割引あり

よくこの仕事をしていると「絵を描くのが苦手です」と言われることがあります。その発言の背景には「イラストを勉強するほどではないけれども、もし、イラストがサラッと描けたら楽しいだろうな」と感じている方が多いと見かけます。確かにイラストがさらりと描けると、色々なものがふわりと便利になります。ところが多くのメリットの割に、皆さん描こうとしないのが現状です。とても、もったいないです。メリットの中でも大きなものが二つあります。

ひとつはイラストを使えば、わかりやすく何かを伝えることができます。絵で説明すると相手の理解が進みます。言葉では難しいものを図解して伝えます。何かの仕組みを図解するだけでなく、人のややこしい、伝わりにくい感情もイラストを通すことで、感覚的に伝えることができるのです。これは仕事でとても役立つ知識です。最近も人の認知能力が明らかに低下しているので、視覚的に説明できる人はとても重宝されます。

もうひとつはイラストは相手の気持ちを穏やかにしたり、楽しく変えることができます。もちろん文章でもできますが、イラストを使うと文章よりも簡単にスピーディーに相手の心を穏やかにすることができるのです。今のより中は、余裕がなくてギスギスしています。他人の心を穏やかにできるツールは、とても使える武器になります。

ではその具体例をひとつ
下記は仕事でお客様に書いた挨拶文です。書いてある文章は同じです。

ぱっと見ても右下にイラストがあるだけで、まず右側を読んでみたいと思う人が多いと思います。左は何が書いてあるかわからず、人によっては面倒に感じたり、不安に思う方もいます。これは会社の挨拶文で、担当が変わったことを伝えるものです。「よろしくお願いします」という気持ちをイラストがわかりやすく伝えてくれることに加えて、読んだ相手が(読む前から)柔らかい感情をイラストが促進させてくれます。

イラストを使えるようになると、便利なことが多くなります。
絵を仕事にする人だけでなく、どんな仕事でもメリットがあるはずです。

そして、リアルで複雑なイラストは勉強や練習に時間がかかりますが、誰でも描ける「ゆるイラスト」でしたらポイントを押さえさえすれば、簡単に描けるようになります。

そこで心理学と色彩心理学の知見を活用した、ゆるキャラを描く講座を色彩研究会マガジンにて、2回に分けてお届けしたいと思います。初回は「刺さるイラストのポイント」、そして2回目は「基礎的な描き方手順」「絵心をあげる練習方法」についてまとめます。最初に「基礎的な描き方手順」ではなく、「刺さるイラストのポイント」を勉強するのが大事です。先に基礎をやってしまうと、楽しくないと感じてしまう人が出てくるからです。ここにも心理学的なコツを入れておきます。イラストに興味ある方は、ぜひ色彩研究会マガジンを購読していただきたいですが、このコンテンツだけでも読めるようにしておきます。また、イラストを描こうと思わなくても、この原稿には心理的な複数の知見が入っています。これを知っていると知らないでは、大きな違いがあります。

1回目「刺さるイラストのポイント」本原稿

2回目「基礎的な描き方手順」「絵心をあげる練習方法」

特別、イラストが上手でもなんでもないポーポー・ポロダクションがイラストの仕事をしているのは、いくつかのコツを体得しているからだと思います。この講座ではそのコツをみなさんにお伝えできたらいいなと考えています。

先に基礎的なことを学びたい方はこちら
▼2回目「基礎的な描き方手順」「絵心をあげる練習方法」


○「刺さるイラストのポイント」

ではどういうポイントをイラストを組み入れていけば、見たことの心を掴むのか、そんなに上手ではないポーポーが言うのも変ですが、逆に考えればそんなに絵を描く技術がなくても、このポイントを押さえれば仕事になるイラストを描けることができるのです。

今回の目次はこちら
1. 不安定さと安定感の作り方(作為的なラフさ)
2. モチーフと特徴があると伝えやすい
3.  ゆる顔の描き方(ベビーフェイス効果とアニマルフェイス効果)
4.  心理的なキャラ色設定(色と性格の関係)
5. 人に好まれる色の傾向と形(認知心理)
6. 科学的「かわいい」の作り方

※「6」に原稿追加しました(2023年9月18)

1. 不安定さと安定感の作り方(作為的なラフさ)

最初からなんとも変なタイトルをあげました。誰でも描けて、かつ、相手の心を穏やかにするゆるいイラストには「不安定な感じ」と「安定した感じ」の双方を持つことが重要になります。

人は不安定なイラストを繰り返し見ると、感情まで不安定な感じになります。ここでいう不安定とは、あるキャラクターが、ときにはかわいく見えるけれども、別のカットではかわいく感じないと思うイラストです。個人差があって、その不安定さを「面白い」と感じる人もいますが、多くの人は心が安定しないので、違和感が先行してしまいます。アニメでいう「作画崩壊」がこれに似ています。一方、安定した感じのイラストは、いつ見てもかわいいと感じると安定するので、一度、好ましいと感じるとずっと心地よく感じてもらえるメリットがあります。しかし、面白みが欠けると感じるようになり、「つまらない」と評価されることもあります。では実際のラフ画を見てください。

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