マガジンのカバー画像

One Phrase To Story

70
1行のフレーズから、2000字の物語を芽吹かせる。 そんな活動の記録です。
運営しているクリエイター

#シロクマ文芸部

晴れ舞台 オブ ザ イヤー

「ありがとう、そう言うだけで良い」  佐伯明日香は低い声で、父、昨真に言った。昨真の体は…

Pawn
8か月前
16

ドラッグ・オン・クリスマス#パルプアドベントカレンダー2023

「冬の色のおくすり。あげる」  ときは12月10日。幸せそうな家族連れや恋人たちで賑わう日曜…

Pawn
8か月前
31

放課後ホッチキス。

「珈琲と紅茶、どっちが好き?」 「紅茶、かな」  互いの手元から響くホチキスを留める音がメ…

Pawn
10か月前
9

夜を歩く。夜に咲く。

「ただ歩くだけで良いんですか」 「えぇ、ただ歩くだけで構いません」  僕は暗い部屋の中、ス…

Pawn
1年前
23

師匠は何も分かっていない。

「食べる夜!」  ある日、研究所に顔を出すと、師匠は満面の笑みで小瓶を掲げて叫んだ。 「食…

Pawn
1年前
11

僕らを乗せて。

「世界にはもう私らしか残っていないんじゃないかと思うんだよね」  沈む夕日に染められて、…

Pawn
1年前
11

となりの席の銀河売り。

 銀河売り。隣の席の星波さんの机の上、進路調査の用紙には確かにそう書いてあった。さりげなさをよそおったはずが、視線が釘付けになってしまう。早く目をそらさないとバレる。可愛らしい、しかしどこか意志の強さを感じさせる字。彼女が小さい頃に書道を習っていたというのは、よく知られている情報だ。文化祭のクラスの出し物の看板は、他クラス分まで含めて星波さんが下書きを行っていた。固まってしまった思考と視線を軋ませながら無理矢理動かす。その先で星波さんと目が合う。 「あ、いや」  思わず声が出

透き通る君との夏。

 ガラスの手に亀裂が走る。否、手だけではない。ガラスでできた体に亀裂が走っていき、透明な…

Pawn
1年前
10