くらきあお

労働者が社会で直面する様々な矛盾を、コミカルなタッチで、真摯に描いて行きます。 これか…

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労働者が社会で直面する様々な矛盾を、コミカルなタッチで、真摯に描いて行きます。 これから社会に出て行く高校生や大学生の方々にも読んで頂けたら幸いです。 どうぞよろしくお願いいたします。

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(web小説)パワハラ死した僕が教師に転生したら 物語の概要

【ストーリー】  転職した新興のファミレス企業で苛烈なパワハラを受け、自死に追い込まれた内気な中年の男性。  彼は自死の後、意識体となり、10年の学びの時を過ごす。  そして彼は教師となって社会を変えるために転生し、前世の彼の生きた時代に舞い戻ってきた。  高校の教師となった彼は、生徒に、そして社会に、何を伝えるのか……。 【目次(リンク)】 1.転任してきた教師の挨拶 2.僕のパワハラ死の全体像 3.株式会社という歪んだ仕組み 4.お金は愛です 5.お金は汚いという言

    • パワハラ死した僕が教師に転生したら 12.労働者の近すぎる距離

      第1話はこちらから 前話はこちらから  教師の7回目の社会の授業。  教壇に立ち、生徒の全員に穏やかに微笑みかける教師。  大きな瞳をしばらく閉じて静かに息をした後、教師がゆっくりと話し始める。   「今日の授業では、集団と階層の中にある、人間の悪意や暴力性を解き放つ三つ目の要因、労働者の距離の問題について話します。そう、労働者達は、互いに物理的に近い距離の中で過ごし、心理的な距離も近づけるよう圧力をかけられるのです」と教師が言う。   「・・・・・この教室も同じかもしれま

      • パワハラ死した僕が教師に転生したら 11.上司と部下という虚構

        第1話はこちらから 前話はこちらから  教師の6回目の社会の授業。  いつも通り几帳面にスリーピースのスーツを着込んだ教師が教室に入ってくる。  何やらたくらみがありそうな顔つきの教師が、ゆっくりと話し始める。   「今日の授業は、集団と階層の中にある、人間が生来的に抱えている悪意や暴力性を解き放つ二つ目の要因、上と下、上司と部下という人間関係についてです」と教師が言う。   「上司とは、集団と階層において自分より上の階層に位置し、自分に対して指揮命令を下し、自分を評価する

        • パワハラ死した僕が教師に転生したら 10.過大な利益追求圧力、ノルマ

          第1話はこちらから 前話はこちらから  教師の5回目の社会の授業。  教卓に両手を置き、生徒達の顔を眺めている、落ち着いた表情の教師。  右手で白髪の多い髪を抑え、ゆっくりと息をしてから、教卓に手を戻し、話し始める教師。   「今日の授業からは、集団と階層の中にある、人間がもともと持っている悪意や暴力性を解放する要因について、説明して行きます。今日の授業で説明するのは、一つ目の要因、株主からの過大な利益追求圧力です。そう、一部の株主や社長は、果てしなく利益を求めます。終わり

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        (web小説)パワハラ死した僕が教師に転生したら 物語の概要

          パワハラ死した僕が教師に転生したら 9.人間

          第1話はこちらから 前話はこちらから  突然に始まった教師の壮絶なパワハラ体験の告白が終わった後の教室。  押し黙ってそれを聞いていた生徒達がようやく口を開く。  教師の4回目の社会の授業の続き。   「・・・・・ス、スゲェ、俺、ゾクゾクして・・・・・い、いや、なんでもない」と普段は鋭い瞳を少し潤ませた冬司が小声で言う。 「ちょっ、冬司・・・・・なに興奮してる?・・・・・お前、暴力シーンとかで興奮するヤツ?」と丸い瞳を更に丸くして優太が言う。 「ちげえよ・・・・・べ、別に・

          パワハラ死した僕が教師に転生したら 9.人間

          パワハラ死した僕が教師に転生したら 8.集団と階層、悪意と暴力

          第1話はこちらから 前話はこちらから  教師の4回目の社会の授業。  少し緊張した面持ちの教師が教室に入ってくる。  両の手のひらを上に向けて教卓に置き、憂鬱そうな表情でうつむき、しばらく目を瞑っている教師。  突然に目を開き、彼の授業が始まる。   「今日の授業からは、前世の僕がパワハラ死した直接の原因を説明していきます。そして、この原因を理解するには、まず、この仕組みを知っておかねばなりません」と言いながら板書をする教師。    チョークと黒板のぶつかる音。  黒板のと

          パワハラ死した僕が教師に転生したら 8.集団と階層、悪意と暴力

          パワハラ死した僕が教師に転生したら 7.お金がないとできません

          第1話はこちらから 前話はこちらから   ようやく暖かくなってきた4月中旬の教室。  そこでの生徒達の悪ふざけとざわめき。全ては二度と戻らない青い春の一瞬の出来事。  教師の3回目の社会の授業の続き。   「ふーんだ・・・・・カネ、カネ、カネって・・・・・俺、そういうの大嫌い・・・・・そんなの人の勝手・・・・・学校の先生が上から押し付けは・・・・・変」と言う優太。    大きな瞳でしばらく優太をじっと見つめる教師。   「うーん、でも、優太さんがそう思うのは、貧しい労働者の

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          パワハラ死した僕が教師に転生したら 6.社会全体のパイ÷構成員全員の欲望×君の欲望

          第1話はこちらから 前話はこちらから  教師の3回目の社会の授業。  頬の腫れも引き、落ち着いた表情の小柄で痩せた教師が教室に入ってくる。  教室には、不安げな生徒達が醸し出す、微妙に重い空気が・・・・・。   「・・・・・あのう、ちょっと怖くてなかなか聞けなかったのですが・・・・・やっぱり学級委員を押し付けられてしまったので、みんなの代表として、一つお伺いしてもいいですか?」と恐る恐る教師に尋ねる文香。 「え?何でしょうか?」と微笑んで教師が言う。 「・・・・・あの、先生

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          パワハラ死した僕が教師に転生したら 5.お金は汚いという言葉

          第1話はこちらから 前話はこちらから  冬司の渾身のビンタにより社会の2回目の授業が中断している教室。  目を閉じて仰向けに倒れている教師と、それを取り囲む生徒達。  教師の2回目の社会の授業の続き。   「だ、駄目だって冬司、この人、体弱そうなんだから。頭、黒板でぶったし・・・・・あれ、もしかして、この人・・・・・し、死んでない?」と優太が不安そうな表情で言う。 「・・・・・え?殺っちゃった?・・・・・っていうか、ビンタで人、殺れるの?」と呆気にとられた顔で言い、不揃いな

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          パワハラ死した僕が教師に転生したら 4.お金は愛です

          第1話はこちらから 前話はこちらから  教師の2回目の社会の授業。  新しい生徒達にも慣れ始め、少しリラックスしてきた教師。しかし、生徒達は・・・・・。  教壇から生徒達全員の顔を眺め、一呼吸置いてから、ゆっくりと話し始める教師。   「前回の授業では、株式会社の仕組みを説明しました。そう、株式会社では株主が最強で、株式会社という仕組みは、株主がお金を得るためにあるのです。そして、株主が一人の会社から何十万人の会社まで、色々な会社がありますが、どの株主も、利益、お金を求めて

          パワハラ死した僕が教師に転生したら 4.お金は愛です

          パワハラ死した僕が教師に転生したら 3.株式会社という歪んだ仕組み

          第1話はこちらから 前話はこちらから  教師の1回目の社会の授業の続き。  両方の手のひらを上に向け教卓に置いた教師が、大きな瞳に笑みをたたえ、少し低い良く通る声で授業を続ける。   「では今日は、株式会社の仕組みについてお伝えします。  現代では、私達が必要とする多くのものは、株式会社で働く人達によって作られ、株式会社で働く人達によって売られています。  例えば、みなさんが好きなゲームは、任転堂株式会社といったゲームを作る株式会社で働く人達が作り、売っています。みなさんの

          パワハラ死した僕が教師に転生したら 3.株式会社という歪んだ仕組み

          パワハラ死した僕が教師に転生したら2.僕のパワハラ死の全体像 

          前話はこちらから  何かに取り憑かれたような教師の長い自己紹介の後の、静まりかえった教室。  虚ろな目をした教師が無言のままに佇んでいる。  聞こえてくるのは、隣のクラスの教師と生徒の、良くある無難な会話とざわめき。  しばらくの沈黙の後で、ようやく口を開く学ランとセーラー服の生徒達。   「・・・・・何コイツ?・・・・・頭のヤバイ担任、来たな」と珍しい生き物を見つめるような表情の冬司が小声で言う。 「うー・・・・・前世の記憶がある?・・・・・過去にタイムスリップしてもう一

          パワハラ死した僕が教師に転生したら2.僕のパワハラ死の全体像 

          パワハラ死した僕が教師に転生したら 1.転任してきた教師の挨拶

           東京、高校、現代、令和の初頭、転任して来た教師。  教室の教壇。  小柄で痩せた、白髪の多い少し長い髪の中年の男。  青白い面持ちに浮かぶ、憂鬱そうで悲しげな大きな瞳。  まだ肌寒い春の光の中で、静かに、失われた何かを探し求めるようにゆっくりと、時折目を瞑りながら語られた、教師の自己紹介。  それは彼の、遠い記憶・・・・・。   「・・・・・そう、それであの頃、僕は四十近くになっていて、新興のファミリーレストランを経営する会社に勤めていました。  僕は、終着駅と呼ばれていた

          パワハラ死した僕が教師に転生したら 1.転任してきた教師の挨拶