くらきあお

WEB小説「パワハラ死した僕が教師に転生したら」 労働者が社会で直面する様々な矛盾を、コミカルなタッチで、真摯に描いて行きます。 これから社会に出て行く高校生や大学生の方々にも読んで頂けたら幸いです。 どうぞよろしくお願いいたします。

くらきあお

WEB小説「パワハラ死した僕が教師に転生したら」 労働者が社会で直面する様々な矛盾を、コミカルなタッチで、真摯に描いて行きます。 これから社会に出て行く高校生や大学生の方々にも読んで頂けたら幸いです。 どうぞよろしくお願いいたします。

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(web小説)パワハラ死した僕が教師に転生したら(完結済み) 物語の概要とキャラクター紹介

【ストーリー】  転職した新興のファミレス企業で苛烈なパワハラを受け、パワハラ自殺に追い込まれた内気な中年の男性。  彼は自死の後、意識体となり、10年の学びの時を過ごす。  そして彼は教師となって社会を変えるために転生し、前世の彼の生きた時代に舞い戻ってきた。  高校の教師となった彼は、生徒に、そして社会に、何を伝えるのか……。 【目次(リンク)】 1.転任してきた教師の挨拶 2.僕のパワハラ死の全体像 3.株式会社という歪んだ仕組み 4.お金は愛です 5.お金は汚い

    • パワハラ死した僕が教師に転生したら 23(最終話).働く意義

      第1話はこちらから 前話はこちらから  教師の15回目の社会の授業。  教壇には大きな瞳を軽く細め、少し億劫そうに微笑んでいる教師がいる。  6月も上旬だというのに、相変わらずスリーピースのスーツを律儀に着込んでいる。   「今日の授業では、労働者は何のために働くかについてお伝えします。ただ、それに先立ち、働くことに関して最も重要なのは、働くことで死なないこと、病気にならないこと、負傷しないことです。パワハラや長時間労働だけでなく、労働中の事故によってもそういう事態が起こり

      • パワハラ死した僕が教師に転生したら 22.無垢の否定

        第1話はこちらから 前話はこちらから  教師の14回目の社会の授業。  衣替えが終わり、白いセーラー服とワイシャツの生徒達が眩しい。  青白い面持ちに穏やかな笑みを浮かべ、何かを懐かしむかのようにその生徒達を見渡す教師。  一瞬だけ目を閉じた後、彼は授業を始める。   「今日の授業では、社会に出る前、学生時代のうちにみなさんが取り組むべきことについて、僕の考えを話します。前世の僕がああなってしまったのには、多くの要因が絡み合っています。そして、その一つには、前世の僕の学生時

        • パワハラ死した僕が教師に転生したら 21.遺族

          第1話はこちらから 前話はこちらから  教師が意識体となって垣間見た、無数の死にゆく労働者達。そして、それを生み出す社会の成り立ち。  授業を黙って聞いていた生徒達が、おもむろに口を開く。  まだまだ続く教師の13回目の授業。   「・・・・・何万人もの労働者が亡くなっている?」と文香が白い頬をこわばらせて訊く。 「ええ、僕の見立てでは、ここ50年の間に少なくとも5万人は死んでいます」 「・・・・・本当に・・・・・ですか?」と文香が真剣な表情で訊く。 「うー・・・・・大人の

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        (web小説)パワハラ死した僕が教師に転生したら(完結済み) 物語の概要とキャラクター紹介

          パワハラ死した僕が教師に転生したら 20.死にゆく労働者達

          第1話はこちらから 前話はこちらから  パワハラ死の後、意識体となり、時間の流れて行く現在と過去を行き来し、色々な出来事を垣間見てきたと言う教師。  そして教師は、自分と同じように死んだ労働者を山ほど見てきたと言う。  教師の13回目の社会の授業は続く。   「そう、僕はそういう人達を山ほど見てきた。僕は意識体になってから、自分が何故あのような最後を迎えたのかを考えるようになる。そして僕は思った。僕と同じような最期を迎えた労働者が他にもいるのだろうか?そんな労働者がいるなら

          パワハラ死した僕が教師に転生したら 20.死にゆく労働者達

          パワハラ死した僕が教師に転生したら 19.パワハラ死した後の世界(労災申請、損害賠償請求、パワハラの証拠)

          第1話はこちらから 前話はこちらから  教師の13回目の社会の授業。  夏が近づこうとしているのに、相変わらずスリーピースのスーツのままの教師が教壇にいる。  青白い面持ちで生徒達に微笑みかけ、授業を始める教師。   「今日の授業では、前世の僕が死後に経験したことを話します。それは、とても不思議な体験なのです。前世の僕は、ビルから飛び降りた後、深い眠りからゆっくりと目覚めるようにして、徐々に意識を取り戻します。次第にはっきりしてきた視界には、あのビルとそこを行き交う人々が映

          パワハラ死した僕が教師に転生したら 19.パワハラ死した後の世界(労災申請、損害賠償請求、パワハラの証拠)

          パワハラ死した僕が教師に転生したら 18.死に至る速度

          第1話はこちらから 前話はこちらから  教師の12回目の社会の授業。  重苦しい表情の小柄でやせた教師が教壇に立っている。  生徒達全員の顔を見つめ、深呼吸をした後、いつになく真剣な表情で授業を始める。   「今日は僕の授業の中で一番大切な話をします。長時間労働やパワハラが続くと、一部の労働者はうつ病という心の病気にかかる。これは、誰にもでも起こりうること、全ての年代の労働者に起こりうることです。もしかしたら、みなさんのご両親やご親戚にも経験された方がいるかもしれない。そし

          パワハラ死した僕が教師に転生したら 18.死に至る速度

          パワハラ死した僕が教師に転生したら 17.転職する社会

          第1話はこちらから 前話はこちらから  教師の11回目の社会の授業。  教壇にいるのは、大きな瞳を閉じて、少しだけ微笑みを浮かべているような表情の教師。  瞳を開き、生徒達全員の表情を確認してから、ゆっくりと話し始める。   「今日の授業は、何故、前世の僕が、僕をパワハラ死させたあのファミレスの会社から逃げ出せなかったかについて話します。僕も他の労働者も、あんな会社はとっとと辞めるのが一番なのです。しかし、それができない人達がいる、これが今の社会なのです」と教師が言う。  

          パワハラ死した僕が教師に転生したら 17.転職する社会

          パワハラ死した僕が教師に転生したら 16.サイコ社長を追い出せるか

          第1話はこちらから 前話はこちらから  教師の10回目の社会の授業。  5月も下旬となり暖かくなってきたのに、教壇にはスリーピースのスーツを律儀に着込んだままの教師がいる。  しばらくの間、ほんのりとした微笑みを生徒に向けてから、話し始める教師。   「集団と階層の話が、随分と長くなってしまいました・・・・・」と言いながら、素早く板書をする教師。    チョークと黒板のぶつかる音。  黒板の大きな字。       【集団と階層の中で悪意や暴力が行使される主な原因】   株主

          パワハラ死した僕が教師に転生したら 16.サイコ社長を追い出せるか

          パワハラ死した僕が教師に転生したら 15.同調欲求

          第1話はこちらから 前話はこちらから  教師の9回目の社会の授業。  少し照れたような、そして、どことなくすっきりしたような表情の教師が教室に入ってくる。  教壇に立ち、穏やかな笑顔を生徒達に向ける教師。   「今日の授業では、集団と階層の中にある、人間の抱えている悪意や暴力性を解放させる五つ目の要因、労働者の持つ同調欲求について話します。人間は誰しも、集団の中では、周りと同調したいという欲求を抱きます。この欲求はとても強く人間を突き動かすのです。だから、集団と階層の中で、

          パワハラ死した僕が教師に転生したら 15.同調欲求

          パワハラ死した僕が教師に転生したら 14.サイコパスな社長(後編)

          第1話はこちらから 前話はこちらから  前世の最後に教師が勤めていた会社。その会社の社長から受けたパワハラについて教師が話した後の教室。  少しの沈黙の後、生徒達はすぐに口を開く。  教師の8回目の社会の授業の続き。   「うー・・・・・なんで大人の世界はこんなヤバイ人ばっか?これ、本当の話?大人の世界はテストピア?」と顔を引きつらせた優太が言う。 「本当です、僕は生徒に嘘をつくために転生してきたのではないのです。今の社会の一部は、まさにディストピアなのです」 「・・・・・

          パワハラ死した僕が教師に転生したら 14.サイコパスな社長(後編)

          パワハラ死した僕が教師に転生したら 13.サイコパスな社長(前編)

          第1話はこちらから 前話はこちらから  教師の8回目の社会の授業。  教壇に立ち、しばらくの間、目を瞑り、眉間に深いしわを寄せている教師。  大きな瞳が虚空を一瞬だけ鋭く睨んだ後、彼の授業が始まる。   「今日の授業は、集団と階層の中にある、人間の持つ悪意や暴力性を行使させる四つ目の要因、サイコパスな社長についてです。人間的な感情、普通の人間が持っている良心や優しさを欠き、罪悪感のない冷酷で反社会的な精神病質者、それをサイコパスと言うなら、サイコパスな社長、サイコ社長は確実

          パワハラ死した僕が教師に転生したら 13.サイコパスな社長(前編)

          パワハラ死した僕が教師に転生したら 12.労働者の近すぎる距離

          第1話はこちらから 前話はこちらから  教師の7回目の社会の授業。  教壇に立ち、生徒の全員に穏やかに微笑みかける教師。  大きな瞳をしばらく閉じて静かに息をした後、教師がゆっくりと話し始める。   「今日の授業では、集団と階層の中にある、人間の悪意や暴力性を解き放つ三つ目の要因、労働者の距離の問題について話します。そう、労働者達は、互いに物理的に近い距離の中で過ごし、心理的な距離も近づけるよう圧力をかけられるのです」と教師が言う。   「・・・・・この教室も同じかもしれま

          パワハラ死した僕が教師に転生したら 12.労働者の近すぎる距離

          パワハラ死した僕が教師に転生したら 11.上司と部下という虚構

          第1話はこちらから 前話はこちらから  教師の6回目の社会の授業。  いつも通り几帳面にスリーピースのスーツを着込んだ教師が教室に入ってくる。  何やらたくらみがありそうな顔つきの教師が、ゆっくりと話し始める。   「今日の授業は、集団と階層の中にある、人間が生来的に抱えている悪意や暴力性を解き放つ二つ目の要因、上と下、上司と部下という人間関係についてです」と教師が言う。   「上司とは、集団と階層において自分より上の階層に位置し、自分に対して指揮命令を下し、自分を評価する

          パワハラ死した僕が教師に転生したら 11.上司と部下という虚構

          パワハラ死した僕が教師に転生したら 10.過大な利益追求圧力、ノルマ

          第1話はこちらから 前話はこちらから  教師の5回目の社会の授業。  教卓に両手を置き、生徒達の顔を眺めている、落ち着いた表情の教師。  右手で白髪の多い髪を抑え、ゆっくりと息をしてから、教卓に手を戻し、話し始める教師。   「今日の授業からは、集団と階層の中にある、人間がもともと持っている悪意や暴力性を解放する要因について、説明して行きます。今日の授業で説明するのは、一つ目の要因、株主からの過大な利益追求圧力です。そう、一部の株主や社長は、果てしなく利益を求めます。終わり

          パワハラ死した僕が教師に転生したら 10.過大な利益追求圧力、ノルマ

          パワハラ死した僕が教師に転生したら 9.人間

          第1話はこちらから 前話はこちらから  突然に始まった教師の壮絶なパワハラ体験の告白が終わった後の教室。  押し黙ってそれを聞いていた生徒達がようやく口を開く。  教師の4回目の社会の授業の続き。   「・・・・・ス、スゲェ、俺、ゾクゾクして・・・・・い、いや、なんでもない」と普段は鋭い瞳を少し潤ませた冬司が小声で言う。 「ちょっ、冬司・・・・・なに興奮してる?・・・・・お前、暴力シーンとかで興奮するヤツ?」と丸い瞳を更に丸くして優太が言う。 「ちげえよ・・・・・べ、別に・

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