これは「スポーツアナリティクス Advent Calendar 2019」の11日目の記事です。
こんにちは。
メンタリストDaiGoです。
嘘です。
メンタリストDaiGoであることは嘘ですが、この記事を読みに来た人の心を読むことはできます。
ずばり「スポーツアナリティクス興味あるし、将来携わってみたいなあと思っていたら、海外のスポーツ団体のデータサイエンティスト採用要件みたいな記事が流れてきたから参考に読んでみるか」ですね。こういうことには詳しいんです。
茶番はさておき、この記事ではタイトルの通り、海外のスポーツ団体のデータサイエンティスト採用要件についてまとめています。
なんで海外の採用要件を対象にしているかというと、主に下記2点が理由です。
①の補足をすると、アメリカやヨーロッパの方がスポーツアナリティクスの活用が進んでいるのは間違いないので、そこでどのようなレベルの求人がされているのか調べるのは、日本で今後スポーツアナリティクスに携わったり、推進したりする際の基準感として使えるのではないかと思っています。
ということもあり、この記事は下記のような人にとって為になるでしょう。
もちろん、上記以外の人にも面白いと感じてもらう部分はあると思います。
それでは、以下本文です。
Attention!!!
採用が終了してページが閉じている可能性や、記事内での閲覧性を踏まえて、採用要件の原文と和訳をそのまま記載しています。
そのため、分量がめちゃくちゃ多いですが、その大半は原文と和訳なので適宜読み飛ばすとよいです。
前情報
本記事は下記の記事の発展版です(別垢の記事です)。
必要な情報はこちらにも記載しますが、興味のある方は下記記事もご覧ください(ちなみに、下記のTwitterアカウントはこちらです)。
概要
NBAのチームやリーグ本体のいずれの団体でも、最低限下記の要件が求められていました(上述の記事参照)。
おそらく、上記の内容はどのスポーツ団体でも大きく変わることはないでしょう。
そうすると、ただ採用要件を羅列してもあまり面白くなさそう。。。
ということで、今回は色々な切り口で各求人を比較してみようと思います。
具体的には競技軸や役職などを各求人で見比べて、差異を見つけていきます。
※求人はGoogleや、LinkedInのような求人サイトで検索しました。
競技軸_チーム編
まずはスポーツ団体のデータサイエンティストとして花形と思われる(?)プロチームの採用要件について見てみましょう。
今回は、NBA、MLB、NHLのチームでデータサイエンティストの求人を探し、その中で各種目ごとに採用要件が一番盛り盛りだったチームをピックアップして比較してみます。
まずはNBAから
LAC
(職種名:Basketball Data Analyst)
概要
主な職務と責任
資格要件
続いてMLB
Cleveland Indians
(職種名:Sports Science Analyst, Baseball Research & Development)
概要
職責
採用要件
最後はNHL
Jacksonville Jaguars
(職種名:Data Analyst)
概要
職責
採用要件
その他
内容としては、上述したベースの要件に各チームがそれぞれ必要とする要件を付け加えている形になりますね。
LACとCleveland Indiansは勤務時間について柔軟な対応を求められていたり、Jacksonville Jaguarsはスポーツ自体のパフォーマンス向上にとどまらず、ビジネス課題の解決にも取り組むということを明記していたりします。
個人的に面白い記載だったのが、LACの欲張りぶりとCleveland Indiansで実験計画や因果推論の経験が望ましいと記載されている件です。
前者については、統計スキルに加えて、クラウドやGitの知識とかデータの可視化まで求めていて、一人でなんでもできる人材を求めている感が伝わってきて、良くも悪くも印象深いです。
ちなみに求人は既に終了していました。どんな人が採用されたんだ。
後者については、これまで10数件分の求人を見ましたが、実験計画や因果推論の経験を求めている求人はCleveland Indiansだけで、スポーツにおけるデータサイエンスのステージを一歩進めている印象です。
ただ、各競技に対する知見を除けば、競技として特筆すべき採用要件はなさそうです。
競技軸_統括団体編
次は統括団体について見てみましょう。
勝利を追い求めるという醍醐味はなくなりますが、リーグを運営するための分析という点では、他ではできないプロジェクトに取り組めそうです。
ここではNBAとMLBの統括団体求人について比較してみます。
NBA本体
(職種名:Data Scientist, Basketball Integrity)
職務概要
主な責任
必要とされるスキル、知見
学歴
お次はMLB
MLB本体
(職種名:Data Scientist)
概要
職責
採用要件
求められている職責は異なっていますね。NBAは八百長やベッティング、そしてスポーツのプレイデータを分析するようですがMLBはビジネス面での分析を求められているようです。
もちろん、お互いに足りない人材を求めているだけで、競技ごとに求めてる人材が異なるとは必ずしもいえないですが、少なくともこういう職責のパターンがあるというのは参考になりますね。特に八百長に対する対応というのはなかなか聞かない話なので興味深いです。
ちなみに、MLBでは他にもデータサイエンス系の職種を応募しているので、そちらも合わせて紹介します。
MLB本体
(職種名:Senior Software Engineer (Baseball Data + Machine Learning))
概要
職責
採用要件
MLB本体
(職種名:BI Data Analyst)
概要
職責
採用要件
MLBはデータサイエンスの中でも、職種をさらに細かく分けているのが好印象ですね。データエンジニア的な職種から、複雑なデータ解析を行うアナリスト、そしてデータを全社的に活用するためのBI担当をそれぞれ募集しており、全部を一人に押し付けていることはありません。LACは見習ってくれ。
また、NBAのチームであるHouston Rocketsの採用要件は求めているものが少なく、社内体制が整っていることが伺えるので、採用要件だけ紹介します。
HOU
(職種名:Basketball Operations Analyst)
採用要件
応募に関する情報
やはり、NBA版Money ballとも言われているHOUですね。
LACは見習ってくれ(二度目)
役職軸
誰かを採用するときには必ず役職の話も出てきます。いわゆる一般社員やジュニアとしてなのか、それとも管理職やシニアとしての採用なのかといった話ですが、もしかしたら役職の違いで採用要件も変わるかもしれない。これってトリビアになりませんか?
ということで、この節では役職の違いによる採用要件の差異を確認してみます。
ちょうどよいところに、同じチームで、求人名称的に同一職種の、ジュニア採用とシニア採用の求人があったのでそれを比較してみましょう。
※掲載されているサイト自体は異なるのでその点は留意。
まずはジュニア採用らしき求人
Philadelphia Eagles
(職種名:Quantitative Analyst-Football Operations)
概要
採用要件
次はシニア採用らしき求人
Philadelphia Eagles
(職種名:Senior Quantitative Analyst Football Operations)
概要
採用要件
まず一言
なんで職責の記載がないん?
もちろん概要欄に簡単な記載はあるけど、例だけでもいいから具体的な職務内容を書くべきでは。。。って感じしますね。本当に採用したいと思ってるんかワレといった感想です。
それは置いといて求人と比べると、シニア採用には下記2点の要件が追加されています
内容を見ている限りだと即戦力採用の感があります。
ただ、シニアの役職に求められるようなマネジメントスキルについては記載がないのが引っかかります(データサイエンスプロジェクトのチームリーダーになったなど)。
なので、シニアと銘打ってはいますが、マネジメントは今後身につけばよくて、それよりは経験あってすぐ戦力になってもらう方が優先といった思惑でしょうか。
お次はインターン採用について見てみましょう。
Oklahoma City Thunder
概要
職責
採用要件
求められているスキルの項目自体は、ベーシックなデータサイエンティスト採用要件という印象です。どの程度のレベルが求められているのかは分かりませんが、インターンだから緩いといった要素はこの資料からは見受けられません。
ただ、特徴的なのは機密保持の経験ですね。学生インターンらしい採用要件です。
ちなみにお給料の出るインターンだそうで、サイトによる推定年収は44,000~61,000$らしいです。高くてワロタ。
総じて、役職別で特徴的な違いは見受けられなさそうですね。
外部会社の求人
スポーツのデータサイエンティストというと、なんとなくチームや統括団体のような、プロスポーツの現場に近い環境で働くことが前提になっているような印象があります。
データサイエンティストとして働く環境を、「事業会社でデータ分析」⇔「受託・支援会社でデータ分析」の2軸で分類した時の前者に該当するのでしょう。
しかし、逆に考えれば後者のような環境でスポーツのデータ分析をするということも選択肢としては考えられます。
ということで、ここではチームや統括団体の枠から離れたところでスポーツのデータ分析を行う会社の求人を見てみましょう
※後者のような環境と書きましたが、ここで紹介する求人は必ずしも受託や支援会社ではありません。
Genius Sports
(職種名:Data Scientist)
概要
職責
採用要件
スポーツ団体に対して、データを利用して幅広く支援を行う会社です。いわゆる受託・支援会社という感じですね。
試合に勝利するための活動に留まらず、ブックメーカー対応や事業改善まで、スポーツに関するあらゆるデータを利用するオーラが感じ取れます。
データの可視化スキルを問われていないのは個人的に違和感があります。クライアントに直接関わる部隊がよしなにやってくれるのでしょうか。
Ladbrokes Coral Group
(職種名:Data Scientist - Trading Analysis)
概要
職責
採用要件
いわゆるブックメーカーでのデータサイエンティスト求人です。
オッズの設定が利益に直結して、しかも設定する件数や設定に必要なデータの量の多さを踏まえると機械学習の専門家を求めているのかと思いましたが、要件を見る限りだと、アナリティクスの要素が強いです
機械学習については既に人材がいて、アナリスト的な層を強化したいのかもしれませんが詳細は分からないですね。
後は、社内で利用されているシステムが伺えるのは興味深いですね。
ただ、R,PythonとTableauを並列に並べるのはどういった了見なんでしょう。
補足1_テニスの採用要件
ここまで、色々な競技やジャンルの採用要件を見てきました。
しかし、まだまだチェックできていない種類もあります。
例えば、個人競技系なんかは欠片も存在が確認できません。
そんな折、Twitterで下記のコメントをいただきました。
これは僥倖...!ということで、この項で紹介します。
(おたこさん、ありがとうございました!)
ITF
(職種名:Senior Coordinator, World Tennis Tour)
概要
職責
採用要件
大会運営を後方支援する職種で、そこで活躍する要件の一つにデータ分析スキルが入っているという感じですね。
データ分析のスキル自体は高いものを求められてるわけではありませんが、大会運営を行うという、まったく別のスキルが必要とされるタスクも行うので、意外と難易度の高い求人かもしれません。
でも、トーナメントデータやランキングデータ。プレイデータなど、扱えるデータは面白そうですね。
補足2_職責について
ここまで、実際の求人ページを見て話をしてきました。
おそらく、求められるスキルについては感覚値を掴めると思いますが、職責については記載が抽象的なため、イメージがつきづらいかもしれません。
ですので、スポーツアナリストの職責について参考になりそうな記事を載せましたので、気になる方はこちらを見て、実際の業務内容についてのイメージをふくらませると良いかもしれません(いずれも日本語記事です)。
スポーツアナリティクスの果たす役割について整理している記事です。
幅広くまとめているので、スポーツアナリストの職責の概観を掴むのに向いています。
ただ、試合に勝つためのデータ分析の記述が少し薄いかもという印象です(選手の獲得やドラフトで指名する選手選びなど、スパンが長めの分析もあると思うので)。
NBAのデンバー・ナゲッツというチームで働くアナリストの紹介記事です。
どういう取り組みをしているかなどにも触れられているので、こちらも参考までに。
感想
最初のお題目であった、競技や役職で採用要件に違いがあるのかというテーマですが、こちらに関しては特に違いはなさそうです。
確かに言われてみると、日本の普通のデータサイエンティスト採用要件でも会社によって大きく異なるっていうのはないですね。
どちらかというと職責や取り組む内容によって左右されるものなので、もし転職を目指すなら、そこを見極めるほうが良さそうです。
ただ、こうやって横比較してみると、なんとなく採用しているような団体から、明確な意図を持って採用を目指している団体まで幅広く、転職を目指す際に採用要件から内部状況を推測できそうな予感がしてきます。
あまりまとまった結論にはなっていませんが、この記事がスポーツのデータサイエンティストを目指す人の参考になれば幸いです。