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世界史漫才再構築版04:アレクサンドロス大王編

 苦:今回はアレクサンドロス大王、英語でAlexander the Greatです。正確にはテメノス朝マケドニア王国の王アレクサンドロス3世であり、「大王」は後代の人が付けた尊称です。
 微:「俺ってグレート?」って歌いながら訊いていた奴か?
 苦:アラジンなんて昭和56年の一発バンドなんか誰も覚えてねえよ!! 彼は前356年に生まれ、前323年にバビロンで33歳で死にます。
 微:ベニスじゃないのか。ヴィスコンティ好みじゃなかったんだな。
 苦:映画じゃありません。弱冠20才で国王に即位し、一代でギリシア世界とオリエント世界を統一しました。即位のきっかけは父フィリッポス2世の暗殺でしたが、疑惑だらけです。
 微:三浦容疑者が絡んでいたのか? それとも桜を見る会の会場で親父は殺されたのか?
 苦:銃弾もロスアンジェルスも関係ないし、そんな昭和の事件誰も覚えてないよ!!
 微:すまん、でも要は暗殺することに利益を見出せる関係者が多かった、ということだろ?
 苦:はい。昔は一夫多妻制で、アレクサンドロス以外にも母の異なる兄弟がいました。
 微:「古代マケドニアのテューダー家」と呼ばれたそうです。
 苦:また時間軸が前後してます。ちなみに暗殺の舞台は娘クレオパトラとエペイロス王アレクサンドロス1世の結婚式でした。
 微:夫が殺されたとはいえ、アレクサンドロス大王の母は大喜びだっただろうな。
 苦:まあ、若い妻が男の子を産んだ後でしたから、彼女が首謀者と考える人がいますが、政治情勢的にはアケメネス朝ペルシアの刺客と考えた方がいいでしょう。
 微:アケメネス朝ペルシアは駅伝制を重視していたから郵政民営化には反対だったんだな。
 苦:小泉劇場じゃねえよ!! アテネ・テーバイ連合軍を破った前338年のカイロネイアの戦いの最大の功績者が18歳だったアレクサンドロスでしたので、彼の即位に問題はなかったんです。
 微:これが18歳選挙権の根拠になりました。
 苦:まったく関係ありません(きっぱり)。しかし、どさくさに紛れてその赤ちゃんと母は殺されていますので、王妃オリュンピアスはちゃっかり便乗しています。
 微:元王女とはいえ、なかなかエグい母ちゃんだな。それでハリー王子は逃げた・・・。
 苦:ヤバいこと言うな! マケドニアは血統を重視する社会で、母はアキレウスを祖とするエペイロス王女オリュンピアス、父フィリッポス2世はヘラクレスを祖とする家系です。
 微:「暇を持て余して神々で遊ぶ」だな、モンスターエンジン的には。
 苦:少し古いですがツボりました。あくまで自称、かつ、そうだと思われていました。ギリシア本土からはバルバロイ扱いされていたマケドニア王国ですが、家系的栄誉はギリシア随一でした。
 微:祖先が源氏や平氏自慢みたいだな。日本なら源頼義的ポジションか。
 苦:いい譬えですね。あの栄華を極めた伊勢平氏も実際の血筋は怪しいです。源氏も多くの天皇の非跡継ぎが名乗って地方に下ってますから所詮は「地方武士団の親分」ですから。
 微:いや、古代ギリシア的世界に戻れよ。アレクサンドロスみたいに帰ってこれなくなるぞ。
 苦:失礼しました。フィリッポス2世はアレクサンドロス大王のために、幼年期に古代最大の哲学者アリストテレスを家庭教師に迎え、彼にギリシアの基礎的教養を身につけさせようとしました。
 微:それは凄すぎる。理科の家庭教師にアシンシュタインを連れてくる豪華さ!
 苦:キミだと間違って、漫才コンビの方を招いてしまいそうですが。前342年から3年間、アリストテレスは都ペラから離れた「ミエザの学園」でアレクサンドロスとその学友を教えました。
 微:親の「見栄」っていうのが透けて見えそうな名前だな。
 苦:「ミエザの学園」の様子は安彦良和さんが『アレクサンドロス』で再現してくれてます。ほとんど怒りっぱなしのアリストテレスに妙なリアリティがありますね。
 微:昔あったTV番組『トリビアの泉』のオープニングに出てくる彫刻のオッサンだろ、「人間は知ることを欲する生き物である」という言葉を残した。
 苦:アリストテレスも苦労したようで、「王子よ、勉強とは長く、そしてつらいものなのです」と懇々と説教してます。アレクサンドロスは単純で威張りたい幼児的性格だったんでしょう。
 微:アベの家庭教師をしていた東大生時代の平沢勝栄の苦労もアリストテレスには負けるな。
 苦:出来が悪いと殴ってたんで、殴られ過ぎてああなった説もありますが。でも、尊敬していて、師の願いである「東の世界の果て」にあるオケアノス捜索やナイル川の源流探しもやってますから。
 微:勢い余ってインダス川上流まで行った話な! 付き合わされた兵士は大変だったろうな。
 苦:実際そうで、兵士の反乱がなければもっと東へ進軍していた可能性は大きいです。
 微:兵站や補給、兵士の補充をどうしていたんだろう、と不思議に思える。
 苦:ちょっと話が東方遠征に入ってますけど、即位直後に話を戻します。アレクサンドロスは、父の遺志を継いで前334年にスパルタを除くギリシア軍を率いてペルシア東征に出発します。
 微:スパルタはイケメン揃いだったんだな。
 苦:そうじゃなくてマケドニア軍に屈服しなかったからです。アレクサンドロスは遠征に先立ってデルフォイの神託を求めに行きますが、その日は神託所は休業日でした。
 微:日本政府のコロナ感染拡大防止の休業要請に応じたそうです。
 苦:来ると思ってました。アレクサンドロスは強引に神託を求め続けます。
 微:「有観客での開催は可能である」「戦争は心を一つにする」と言わしたかったんだろうな。
 苦:バッハかよ!! もう、うんざりしたアポロンの巫女が「あなたは決して負けない人だ」と皮肉を言ったんですね。
 微:でもアレクサンドロスは「勝利が予言された」と満足して立ち去ったんだろ。
 苦:はい。そして小アジアでコリントス同盟軍3万はグラニコス川の戦いでペルシア軍4万と対峙します。この時、アレクサンドロスは騎兵隊の先頭に立ち、馬を駆って突進します。
 微:それって突進したんじゃなくて、誰もついて来なかっただけじゃねえの?
 苦:それが見事に敵将ミトリダテスを投げ槍で仕留めてしまうんです。
 微:実際に投げたのは室伏、押さえで二の槍を投げたのが北口榛花だったそうです。
 苦:時代も競技も違うよ! 北口は女子だから参加できないし! この衝撃的な勝利でアレクサンドロスは味方将兵の信頼を得、敵に対しては計り知れない恐怖心を与えることになりました。
 微:そりゃ、薄ら笑いする室伏を見たら、怖いわな。
 苦:室伏から離れなさい! カリスマ性を帯びたアレクサンドロスに率いられるギリシア軍は、小アジアに駐屯するペルシア軍を蹴散らしながら東進を続けて行きました。
 微:衛星中継授業を受けながらな。毎日、「いつやるんですか?」「今でしょ!」と叫んで。
 苦:それは林先生だろ! その後、アレクサンドロスはペルシア領リディアの都ゴルディオンを占領します。町の中心にあるゼウス神殿に一台の古い戦車が祀られていました。
 微:イギリス陸軍のクロムウェルMKだろ?
 苦:"tank"ではなく"chariot"です。クロムウェルなんて『丸』でも定期購読しないと知らないよ! その戦車は「ゴルディオスの結び目」と言われる複雑に絡み合った縄で結わえられていました。
 微:まだワイヤレスじゃなかったんだな。
 苦:パソコンの接続ではありません。「この結び目を解い者がアジアの支配者になる」という伝説があったんですが、アレクサンドロスは腰の剣を振り上げ、結び目を一刀両断しました。
 微:「白刃取り」する神官はいなかったんかよ。
 苦:一応、庇っておくと、アレクサンドロスは、運命とは自らの剣によって切り拓くものであると兵たちに宣言したんです。まあ、威嚇効果もバツグンですが。
 微:オレ的には伊達政宗の「一目瞭然!」返しが一番好きだな。
 苦:そして同じ前333年、アレクサンドロスとその軍団はアンティオキアの北西イッソスでペルシア王ダレイオス3世率いるペルシア軍10万と遭遇します。
 微:アレクサンドロス軍があまりに少なくて気がつかなかったそうです。
 苦:盗賊かよ! アレクサンドロスは将軍の夜襲案を拒否し、夜が明けるのを待って戦います。結果的に夜襲を警戒して寝ずの番をしていたペルシア側の歩兵はヘロヘロで勝負はついてました。
 微:『張良』の草鞋の兵法みたいな話だな、敵の注意を一点に集めて隙を作る、と。
 苦:アレクサンドロスは騎兵とファランクスを縦横無尽に指揮してペルシア軍を敗走させました。
 微:この時のために「赤上げて、白上げないで」と旗揚げ体操で訓練を積んだそうです。
 苦:昭和のテレビ番組かよ! アレクサンドロスは逃げ出したダレイオス3世の母・妻・娘を捕虜にしたというか保護しました。ダレイオス3世は家族を「置き逃げ」したんです。
 微:児童相談所に連れていったけど、追い返されたとか。まあ、後で家庭不和間違いなしだな。
 苦:すぐにペルシア側から和睦の申し出がありますが拒否し、さらに進軍を続けました。
 微:素人のパチンコみたいな失敗だな。最初の当たりの時点でサッサと止めればいいのに。
 苦:アレクサンドロスはシリアとフェニキアを屈服させてエジプトに侵入します。前332年、ペルシアからの解放者として迎え入れられたアレクサンドロスはファラオとして認められました。
 微:それから「ライディーン」に搭乗して戦ったんだな。
 苦:昭和ネタ、もういいです。「メリアムン・セテプエンラー」という名を奉られ、アメン(アモン)神殿にその像を祭られます。遂に彼は神の子、そしてペルシア王と対等になったんです。
 微:感激のあまり、「ジーザス・クライスト!!」と叫んだんだよな。
 苦:そっちの神の子じゃねえよ! さらに西部のシーワのアメン神の聖地で自らをアメンの子とする神託を得ます。その後ナイルデルタの西端に都市を建設し、アレキサンドリアと名付けました。
 微:調子こいて征服地に70ほどアレクサンドリアを作ったもんで、宅配業者が困ったそうです。「どこのアレクサンドリアかわかんねえよ」って。
 苦:佐川もクロネコもありませんから。前331年、アレクサンドロス率いる5万弱の軍は、ティグリス川上流のガウガメラでダレイオス3世指揮下の30万人のペルシア軍と激突します。
 微:アレクサンドロスはイェニチェリ貸し出しを断られた怒りが爆発したそうです。
 苦:また時間軸狂ってます。数的劣勢をものともせずにアレクサンドロス軍はペルシア軍を破り、ダレイオス3世は北方の草原地帯であるカスピ海東岸に逃れます。
 微:なんか、アレクサンドロスが「ストーカー」に思えてきたな。
 苦:アレクサンドロス軍はザグロス山脈を越えてペルセポリスに入城し、ここで初めて略奪を認め、ペルセポリスも破壊しました。
 微:ペルセポリスの破壊って、宴会で酔っ払った勢いでやっただけだろ。
 苦:翌前330年、ダレイオス3世が側近で王族出身のベッソスに暗殺されると、アレクサンドロスはベッソスの不義不忠を糾弾して殺します。
 微:ビスマルクの名言「裏切りは歓迎するが、裏切り者は歓迎しない」を思い出すな。
 苦:アレクサンドロスはダレイオス3世の遺骸を丁重に葬った後、前329年から前327年までソグディアナ遠征に向かいます。そこを平定するとバクトリアというかアフガンへ向かいます。
 微:それでイスカンダル伝説やカンダハールに痕跡が残っているのか。というよりこの地域を平定するって、ソ連もアメリカもできなかったぞ。
 苦:ここの平定が終わると前326年にインダス川を越えてパンジャーブ地方に侵入しました。
 微:兵士が「軍事遠征のバンジージャンプだ!」って叫んだらしいな。
 苦:言わないです! さらにインド中央部に向かおうとしますが、部下がこれ以上の進軍を拒否したため、やむなく兵を返すことになりました。彼が兵士に屈服した唯一の場面でした。
 微:「これくらいで堪忍しといたるわ」の捨てセリフはここで生まれたんだよね。
 苦:それは池乃めだかだろ! アレクサンドロスはインダス川を南下し、全軍を三つに分割して、残る敵対勢力を駆逐しながら前323年にバビロンまで帰還します。
 微:マケドニアの貧しさというかオリエントの豊かさを思い知ったんだな。
 苦:そして苦労をかけつづけたマケドニア兵を故郷に帰しました。
 微:この時、出迎える人たちに向かって「恥ずかしながら帰って参りました」って挨拶したんだろ?
 苦:それは半世紀近く前の横井庄一さんだろ! 高校生は誰も知らないよ!
 微:いや、今でもアフガンにはギリシア人の子孫がいるからな。そこに光を当てようと。
 苦:さて、バビロンのアレクサンドロスはアラビア遠征を計画していましたが、祝宴中に突然倒れ、10日間高熱にうなされ「最強の者が帝国を継承せよ」と遺言してあっけなく33才で死去しました。
 微:まさに「跡目争い」としてのディアドコイ戦争だったんだな。
 苦:残された大帝国はアンティゴノス、プトレマイオス、エウメネス、カッサンドロス、リュシマコス、セレウコスらの諸将同士の戦争で分裂してしまいました。
 微:ところでアレクサンドロスの子どもは? 織田家滅亡パターン?
 苦:そのとおりで、王妃ロクサネと王子アレクサンドロス4世、庶子のヘラクレスは、ディアドコイ戦争の混乱期に殺されました。
 微:まさに織田家滅亡後の日本だな。ところでアレクサンドロス大王の功績って何なの?
 苦:アレクサンドロスはエジプトのアレクサンドリアに図書館を建設してギリシア文化の保存と浸透を推進し、公用語にギリシア語を採用しました。コイネーとは「共通の」を意味します。
 微:それだけ?
 苦:さらに東西融合に心を配り、ペルシア人女性と部下の集団結婚を奨励しています。
 微:その中に桜田淳子たちがいたんだな。
 苦:それは統一協会の集団結婚式! まあ、ヨーロッパ人以外にはアレクサンドロスはすごいのか何なのかよくわかりません。大帝国の統一もメッキ程度で、すぐに「地」が出てきます。
 微:「文明化の使命」論の先駆けだな、遅れたアジアを西欧が導いてやる的な。
 苦:アレクサンドロスがあと20年生きていたら、とは思います。
 微:まあ、あれだな、外国に出稼ぎに行ったきりの女癖の悪い親父が、死ぬ直前に帰って来て、「後は勝手にやれよな」って、莫大な遺産と無責任な遺言残して死んだようなもんだな。
 苦:アンナ・ニコル・スミスとかメラニアの夫かよ!(ペシッ!!)

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