見出し画像

【ソフビ】一歩進んだ組み上げ:実務編

今日は製造する側、また購入された方にも向けた広いお話になります。

ソフビを見ているとたまにおかしな角度に曲がっていることがあります。
これはもちろん原型に問題があったり成型時に伸びてしまったりとさまざまな理由があります。
出来上がってしまったものを修正できないことが多いのですが、時により修正できることがあります。

ソフビはそれぞれの工程でそれぞれの職人さんが生産しているのでそれぞれの工程は熟知しておりますが、総合的に全てを理解しているわけではありません。
例えば、原型師は抜きや引けを理解して生産しています。
しかしジョイントの製作についてはロウ型職人にお任せしている場合が多いです。
またロウ型職人は成型を理解しつつも実際は金型にどのようなパーツが乗るかで厚みが変わってくるので流石にそれを読むことができません。

というように総合的に出来上がったものは時により思ったような組み上がりにならないことがあります。
どこの工程が悪いか?ということではなく、量産品ではそれらの細い調整はとてもじゃないがチェックする間がない。
どこまでも時間をかけてしまったり工程を増やすことは原価が上がり、それは販売価格に反映されます。

文章だけでは伝わりにくいので画像で説明して参ります。


写真は以前原型を担当したダンバインですが首が浮いているのがお分かりになるでしょうか?


図のように首が伸びてしまって本来の原型の形に収まってません。
この現象は割とソフビでは多く見られると思います。
なぜ起きるのか?
場合によって首がかしいでしまったりと不恰好になってしまいます。
これはどこかの工程がおかしい?ということではありません。
これからその原因を紐解いていきます。




まずは径を測ってていきます。
ちょっとみずらいのですが、オスメス両方とも2.9mm。通常であればしっかりはまる径です

次に厚みを測ります。



わかりずらいのですが、前後左右でそれぞれ2.0mmから2.2mmくらい


ジョイント部はちょっと分かりづらいのですが、2mmをほんの少し切ってます

つまりこのままはめるとジョイント部より成型の方が厚いので力が上に逃げてしまいます。はまらない分胴体の径の方が小さい、ということになります


これは、ロウ型職人さんが『径を合わせる』という部分ではかなり正確にお仕事をされています。
ただ厚みはどうしても金型にしてみてからでないとわからない。
かと言ってジョイントのくぼみを広げては万が一緩くなった場合、金型のやり直しになってしまうので通常はセオリー通りの数値で作られます。
緩いよりはきつい方が良いのです。

このような場合、ちょっとした工夫で修正できる場合があります。
それは『成型の厚みをカットして調整する』ということです。



まず写真を見ていただけるとわかりますが、首の成型の厚みはかなりあります。
これはダンバインの背中に大きなコンバーターが付けられるためにボディーが厚くないと変型してしまいます。
この厚みをナイフでカットして調整します。



図のように斜めにナイフを入れてカットします。
そして噛み合わせてぐるぐる回して馴染ませると良い状態に戻すことができます。


違いがわかるだろうか? これはもちろん、ロウ型職人と成型職人が別の工場なので起こりうることです。
この調整は制作段階で完璧にすることは不可能といって良いでしょう。
なので組み上げ工場などで調整をしますが、前途したように通常製品の出来に関わる部分なので工場ではなかなか作業していただけないと思います。
この状態で良いかどうかの判断は難しい。
またカット作業により料金を上乗せしなければならない。
重要なのはカットすることが一定にならない場合に工場が責任を取りきれないと判断されることもあるでしょう。

そのために市場ではこの状態で出回ってしまう、ということになりますが、気になる方は以上のような作業をしていただけると良い状態になると思います。
物にとっては、金型の返しによってできる液だれや左右の厚みが違うことで首がかしいだりすることがあります。
その場合も厚みを調整することで本来の状態に戻ります。

特にクリエーターやプロデューサーがこの作業を要求してきても工場としては良し悪しを判断することができないのでこだわりを持たれるクリエーターはやはりご自分での調整、ということになるでしょう。

たったの0.1~0.2mmですが、されど0.1~0.2mmでこれだけでも見栄えが変わってきます。
嵌着・成型ではできない部分を他でカバーする。
言うことを行かない素材なので制作の一環に加わるという気分で調整していただけると良いな、と思います

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?